
2025年の米国株式市場は、トランプ政権の攻撃的な関税政策による短期的混乱を経験しつつも、経済の基礎体力を背景に回復の道筋が見えてきている。マーケットの調整局面を経て冷静な投資判断が求められる中、長期的視点に立った投資戦略が重要性を増している。
関税政策の二面性と市場への影響
トランプ政権が実施した関税政策により、米国の平均実行関税率は20%を超える水準に達している。前回のトランプ政権時と比較しても規模が大きく、市場への影響も無視できないものとなっている1。
この関税政策の影響は、物価と経済の両面から考察する必要がある。物価への影響については、関税引き上げ初年度は前年比で物価上昇を招くものの、2年目以降はその影響が薄れていく傾向がある。つまり、物価への影響は一時的であり、これによる追加利上げの可能性は低いと見られている1。
一方で経済面では、GDPへの下押し圧力がより持続的に働く可能性がある。政策の不透明感から企業の投資行動が抑制され、実体経済への影響が徐々に表れてくることが懸念されている1。市場のボラティリティを示すVIX指数は大きく上昇したが、BBB社債対10年債スプレッドは大きな動きを見せておらず、実体経済への本格的な影響はこれから見極める段階にある1。
市場調整と投資タイミング
米国株式市場はすでに10%以上の調整を経験しており、今後50日程度は日柄調整の期間となる見通しだ。この期間が市場の方向性を見極める重要なタイミングとなるだろう1。
技術的な指標としては、米国株の週足チャートが200週移動平均線を下回るとリセッション入りの可能性が高まるとされる。反対に、この水準で反発すればリセッションは回避される可能性が高い1。現時点では、リセッションを織り込むにはまだ値幅の余地があるという見方もある。
S&P500については、4,600ポイント付近に接近した際が打診買いのタイミングになる可能性があり、投資家は足元の株価水準を注視すべきだろう1。
経済主体の健全さと中長期見通し
注目すべきは、今回の市場調整が金融危機や経済の循環的な問題ではなく、政策という人為的要素が大きな原因となっている点だ。経済の基礎体力を示す家計や企業のバランスシートは健全であり、仮にリセッション入りしても短期間で終わる可能性が高いとの見方がある1。
2025年後半にかけては減税政策や米国中間選挙に向けた動きも予想され、一時的な混乱を経た後の政策環境の改善が期待される1。市場関係者の間では、今後トランプ政権が税率引き下げにシフトする可能性も指摘されており、2025年末の株価は現在よりも高い水準になるとの見通しもある8。
複数の機関の予測によれば、2025年末時点でS&P500は5,700~6,700ポイント11、ダウ平均は46,600ドル程度9まで回復するという楽観的な見方もある。
投資家への戦略提言
このような市場環境下での投資戦略として、以下のアプローチが有効と考えられる。
まず、株価暴落時の対応としては、「何もしない」か「下がった銘柄を拾う」という二つの選択肢がある7。長期的な視点を持ち、4~5年の時間軸で投資できる資金であれば、調整局面でメタやエヌビディアなど割安になったテクノロジー銘柄への投資も検討できる7。
ただし、急激な投資判断は避け、時間分散を意識した投資が重要である。市場の不透明感が高い現状では、債券投資も引き続き魅力的な選択肢となっている1。米国総合債券指数は足元で安定しており、景気後退局面においてもパフォーマンスを提供してくれる可能性が高い1。
また、ポートフォリオ全体として、特定セクターへの偏重を避け、情報技術やインフラ、ヘルスケアなど幅広いセクターに分散投資することも賢明な戦略といえる12。
結論として、短期的な市場変動に一喜一憂するのではなく、日柄調整の期間を冷静に見極めながら、マクロ経済環境のチェックを継続し、長期的視点に立った投資判断が2025年の米国株式市場では特に重要となるだろう1。