免責事項
- このレビューは誠実な品質レビューを読者に伝えるためにYu9 Audioから提供されたサンプルに基づいて書かれています。
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Yu9 U-556の概要
こんな人におすすめ
- ニアフィールドサウンドが好き
- ボーカル曲向きのイヤホンが欲しい
- 楽器練習用のイヤホンが欲しい
- ASMRやボイスドラマ、ナレーション向きのイヤホンを探している
- 優れたステージモニターが欲しいミュージシャンやパフォーマー
- 質感表現を重視
- Etymotic Researchファン
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~16kHz
- インピーダンス:116Ω
- 感度:116.5dB/Vrms
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.5/10.0
- 高域:8.0/10.0
- 中域:10.0/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:7.5/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:11.5/10.0
長所
- 原音忠実性が高い
- ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
- マイルドな高域
- 良好なボーカルフォーカス
- 優れた質感表現
- モニター的な低域
- 前方定位的
- 音像一貫性に優れている
- 優れた装着感
短所
- 拡張性に欠ける
- 低域の深みに欠ける
- モニター用途には物足りないかもしれないクリア感
Yu9 U-556の特徴
Etymotic Research ER4シリーズは「直接音に向き合う」ことを目指しています。ER4Bには「自然を超えた」音の透明性があると常に信じられてきましたが、同時に、ER4シリーズの一部のユーザーは「明るすぎる高域や低域、不自然なリスニング体験」に不平を鳴らしてきました。これは結局のところ、ER4シリーズが目指している自由音場空間でのサウンドに対する不慣れが生み出しているとも言えます。無響室で干渉のない直接音を体験したことのある人は限られているからです。
Yu9 AudioはレプリカのER4を4年以上前から販売し、改良を重ねていましたが、このU-554/U-556が彼らのオリジナルブランド製品と言える最初のIEMになります。ER4シリーズと同じ装着感を実現しながら、キャビティデザインは独自のものとなっており、サウンドはさらに最適化され、革新的な水準に到達しました。
Yu9 U-556はER4Bのサウンドを継承したモデルです。
パッケージ(8.5)
パッケージは価格の標準を満たしています。外箱はシンプルですが、紙製で処分は楽です。付属品はかなり揃っています。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- イヤーピース多数
- キャリイングケース
- クリーニングクロス
- クリーニングツール
- ケーブルクリップ
- 説明書
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(9.5)
装着感と遮音性はかなり素晴らしいです。ただし、耳奥までイヤーピースを入れるのが苦手な人には全く向きません。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Yu9 U-556はアンプの出力インピーダンスの影響を少し受けます。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Yu9 AudioはU-556をEtymotic Research ER4Bを快適にリスニングできるバランスに再解釈し直したモデルとして作ったとしています。実際そのサウンドはEtymoticターゲットでややうるさく聞こえやすい中域をニュートラルで自然に近づけたバランスになっています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B-
低域はモニター的でほぼフラットになっており、ストンと落ちるモニタースピーカーライクな低域になっています。深さは期待できません。
低域は明るく、見通しが良いですが、重厚感に欠けます。ドラムキックは浅く、ドンドンというよりはトントンやタンタンに近く聞こえやすいですね。軽快な足さばきでリズムがわかりやすいと思う人は多いかもしれませんが、インパクトには欠けます。
またエレキベースには黒みが足りず、若干ブリブリしたエッジの強い明るい傾向の聞こえ方になります。
中域(10.0)
- 原音忠実度:S
- 厚み:B+
- 明るさ:A-
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域はかなりニュートラルに近く、しかも前面に聞こえるように調整されています。
Yu9はER4Bに忠実なバランスを目指したU-554と異なり、よりスムーズなサウンドを目指して調整を加えたと言っていますが、それは嘘ではありません。Etymoticサウンドで目立ちやすい中域上部のうるさい感じを抑え、よりニュートラルで自然な質感に近いサウンドを実現しています。
ボーカルをはじめギターのエッジ感やピアノの輪郭はより耳に馴染む自然な音になっています。
たとえば森山直太朗「さくら(二〇一九)」を聴けば、U-554とどちらのボーカルが高域に自然につながっているか明らかです。U-554のボーカルは子音がはっきりし、明瞭に聞こえる感じがありますが、フォーカスが強すぎます。音楽全体の中ではやや浮き上がっており、近すぎてシャウト感があります。ピアノの音も少しギンギンしています。単純に言って、少し中域がうるさく聞こえます。
それに比べて、U-556の森山直太朗は抑揚がより自然で、声色に深みがあり、U-554では子音に比べて目立たなかった母音を生み出す声帯の震えがよりはっきりと、自然に聞こえる感覚があります。
少なくともボーカルの表現力とピアノ、ギターのテクスチャは非常に滑らかで自然であり、Yu9によるU-556のチューニングが確かな見識に基づいて行われていることがわかります。
またこの中域のチューニングによってU-554の欠点であった中域で目立つ歪も相対的に少なくなっているため、より透明度の高いサウンドが実現されています。
高域(8.0)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C+
- 荒さ:D
- 繊細さ:D
- 存在感:C-
高域は閉じており、拡張性は良くありません。
U-554に比べて高域はおとなしくなったため、もともとあまりよくなかった空気感が減少しています。これにより中域へのフォーカスは相対的に強くなっており、ボーカルホンとしては非常に優れて聞こえます。
しかし、のびやかさに欠けるため、スケール感は改善されていません。基本的にボーカル中心でやや狭い音場で聴くことになるでしょう。
高域はたとえば、同じようにEtymoticターゲットに基づきながら、より合理的にチューニングされているSoundPEATS Miniのような機種の方が優れています。そのため、中域はU-556のほうが質感が自然でキレイであるにも関わらず、より実在感があり、鮮明に聞こえるMiniのほうが高級で高品質な音に聞こえます。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:C
- オーケストラのテクスチャ:A
- 雅楽のテクスチャ:A+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
Yu9 U-556は非常に優れた質感表現を持ち、音像一貫性にも優れているため、中域の再現度はオリジナルより優れていますが、高域の拡張性に問題があるため、バイオリンののびやかさやシンバルの広がりに弱点を抱えています。音像はコンパクトに聞こえるため、オーケストラのスケール感を出す能力に乏しく、どちらかといえば室内楽のように聞こえやすいでしょう。
雅楽もやはり天井感があるのが気になりますが、中域の質感が非常に正確になったため、篳篥の音はより精妙で、塩梅の聞こえが改善しました。しかし抜けが悪いので相変わらずギラギラしすぎる感じは残っています。和音もやや耳にうるさく聞こえやすいですが、U-554よりはスムーズでマイルドです。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B-
- クリア感:B
- イメージング:A-
- 高域:S-
- 中域:A
- 低域:B-
深さは物足りず中域は前面に聞こえ、高域は高さで少し物足りません。
クリア感は価格なりかわずかに物足りないですね。
イメージング性能は価格帯では抜群に近いですね。
音質総評
- 原音忠実度:S-
- おすすめ度:S-
- 個人的な好み:A+
Yu9 U-556はYu9のEtymoticイヤホンに対する情熱と研究が本物である証拠です。それはオリジナルのEtymoticサウンドをより自然なスピーカーの聴き心地に近づけ、中域の質感をより自然なものへと改善しました。それでいて、Etymoticサウンドの特徴である自由音場に基づく全体の原音忠実度の高さを維持し、オリジナルの利点を失わせません。Yu9はEtymoticの意図を尊重しつつ、そのサウンドをより自然で快適なものとしており、彼らがEtymoticサウンドについて深い造詣を持っていることはU-556がU-554から進化しているという事実を示すだけで十分でしょう。
一方で、同じくEtymoticサウンドに基づきながら、異なるアプローチがあることも忘れることはできません。SoundPEATS Miniは同じくEtymoticサウンドからスタートしながら、低域と高域に改善を加え、質感を犠牲にしつつも、定位感と鮮明感、そして何よりもEtymoサウンドの弱点であるレンジ感を改善するという道を選びました。どちらが優れているかは一概に言えませんが、U-556にまだ改善の余地があることは、SoundPEATS Miniのサウンドが示唆しています。
もちろんこうした調整を加えていくことは最終的にEtymoticサウンドから遠ざかることでもあるので、Yu9がU-556で示した、慎重で思慮深い調整がオリジナルファンにとって歓迎されるべき範囲内にあるということを喜ぶべきかもしれません。
音質的な特徴
美点
- 原音忠実性が高い
- ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
- マイルドな高域
- 良好なボーカルフォーカス
- 優れた質感表現
- モニター的な低域
- 前方定位的
- 音像一貫性に優れている
欠点
- 拡張性に欠ける
- 低域の深みに欠ける
- モニター用途には物足りないかもしれないクリア感
原音忠実性と質感再現度が高い
ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
前方定位的
「プレシャスフィギュア」シリーズからレムのオリジナルパーカー姿のフィギュアが登場!
かわいい表情と温かみの感じられるもこもこの質感にこだわりを感じられる逸品です。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Yu9 U-556
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Yu9 U-556
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Yu9 U-556
総評
Yu9 U-556は優れた質感表現を持つEtymoticライクイヤホンで、中域がより正確であるという点でオリジナルER4Bに勝るサウンドを持っています。より純粋なEtymoticファンにはU-554をおすすめしますが、より優れたイヤホンを求めている人にはU-554よりU-556をおすすめします。
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