免責事項
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Westone Pro X30の概要
こんな人におすすめ
- ステージモニターサウンドが好き
- 歌や楽器の練習に最適なイヤホンを探している
- Youtubeの教養系動画、スタディサプリなどを見るのが好き
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~18kHz
- インピーダンス:56Ω
- 感度:124dB
- ケーブルコネクタ:T2
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.5/10.0
- 高域:6.5/10.0
- 中域:9.0/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
長所
- マイルドな聴き心地
- リズムがわかりやすい
- ボーカルが聞き取りやすい
短所
- ダイナミズムに欠ける
- 爽快感に欠ける
- 鮮明感に欠ける
- 深みに欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- そもそも音楽鑑賞には不向き
Westone ProX 30の特徴
3基のバランスド・アーマチュア・ドライバー搭載。
低域・中域・高域に割り当てられた各ドライバー は、それぞれの周波数帯域を極めてスムーズに鳴らせるよう設計されています。力強い低域と明瞭な中域、そして驚くほど冴えわたる高域は、あらゆるステージでのパフォーマンスを完璧なものにしてくれます。
パッケージ(8.5)
Westone ProXのパッケージは価格の水準を満たしています。
アラミド繊維製で非常に細いのにタッチノイズのない上質なケーブル、Westoneといえばお馴染みの軽量で頑丈なケース、豊富なイヤーピースなど、付属品は充実しています。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- イヤーピース多数
- キャリイングケース
- 説明書類
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは価格帯の水準以上です。
装着感(9.5)
Westoneの装着感はいつも非常に優れています。小さな耳の女性でも問題なく装着して使えるでしょう。遮音性も高いです。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Westone Pro X30はアンプ側の出力インピーダンスにかなり影響されます。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーピース Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Westone Pro X30は中域の聞こえを重視したステージモニターです。観客がどよめき、照明が眩しいステージ上でも、アーティストが楽曲やライブ全体の進行を耳で的確に捉えることが出来るよう、高い遮音性を実現し、高域の刺激を抑えながら鮮明感を高め、中域が前進的に聞こえるように調整されています。そのため、ボーカルやリズムは明確に捉えられますが、ダイナミズムや繊細さに欠けた無機質で実用本位のサウンドになっており、音楽鑑賞にはあまり向きません。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S-
- 臨場感:B+
- 深さ:A-
- 重み:A
- 太さ:A
- 存在感:A-
Westoneはエレキベースの聞こえ方にこだわる傾向があり、このPro X30もベースラインが暖かに、存在感確かに聞こえることを意識しているようです。
個人的には少し深さで物足りないため、黒さに劣るベース表現ですが、ウォームでブリブリした生きの良いサウンドでWestoneらしい楽しい低域です。ドラムキックは力感があり、重みと太さがしっかりしていてタイトに聞こえます。
量的には十分低域好きを満足させる水準にありますが、質的には深みで物足りません。バランスド・アーマチュア型の限界を感じますね。
中域(9.0)
- 原音忠実度:A-
- 厚み:A
- 明るさ:A-
- 硬さ:B+
- 存在感:B
中域はほとんど最前面ではっきり聞こえるように調整されています。ボーカル音像付近から音が遠ざかっていく後傾的な音場になっており、ステージングが強調されます。
スネアのアタックがかなり強く聞こえますが、抜けが悪いので爽快感に欠け、なんかベチベチ粘った感じに聞こえます。はっきり耳に残るので、リズムを合わせやすいため、ステージパフォーマンス時や歌や音ゲーの練習をするときには便利ですが、音楽鑑賞のときには邪魔ですね。
またエッジ感とクランチ感が悪いので、エレキギターのエッジ表現が汚らしく潰れて聞こえるのは考えものです。練習時などはエレキギターが美しく聞こえると、意識を取られて邪魔ですから、これでよいのです。
しかし音楽鑑賞目的では、このゴチャゴチャしたエッジが聞こえてくるたびに、「この下手くそが!」と叫びたくなりますね。音の狂った安物のギターで演奏を聞かされているようです。あるいはギターアンプが壊れてるのかと思うような音です。
つまるところ、完全に特定目的に合わせたイヤホンです。少し硬い音ですが、ナレーションにフォーカスされやすい傾向があるので、解説動画のようなものを聴くのにも向きます。
高域(6.5)
- 原音忠実度:D+
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C+
- 荒さ:D
- 繊細さ:D+
- 存在感:C
高域は鮮明感を重視しており、それ以外の要素を極力抑えて長時間聞いても疲れないようマイルドさを重視してチューニングされています。
基本的に音楽鑑賞向きの高域ではありません。拡張性は圧倒的に足りず、定位はおかしいので、トラッキングモニターやミキシングモニターとしては使えません。完全にパフォーマーが演奏や練習するときに必要な音を届けるために設計されています。
そういう場合、高域の要素はほとんどなくてもよいので、大胆にカットされており、むしろどんな人でも歯擦音やピアース感が出ないように調整されています。
これでシンバル聴いたって、「なにこれ?金たわしで鍋でもこすってんの?」ってくらい貧相です。素面で聞くような高域じゃありません。
定位/質感
- 質感の正確性:B
- 定位の正確性:D
- オーケストラのテクスチャ:D-
- 雅楽のテクスチャ:D-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
普通の人はステージモニターでクラシックなんて聞きません。うるさくて気色悪いだけです。
雅楽も篳篥の音からして抜けが悪くて気色悪いです。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:C+
- クリア感:B+
- イメージング:B+
- 高域:A
- 中域:A-
- 低域:B-
音場は深さは少し不足しており、中域で奥行きがやや強調され、高さも少し物足りません。
クリア感は価格なりです。
イメージング性能は価格の標準を満たしています。
音質総評
- 原音忠実度:B-
- おすすめ度:C+
- 個人的な好み:D
Westone Pro X30は非常に良く出来たパフォーマー向けモニターです。それはステージパフォーマンスに不可欠のリズム、ボーカル、現場監督の指示、ナレーションの聞き取りを優先して行えるように最適化されています。非常に限定的な用途に最適なように作られており、音楽鑑賞やDTMで使うには不向きで、値段が高すぎます。
自分で楽器や歌を練習したり、音ゲーのために的確なリズム表現が欲しい人、勉強で長時間イヤホンを使用する必要がある人向けで、長時間聞いても疲れにくく、快適な装着感を維持できます。
DTMや音楽鑑賞に向いているイヤホンを探しているなら3000円あれば遥かに最適で音質的にも優れたTripowin Leaが手に入るので、高い金額を積む必要はありません。
音質的な特徴
美点
- マイルドな聴き心地
- リズムがわかりやすい
- ボーカルが聞き取りやすい
欠点
- ダイナミズムに欠ける
- 爽快感に欠ける
- 鮮明感に欠ける
- 深みに欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- そもそも音楽鑑賞には不向き
マイルドな聴き心地
リズムがわかりやすい
ボーカルが聞き取りやすい
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
総評
Westone Pro X30は非常に優秀なステージモニターであり、リズムを的確に聞かせ、長時間聞いても疲れないサウンドと安定した装着感を実現しています。しかし、普通の人が音楽鑑賞するのには全く向いていません。そういう用途に作られていないからです。ナレーションは聞き取りやすく、リズム感もわかりやすいため、歌や音ゲーの練習、講義動画の視聴に向きます。
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