免責事項
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TRN VX Proの概要
こんな人におすすめ
- 繊細なサウンドが好き
- ダイナミックなサウンドが好き
- シルキーサウンドが好き
- ボーカルの歌詞を詳細に聞き取りたい
基本スペック
- 周波数特性:7Hz~40kHz
- インピーダンス:22Ω
- 感度:106dB/mW
- ケーブルコネクタ:qdc 2pin
- 価格帯:5000円~10000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:8.5/10.0
- 中域:9.0/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.5/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:11.0/10.0
長所
- 奥行き感がある
- 繊細
- シルキーサウンド
- 比較的自然な質感
- 聴き心地が安定している
- 優れたダイナミズム
- 爽快感がある
- ビルドクオリティ
短所
- 音像の一貫性に欠ける
- 艶やかさに欠ける
- 薄くて少し暗い中域
- 高域の拡張性に欠ける
- 量は豪華だが、少しチープな付属品
TRN VX Proの特徴
- 10mm CNT DD+8BA ハイブリッドイヤホン:音響工学における長年の経験を慎重に蓄積し、ついに9ドライバーのハイブリッド技術にブレークスルーをもたらしました。TRN VX Proは、2年の歳月をかけて徹底的に開発された記念すべきモデルです。TRN VX Proは、10mmのダイナミックCNT振動板と8つのバランスド・アーマチュアを搭載し、より豊かで、よりスムーズで、より洗練されたサウンドを実現しています。ハイブリッドドライバー搭載インイヤーモニターのフラッグシップモデルとして、VX Proは特別な存在です。
- 絶妙なクラフトマンシップと魅力的な美学のマリアージュ:VX Proのシンプルでエレガントなハウジングは、人間の耳介の輪郭に沿って形成された独自のプロファイルを採用し、最高の安定性、快適性、サウンドアイソレーションを実現しています。熟練した職人が、まるで高級ジュエリーを作るかのように、何一つ妥協することなく仕上げています。
- CNC航空宇宙グレードのアルミニウム・マグネシウム合金製ハウジング:TRN VX Proには、オーディオファイルグレードの標準ケーブルとその他の詳細なセットが同梱されており、何の心配もいりません。4芯の銀メッキケーブル、アルミ製収納ケース、高音用3ペアイヤーチップ+低音用3ペアイヤーチップ+メモリーフォームイヤーチップ1ペア+6.5mmアダプターです。すべてをカバーしているので、安心してHiFiの旅を楽しむことができます
- 人間工学に基づいたデザイン:イヤホンが快適であればあるほど、より良いリスニング体験ができるのは事実です。本格的なオーディオ愛好家は、何時間も音楽に没頭します。耳からの自然なカーブを受け入れるために、イヤーピースの周りのすべてのエッジを柔らかくし、ぴったりとフィットするようにしました。
パッケージ(8.0)
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは価格を考えると優れたレベルです。
装着感(8.5)
耳への収まりは比較的良好です。装着感は良いでしょう。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
TRN VX Proはアンプ側の出力インピーダンスの影響が十分に大きい場合、低域と高域で影響を受けるようです。影響はそれほど大きくありません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ(赤軸) Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
TRN VX Proは比較的バランスの取れたV字型といったサウンドを持っています。中域は前傾的でボーカルを押し出しつつ、中域上部はやや暗く聞こえる調性になっています。歯擦音をうまく抑えながら息遣いやクラッシュ感が少し強調されるので、非常にエネルギッシュに聞こえる楽しいサウンドです。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B+
TRN VX Proの低域は十分に深く、全体もほぼニュートラルで丁寧に調整されています。自然な雰囲気で聞こえますね。
個人的には低域はもう少し深いほうが好みですが、これくらいの浅さだと力感が意識されるので、これはこれで悪くないと言えます。
ドラムキックはランブルが少し足りないので、弾力感が少し強調されて聞こえる雰囲気ですね。ベースは厚みがあり、ブリブリとした感じが強調されます。
かなり自然でかつレイヤリングも悪くないので、ベースヘッド(低域好き)を十分に満足させると思いますが、ランブルがいまいちなので、重低域マニアには微妙かもしれません。
たとえばUGREEN Hitune X5と聴き比べれば、X5のほうが低域の躍動感が段違いによく、パワフルかつ生々しく聞こえることがわかります。一方でノイズ感は少ないので、EDMやポップスはこれくらいの量感の重低域のほうがいいという人が多いかもしれません。
中域(9.0)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
TRN VX Proの中域は比較的原音忠実性が高めです。
中域はボーカルを前に出しつつ、楽器音を奥に引っ込めるというやや複雑な構造になっているため、音像の一貫性の点では若干劣ります。しかしステージングの点では良い効果がもたらされており、遠近感の強調によって広く聞こえる中域になっています。
そのうえで、全体的になめらかに仕上げられており、一聴した印象ではほとんど違和感がありません。
女声ボーカルは明るく聞こえ、子音もはっきり出ます。シャウト感は実際には少し目立ちますが、気にならないようにうまく抑え、歯擦音の尖りも出にくいよう丁寧な調整がされています。歌詞はかなり聞き取りやすいですね。
ボーカルは息遣いが強く、ドライに聞こえやすく、実際にはハスキーさが強調されていますが、エネルギッシュでハキハキとしており、落ち着いた声色なのに快活さが感じられます。この表現はとても好みですね。
TForce Yuan Liと聴き比べてみれば、Yuan Liのボーカルのほうが遥かになめらか、息の抜けもスムーズで、印象にみずみずしい雰囲気があります。その点で、自然な表現と言えるのは明らかにYuan Liだと思われますが、VX Proのほうが子音が強調されており、口の形が見えると思えるほど歌詞が聞き取りやすく、息遣いの瞬間やつばの飛ぶ雰囲気が感じられるほどエネルギッシュに思えます。
たとえばハコニワリリィ「泡沫の夢」のような曲はYuan Liの表現のほうが正統派ですが、TRN VX Proのほうが楽しく、エネルギッシュで説得力があります。シンバルクラッシュやアコースティックギターのエッジに明らかな演出感があるうえ、中域に薄っぺらさがある一方で、中高域付近の密度感が少し高くなっているので、オーディオマニア的観点では、渋い顔をしてしまいますが、個人的趣味で言えば、とても没入感があっていいですね。
高域(8.5)
- 原音忠実度:C-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C-
- 存在感:B-
高域は輝度が高く、白化して聞こえやすいところがあります。ただいわゆるシルキーサウンドに近いので、ハイハットにシャリシャリシャンシャンした砂粒のような細かさがありつつ、サラッとしているような清潔感のある音を求める人には好まれるでしょう。
たとえばASCA「ハイドレンジア」を聴くと、明らかにハイハットが白く、シャリシャリして不自然に聞こえますが、繊細で極めが細かくシルキーで美しく感じられます。クラッシュはそれこそ果汁が弾けるようにプシュッという勢いがあり、エネルギッシュでカタルシスがあります。演出感が強いですが、爽快です。
息遣いが強調されたハキハキしたボーカルとともに全体的に非常にエネルギッシュですね。ただし拡張性はいまいちなので、音の広がりに欠け、開放感はそれほどありません。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:B-
- 雅楽のテクスチャ:C+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
アタックが強く、勢いを出すのがうまいので、繊細な表現は強調されますが、全体的に演出感が強すぎます。Kubelikの指揮が生み出すダイナミズムを強調しすぎる傾向があり、非常に楽しいですが、勇み足気味で、落ち着きがなく、長く聴いていると飽きてきます。
そうして最初の躍動的な音に対する感動が薄れてくると、定位も妙に狭く聞こえるのが気になってきますね。そうすると今度は最初は心地よく思えたダイナミズムの強調が、逆に音楽をうるさく窮屈にしていることに気づきます。
質感は比較的正確なので、これはこれで悪くないですし、ダイナミズムを重視する場合は好ましく思える可能性が高いですが、個人的には表現に深みがなく、薄っぺらく聞こえますね。
輝度が高いせいか、雅楽は和音がきらびやかに聞こえる傾向があり、最初はきれいに思いますが、やはり表現に深みがなく、全体的に軽薄ですね。よく聞くと、音がささくれだっているというか、スースーシャーシャーするような、繊維質の印象に聞こえます。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音場:B+
- クリア感:A-
奥行き感は少し強調されています。高域で拡張性が足りておらず、中高域から高域で抜けが悪く、少しうるさげになりやすいです。
クリア感は価格を考えると少し優秀です。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:A+
- 個人的な好み:S-
TRN VX Proはダイナミックで楽しいサウンドを提供します。高域はシルキーで輝度が高く、爽やかかつ繊細に聞こえ、爽快です。聴き心地もかなり安定しており、エネルギッシュさがあるのに尖りや刺さりが強くなることはほとんどありません。
ロックをはじめ、EDM、ポップスを楽しく聴きたい場合、かなりおすすめできます。
音質的な特徴
美点
- 奥行き感がある
- 繊細
- シルキーサウンド
- 比較的自然な質感
- 聴き心地が安定している
- 優れたダイナミズム
- 爽快感がある
欠点
- 音像の一貫性に欠ける
- 艶やかさに欠ける
- 薄くて少し暗い中域
- 高域の拡張性に欠ける
奥行き感がある
繊細なシルキーサウンド
ダイナミズムに優れる
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは-0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- TRN VX Pro
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- TRN VX Pro
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- TRN VX Pro
海外レビュー
TRN VX Proの海外での評価については以下の記事で紹介しています。
TRNの大人気イヤホン「TRN VX Pro」についての海外レビューをまとめて紹介します。
総評
TRN VX Proはダイナミックなドンシャリタイプのサウンドを持っていながら、原音忠実性が比較的高く、聴き心地も安定している優れた機種です。表現に味付けが見られますが、シルキーなシンバルや息遣いの強調されたボーカルはエネルギッシュかつ爽快で楽しいサウンドを聞かせてくれます。
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