免責事項
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TAGO STUDIO T3-01の概要
こんな人におすすめ
- ボーカル重視
- フラットサウンドが好き
- 質感重視
- 高級感のあるヘッドホンが好き
- 木目デザインが好き
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~40kHz
- インピーダンス:70Ω
- 感度:100dB/mW
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.5/10.0
長所
- ステージングの良い中域
- 艶やか
- 構築的で確かな輪郭感
- 中域への適切なフォーカス
- ボーカルの音像が大きい
- 原音忠実性が高い
- 自然に近い質感
- 高級感のあるデザイン
短所
- 拡張性に欠ける
- 広くない音場
- ダイナミクスに欠ける
- 不自然な定位
TAGO STUDIO T3-01の特徴
以下公式サイトより引用です。
目指したのは、究極のナチュラルサウンド
音のプロフェッショナル達の現場、すなわちスタジオでの使用を想定しているため、当然ながらその要求は高くなります。レコーディングエンジニアやアーティストが作った音を忠実に再現するため、目指したのは究極のナチュラルサウンド。さらに、長時間の使用に耐える強度。使用者の負担を軽くする装着性。消耗パーツを交換可能にすることにより実現した永続性。デザインや設計、素材のひとつひとつにまでこだわり抜くことで、サウンドクリエイター達の妥協のない要求に応えました。
https://tagostudio.shop/t3-01/
美しい木目、美しい響き
ハウジング部分の特徴的な木製部品は、国産の楓材を用いています。この部品は、家具や建築など長年様々な木と向き合ってきた飛騨高山のオークヴィレッジによる逸品です。そのこだわりの無垢材を生かすため、楓本来の表情、自然の温もりをそのまま伝えるデザインになっています。楓材は楽器でも良く使用される木材で、モニターサウンドに有利な原音に忠実かつナチュラルな響きが得られます。匠の技とこだわりの素材により、これまでにない美しい外観と美しい音響を実現しました。
https://tagostudio.shop/t3-01/
シルクプロテインコーティング
ドライバーユニットには、本機のために新開発した高性能φ40mmドライバーユニットを搭載しています。そして、使用している振動板には、群馬県繊維工業試験場との共同研究成果品であるシルクプロテインコーティングを採用しています。このコーティング技術は、長い歴史がある伝統の群馬県産シルクを、高い技術力で振動板に適するよう精練し、溶液化することで成功したものです。伝統の素材と新しい発想により、自然で綺麗な伸びのある音質を実現しました。
https://tagostudio.shop/t3-01/
パッケージ(8.0)
TAGO STUDIO T3-01のパッケージは価格の標準を満たしています。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- 3.5mmプラグ用ケーブル
- 3.5mm→6.35mm変換プラグ
- キャリイングケース
- マニュアル
ビルドクオリティ(8.5)
T3-01のビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
片耳モニタリングには対応しません。
装着感(8.0)
装着感は悪くありません。少し重い感じがありますが、重すぎるというほどではないですね。
音質
周波数特性
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
測定値は有料記事をご覧ください。
制動
アンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありません。
電力要件は少し厳しいので、スマホでは場合によって力不足を感じるかもしません。ただし私の手持ちのSamsung Galaxy A30では駆動に不足を感じませんでした。
測定値は有料記事をご覧ください。
ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
TAGO STUDIO T3-01は総体としてかなり自由音場フラットに忠実で、原音忠実性の高いサウンドが期待できます。特徴的なのは中域のステージングで、それほど不自然にならないレベルで奥行きが強調されており、定位が少し広く聞こえるようになっています。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:B+
- 臨場感:C
- 深さ:B+
- 重み:B
- 太さ:B+
- 存在感:C
低域は全体の中でのプレゼンスが少し抑えられていますが、深さと太さは十分で意外と不足感を感じません。しかし、拡張性は不十分なので、音の沈み込みは少し足りなく思える場面が多いですね。
ベース音は少し黒さと厚みに欠け、やや薄味で明るめに聞こえます。一方でバスドラムの重量感は比較的しっかり出るので、低域はドラムがリードする雰囲気で聞こえやすくなります。必然的にドカつく感じが強く出やすいところはあります。
コントラバスは底が浅すぎて浮き上がりが良すぎ、重厚感に欠けるので、私の好みではないですね。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 厚み:B+
- 明るさ:A
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域は前面に出てきますが、奥行き感も少し強調されています。ステージングが良いので定位はわかりやすいです。
中域は全体構造としては少し前傾しており、押し出し感が強めですが、一方で心臓部は少し引っ込んでいます。そのため定位は強調されて聞こえます。
ボーカルはボディがしっかりしており、厚みがあります。声の軸の伸びが少し物足りなく思う傾向はあるかもしれません。やや角々しくキャピキャピして聞こえやすく、声色が明るすぎてときどき耳にはりついて残るのが気になります。抜けが悪いですね。
最初はボーカルがはっきり明瞭に聞こえる感じが印象良く思えますが、聴き慣れてくるとプレゼンスが少し強くて、やや目立ちすぎて聞こえやすい気がします。耳が慣れると、わりとシャウティに思えてきて、うるさく感じる場面も多くなります。
スネアやギターも前屈みに聞こえやすいので、中域は奥行きがありますが、あまり広い印象は受けません。むしろ窮屈に思える場面も多いですね。
中域の窮屈感は、たとえばイコライザーで62Hzを+3dB、2kHzを+2dB、4kHzを-1dB、8kHzを+4dB、16kHzを+8dBするとだいぶ解消されるでしょう。
以下で実際に上記のイコライザー設定をかける前とかけた後を録音したものを聴き比べることができます。
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01(FiiO M15)
- Tago Studio T3-01(FiiO M15+EQ)
高域(9.0)
- 原音忠実度:C+
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:A-
- 脆さ:B
- 荒さ:C-
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
高域は高さは十分にあります。拡張性は少し物足りなく、風通しは少し悪いですね。
高域の輝度はわずかに暗い感じがあり、中域の明度と少し釣り合いが取れていない感じがあります。シンバルクラッシュはわずかに派手さが足りず、少し物静かに聞こえますね。また天井は少し低く、開放感に欠けます。
定位/質感
- 質感の正確性:B+
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvo?ak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
自然な質感を重視しているだけあって、クラシックは悪くないですね。定位は良く聴くと、中域が不自然でバイオリンの軸が安定しておらず、ときどき内側に逸れて迫ってくるように聞こえます。そのせいで窮屈に聞こえますね。
音ののびやかさに欠け、滞留感があり、気持ちよく聞こえません。ダイナミズムに少し欠け、音に躍動感がないので鮮度が足りず、死んだ魚のようなサウンドに聞こえます。少なくとも5万円以上も出してこのヘッドホンでフルオーケストラを聴こうとは思わないでしょう。
雅楽も妙に狭く聞こえるのが気になります。中域の奥行き感である程度ごまかしてはいますが、音場が前かがみで距離感が妙に近いですね。質感はわりと良い気もしますが、篳篥の響きがやや甲高く、キンキンしたあたりが押し出し気味に聞こえるので、少し轡虫の心地に近づいていますね。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音場:B-
- クリア感:A-
T3-01の中域はやや奥行き感が強調されるので、少し広いように思うかもしれませんが、実際には音場はそれほど広くないか、むしろ窮屈です。音場の高さは不足しており、低域にも深みがなく、拡張性は物足りません。
クリア感は価格の標準以上です。ただモニターヘッドホンとしては優れている方ではないですね。
音質総評
- 原音忠実度:S-
- おすすめ度:A-
- 個人的な好み:B-
T3-01はわりと人気のあるヘッドホンのようですが、個人的には少し割高な機種に思えます。モニターヘッドホンとしてはYAMAHA HPH-MT8、Victor HA-MX100V、SHURE SRH-840、SoundWarrior SW-HP10S、SONY MDR-7506などといったより安く買える機種に比べて、長所が少ないように思われます。全体構造は中域に音が集中しているので、ダイナミクスに乏しい傾向があるのも欠点です。
美点としては非常に優れた質感表現が挙げられます。レコーディングモニターとして悪くないかもしれません。
かなり評判が良い機種なので楽しみにしてたのですが、個人的には少し期待外れでした。
音質的な特徴
美点
- ステージングの良い中域
- 艶やか
- 構築的で確かな輪郭感
- 中域への適切なフォーカス
- ボーカルの音像が大きい
- 原音忠実性が高い
- 自然に近い質感
欠点
- 拡張性に欠ける
- 広くない音場
- ダイナミクスに欠ける
- 不自然な定位
奥行き感がある
艶やか
自然な質感
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
巨イナルチカラ
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
ユルギナイツヨサ
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- Tago Studio T3-01
総評
Tago Studio T3-01は自由音場フラットを意識したバランスの良いサウンドを持っているヘッドホンです。拡張性に乏しいところは欠点ですが、ステージングの良い中域を前面に押し出して、自然な質感でボーカルや楽器音を丁寧に聞かせてくれます。外観に高級感もあるので所有欲を満たしてくれるところがあるのもいいですね。
ただ、モニターヘッドホンとして使うには片耳モニタリングができない、少し重い、金属部品が多くて機材を傷つける可能性があるなど、使いづらそうなところが多そうです。デザインも少し角々しくて取り回しているうちに怪我をすることもあるかも知れません。どちらかというと趣味の音楽鑑賞向けのヘッドホンでプロの現場で使うものじゃないですね。まあオシャレアイテムとしては優秀なので、これを装着してレコーディングすると絵にはなるでしょう。
スタジオ経営者的な観点で言うと、これ1台買う値段で、評判が良く実力的にも申し分ないモニターヘッドホンが2~3台買えますから、外観のオシャレさ以外の理由であえてこれを選ぶ必要性がないように思われます。生産が追いついてないのか妙に入手困難ですしね。
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