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SONY MDR-M1STの概要
こんな人におすすめ
- SONYファン
- 聞き心地重視
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~80kHz
- インピーダンス:24Ω
- 感度:103dB/mW
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:8.0/10.0
- 中域:8.5/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
公式サイト
長所
- 中域への適切なフォーカス
- 充実感がある
- 聴き疲れしにくい
- 艶やか
- ウォーム
短所
- 拡張性に欠ける
- ディテールに欠ける
- 不自然な質感
- 不自然な定位
- ダイナミクスに欠ける
SONY MDR-M1STの特徴
以下公式サイトより引用です。
- “感動はここから生まれる”:ハイレゾの高音質環境が整うなか、約4年半もの歳月をかけて磨き上げられた音質は、中域の骨太感と、全体の音が俯瞰できる音像を両立。音楽で重要な中域へのフォーカスをしつつ、低音域や高音域もしっかり聴こえます。
- 演奏空間を忠実に再現する音像:独自開発のドライバーユニットを採用し、可聴帯域を超えるハイレゾの音域をダイレクトかつ正確に再現。楽器配置や音の響く空気感といった演奏空間全体を広く見渡すことができ、原音のイメージそのままの音質を実現しました。
- プロユースに耐えうる機能性と耐久性:ジョイント部にシリコンリングを採用し、体を動かした際に発生しやすいノイズを徹底的に低減。人間工学に基づいた立体縫製のイヤーパッドで長時間の装着も快適です。さらに可動部の耐久性や耐落下強度も向上させ、プロユースに耐えうる品質を実現しています。
- 熟練工によるハンドメイド製造:プロフェッショナル向け音響製品を生産しているソニー・太陽株式会社にて製造。プロ用製品で培われた品質管理のもと、熟練作業者により手作業で一つ一つ丁寧に造られ、厳しい検査を経て出荷されます。
紹介動画
サウンドハウス
SONY SHOP SEIWA
パッケージ(7.5)
SONY MDR-M1STは簡素なパッケージに入っています。
パッケージ内容
パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- マニュアル
ビルドクオリティ(8.5)
イヤーカップは柔軟に可動するので、片耳モニタリングも可能です。
装着感(8.5)
装着感は良好です。ヘッドバンドは厚みがあり、イヤーマフもフカフカで頭を包み込む感触は良好です。
音質
周波数特性
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
測定値は有料記事をご覧ください。
制動
アンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありませんが、出力インピーダンスがかなり大きい場合、低域に影響を受けるようです。しかし事実上無視できる程度に思われます。
測定値は有料記事をご覧ください。
ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
SONY MDR-M1STの音質は中域充実系のいわゆる「かまぼこ」サウンドです。高域は中域より後退的なので、解像度はあまり高くなく、モニターサウンドにありがちな硬いディテール感はほとんど感じません。そのサウンドはあまり分析的に聞こえず、どちらかといえばリスニングライクです。長時間の音楽リスニングでも聞き疲れないのは良いですが、批判的なリスニングにはあまり向かないサウンドです。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:C
- 臨場感:D+
- 深さ:B-
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:C-
SONY MDR-M1STの低域のプレゼンスは抑制的で、存在感の点で中域に対して劣位に置かれています。
中域下部から中低域の太く厚ぼったい感じが強いので、ボリューム感はあり、中域の充実度の高さに貢献しています。しかし、深い重低域の拡張性と存在感に欠けているので、音の沈み込みが悪く、低域の引き締まり感に欠けます。
膨張的なドラムは機敏さに欠け、低域はあまり見通しが良くありません。ハーモニクスもかなり高いので、全体的にぼんやりしており、ライブ感はありますが、低域のディテールをモニターチェックするのには不向きでしょう。
ドラムとベースの描き分けも明瞭でなく、混濁感があります。人によっては重苦しくて、暑苦しい、鈍い音です。ファットな感じがありますね。
中域(8.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:A-
- 明るさ:A+
- 硬さ:A
- 存在感:B
SONY MDR-M1STは中域を重視しているようですが、あまり質感が自然ではありません。聞こえてくる中域はディテールに欠けているだけでなく、中域下部の膨張のせいでぼんやりしています。人によっては露骨にボワついて籠ったように聞こえ、肝心の心臓部が色あせて聞こえるでしょう。
なんでこうなっているのか、いささか理解に苦しみますが、これで聴くClean Banditの「Rather Be」は最悪でした。Jess Glynneの声が潰れて平たく聞こえ、バイオリンがひん曲がったように聞こえてきたときには呆然としたものです。低域は深みがなく、デジタルドラムの音が沈み込みが悪く、質の悪いソフトテニスボールのように弾みの悪い音を聞かせてきました。
SONY MDR-7506の素晴らしいレンジ感とディテール感はそこにはありません。音楽が鈍く色あせて聞こえるこのヘッドホンでモニターするほど退屈な作業はないでしょう。これを長時間聞き続けて仕事をしている人がいると思うと、個人的に同情を禁じ得ません。
高域(8.0)
- 原音忠実度:C-
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:D+
高域は良くないですね。拡張性に欠け、ディテール感にも劣ります。
シンバルクラッシュは死んでおり、アタックに精彩はありません。ディテールもよく聞こえません。
SONYが新たなモニターヘッドホンの標準機種を作ろうと思った時に、どうして世界中で愛され、音質的に評価が高いMDR-7506という名機のチューニングを受け継がなかったのか、理解に苦しみます。
定位/質感
- 質感の正確性:B-
- 定位の正確性:C
- オーケストラのテクスチャ:C-
- 雅楽のテクスチャ:D
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvo?ak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
MDR-M1STはクラシック向きではありません。そのサウンドはレンジに乏しく、ダイナミズムに欠けるので、クラシックの雄大さや壮大さを表現するのは不得手です。バイオリンは重力に負けてしまうので、のびやかさに欠け、音場の上と下に厚い層があるかのように中域付近に音が滞留しています。
雅楽は龍笛や笙がひどいですね。天に昇っていく音ではなく、中空で力強さを失い、墜落しているようなサウンドです。風雅さのかけらもありません。
音場/クリア感
- 音場:B+
- クリア感:B+
上下の拡張性に欠けるので、MDR-M1STの音場は妙に横長に聞こえます。奥行き感があるので空間的には少し広く思えるかもしれませんが、深さと高さに欠けます。
クリア感は価格の標準を満たしています。モニターヘッドホンとしては平凡です。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:B+
- 個人的な好み:B-
SONY MDR-M1STは聴き心地の良い中域充実系のサウンドを持っています。それは音楽の全体を横長のフレームにうまく収めてくれるという意味ではモニターしやすいところもあるでしょう。聞き疲れしないのも美点です。
しかし、ライバルとなりうるVictor HA-MX100VやYAMAHA HPH-MT8に比べて音楽の情報量が少なく、引き締まりも悪いため、分析的なリスニングには向きません。幸いにしてSONYにはMDR-7506という素晴らしい機種があるので、あえてその3倍高い値段を払ってこれを買う必要はないでしょう。
音質的な特徴
美点
- 中域への適切なフォーカス
- 充実感がある
- 聴き疲れしにくい
- 艶やか
- ウォーム
欠点
- 拡張性に欠ける
- ディテールに欠ける
- 不自然な質感
- 不自然な定位
- ダイナミクスに欠ける
充実感がある
穏やかで聞き疲れしにくい
中域への高いフォーカス感
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レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- SONY MDR-M1ST
白き魔女(クラシック系)
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- SONY MDR-M1ST
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
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Sophisticated Fight(JAZZ系)
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浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
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LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
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Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
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巨イナルチカラ
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ユルギナイツヨサ
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- SONY MDR-M1ST
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- SONY MDR-M1ST
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- SONY MDR-M1ST
総評
SONY MDR-M1STは中域充実系の聴き心地の良いサウンドを持っています。ビルドクオリティは優れており、モニターヘッドホンとしての使い勝手にも優れていますが、もし楽曲の構成を分析的に提示してくれるモニターヘッドホンを求めているなら、MDR-M1STはそういうヘッドホンではありません。個人的にはこれよりYAMAHA HPH-MT8やVictor HA-MX100Vをおすすめします。
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