免責事項
- このレビューは「私的な購入品」または「対価を払ってレンタルした商品」に基づいて書かれています。
- これを掲載することによる原稿料のような報酬または対価は一切受け取っておらず、個人的な試験での測定データや個人的見解に基づいて誠実に評価したものです。
- 当サイトのプライバシーポリシーをご確認ください。
- 「audio-sound @ premium」はamazon.co.jpおよびamazon.comほか通販サイトの取扱商品を宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣言プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラム等の参加者です。
SHURE SRH1540の概要
こんな人におすすめ
- バランス重視
- 音域が広いサウンドが好き
- ニュートラルサウンドが好き
- 自然で甘いボーカル重視
- 装着感重視
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~25kHz
- インピーダンス:44Ω
- 感度:102dB
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:7.5/10.0
長所
- 良質なレコーディングニュートラルサウンド
- モニターヘッドホンとして十分な拡張性
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 中域への適切なフォーカス
- バランスが良い
- 自然な質感
- 自然な定位
- 自然なディテール
- スムーズで不快なピークのないサウンド
- 良好な装着感
短所
- 低域は深さでいまいち物足りない
- 目立ちすぎるかもしれない中低域
- 派手さに欠ける
- クリア感に欠ける
SHURE SRH1540の特徴
以下公式サイトからの引用です。
SRH1540プレミアム・スタジオ・ヘッドホンは、プロのオーディオエンジニアやミュージシャン、オーディオ愛好家など、あらゆるタイプのユーザーに極めて優れた音響性能、快適性、耐久性を提供します。40mmネオジム磁石ダイナミックドライバーを採用し、クリアで伸びのある高域と温かみのある低域を伴う広大なサウンドステージを実現。アルミ合金とカーボンファイバーによる軽量かつ堅牢なデザインに加え、Alcantara®製のイヤパッドで最高の装着感と遮音性を実現しました。保管ケース、交換用Alcantara製イヤパッド1組、交換用ケーブル、標準プラグアダプターが付属しており、長期にわたりヘッドホンをお楽しみいただくことができます。
- 40mmネオジム磁石ダイナミックドライバーがクリアで伸びのある高域と温かみのある低域を伴う広大なサウンドステージを実現
- APTIV™フィルムを採用したダイアフラムにより、リニアリティの改善およびTHD(全高調波歪)の低減を実現
- 密閉型サーカムオーラルデザインにより耳全体を快適に包み込み、周囲の騒音を低減
- エアクラフトグレードのアルミ合金ヨークとカーボンファイバー製のキャップを採用した軽量設計により耐久性を強化
- 通気孔のあるセンター・ポールピースを備えたスチール・ドライバーフレームがリニアリティを改善し、内部での共鳴を抑えることで、どんな音量でも一貫した性能を実現
- 人間工学に基づいてデザインされたパッド入りデュアルフレームヘッドバンドは軽量かつ調整可能で、長時間の快適性を提供
- 金メッキMMCXコネクターを採用した両出しケーブルは、着脱を確実にし、保管や交換が容易
- 低密度のAlcantara®製交換用イヤパッドは、形状復元性が高くゆっくりと柔らかく耳にフィットし、格別な快適性を提供
- 長年のスタジオエンジニアリングで培ったShureクオリティーによる、日々のハードな使用にも耐えうる耐久性
- 交換用Alcantara®製イヤパッド1組、着脱式ケーブル2本、6.3 mm金メッキ標準プラグアダプター、ジッパー式保管用ハードケースが付属
- 2年保証
紹介動画
公式プロモーション動画
パッケージ(8.5)
ビルドクオリティ(8.5)
本体のビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
イヤーカップの稼働の自由度は少し低く、片耳モニタリングはできません。
装着感(9.0)
アルカンタラ素材のイヤーパッドはモフモフしていて柔らかく、かなり快適ですが、夏場は少し蒸れやすいかもしれません。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)を用い、カプラー専用のイヤーモデルを使用してのREWによる測定値です。イヤーモデルは左耳側しかないので、測定値は左側しか測定しておりません。両耳のデータを確認したい場合は有料記事を参照してください。
測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSとプロ用測定アナライザーソフトを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性(自由音場補正済み)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
SRH1540にアンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
SHUREは高品質なマイクで知られるプロ用オーディオ機器メーカーです。そのヘッドホンも丁寧にニュートラルサウンドを構築していることで知られており、スタジオレコーディングモニターの定番ブランドとして高い人気を誇っています。
SHURE SRH1540は広い音域にわたってニュートラルサウンドを提供するため、非常に正確なステレオイメージをリスナーに提供します。モニターヘッドホンとしては高めの機種ですが、その価格にふさわしいサウンドを提供する優秀な機種です。SonarWorksをはじめ、多くのレビューサイトがそのニュートラルサウンドを高く評価していますが、その評価は私の印象でも全く正当なものです。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:A
- 臨場感:B-
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:B+
SRH1540の低域は人気のスタジオチューニングであるハーマンターゲット(OE 2017)に比べて、中低域が強調されていますが、私の観点ではニュートラルの範囲を超え出るほどではありません。しかし、この低域はSRH1540が競合機種に対して劣っているかもしれない欠点になりえます。
SonarWorksがほぼ完全にこの低域の技術的特徴を述べています。SRH1540はヘッドホンとしては比較的優れた低域の拡張性と、モニターヘッドホンとしては少し高めのTHDを持っています。
このため低域のモニタリングを重視する用途では、よりクリアで、深いところを見通せる階層性に優れたサウンドを持っているYAMAHA HPH-MT8を推奨します。SRH1540はHPH-MT8に比べて、より温かみがある自然な膨張感を提供し、ニュートラルに接近しており、その点で録音音源により忠実に聞こえる可能性がありますが、ベースサウンドのディテールが捉えづらく思える可能性があります。
それでもそれは多くの人にとって、SRH840よりは優れた低域を提供する可能性が高いでしょう。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B
- 存在感:B
SHURE SRH1540の中域はスタジオチューニングの典型であるハーマンターゲットとも共通する、ニュートラルなサウンドを持っています。
中低域の影響が少し及ぶ可能性があり、中域下部に音の滞留感が生まれ、籠りや濁りを感じる可能性はありますが、多くの人にとって邪魔になることはないでしょう。
中域は透明度が高く聞こえ、ニュートラルサウンド独特の自然な質感を持っています。ボーカルはわずかにふっくらしますが、ディテールは自然でニュアンスに不足はありません。男声女声ともに甘く聞き心地の良い声色です。
高域(9.0)
- 原音忠実度:C
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:B-
- 荒さ:D
- 繊細さ:C-
- 存在感:C+
高域はニュートラルサウンドを目指して丁寧に構築されておりのびやかさは十分ですが、輝度はわずかに足りないかもしれません。
高域のエクステンションは十分に実現されているので、スムーズなのびやかさが実現されています。目立ったピークはなく、高域の質感は非常になめらかですが、輝度が少し低い気がするので、派手さの点で少し物足りない可能性があります。そのため、中域で効果をはっきりと確認したいミキシングエンジニアにとって、HPH-MT8ほどのクリアなイメージングを提供しません。
一方で現実世界では高域は少し減衰して聞こえやすいので、レコーディングエンジニアにとってはより自然な質感で録音音源に対する忠実性が高いように聞こえるでしょう。
定位/質感
- 質感の正確性:A
- 定位の正確性:A-
- オーケストラのテクスチャ:S
- 雅楽のテクスチャ:S-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
オーケストラを聞くと、SRH1540の良さがわかります。のびやかで透明度の高い楽器音、定位の明瞭性、充実度が高く、なめらかで聞き心地の良い中域などオーケストラ鑑賞に必要なほぼあらゆるものがそこにあるかのようです。それでいて、ニュートラルよりはウォームに傾いており、またハーモニクスも適度にあるために、それは十分に自然な質感と雰囲気で聞こえます。レコーディング音源のイメージングを重視する人にとって、最良の選択肢の一つでしょう。
雅楽も和音が上品で非常にきれいに聞こえます。塩梅の表現も自然でわかりやすく、篳篥が音楽の主軸として適切な存在感を放っており、風雅さが感じられます。音場の広さも適切で音も伸びやかであり、きわめて良質です。
音場/クリア感
- 音場:B+
- クリア感:B
低域と高域の両方でモニタリングに十分な拡張性を備え、奥行きも適切です。音域が広く音場の展開力に優れるため、少し広く聞こえるでしょう。
総合的なクリア感はモニターヘッドホンとしては物足りません。レコーディングチェックには十分ですが、ミキシングモニター用途には向かないでしょう。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:S
- 個人的な好み:A+
SonarWorksはSRH840とSRH1540を比べ、どちらもスタジオチューニングとして非常に優れているが、SRH1540のほうがフラッグシップのサウンドにふさわしいと述べています。私もそれに完全に同意します。
SRH1540はスタジオレコーディング用のニュートラルヘッドホンとして際立って優れており、かつ普段のリスニング用としても優秀です。音域が広く聞こえるのも特徴で、SHUREがこの分野で卓越したチューニング技術を持っていることがわかります。
ただし、ミキシングモニターとして使うにはクリア感とディテール感の両面で物足りません。この点、より安価なSONY MDR-7506やYAMAHA HPH-MT8のほうが優れています。
音質的な特徴
美点
- 良質なレコーディングニュートラルサウンド
- モニターヘッドホンとして十分な拡張性
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 中域への適切なフォーカス
- 自然な質感
- 自然な定位
- 自然なディテール
- スムーズで不快なピークのないサウンド
欠点
- 低域は深さでいまいち物足りない
- 目立ちすぎるかもしれない中低域
- 派手さに欠ける
- クリア感に欠ける
音域が広い
自然な質感
聞き疲れしにくい
総評
SHURE SRH1540は非常に高い名声を誇っていますが、たしかにそのサウンドは極めて良質なニュートラルサウンドであることが確認できました。
もちろん完璧な機種ではありません。そのサウンドは価格を考えるとクリア感の点でもの足りず、低域を始めディテール感やレイヤリングでやや不足感があるために、競合するモニターヘッドホンに比べてピンポイントでの明瞭感に欠ける可能性があります。その最大の魅力は非常に優れたバランス感覚によって再現される、音源の全体像の忠実性の高い提示能力にあり、完成曲のイメージを確認するレコーディングモニターとしての優秀性にあります。
コメント