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SHURE AONIC 4の概要
こんな人におすすめ
- ボーカルをしっかりと聴きたい
- ウォームなサウンドが好き
- ドラムの質感重視
- ディテールサウンド重視
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~19kHz
- インピーダンス:7Ω
- 感度:106dB/mW
- ケーブルコネクタ:mmcx
- 価格帯:30000円~50000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:9.0/10.0
- 装着感:9.5/10.0
- 高域:7.5/10.0
- 中域:8.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:7.0/10.0
長所
- 中域の音像が大きい
- ウォーム
- 中域への適切なフォーカス
- 比較的自然に近い質感
- 良好なボーカルフォーカス
- 高いディテール感
- 良好な装着感
短所
- 適切に駆動しにくい
- 不自然な定位
- 広くない音場
- 余韻に欠け、耳にへばりつきやすい音
- 甲高くなりやすいサウンド
- 中域のクリア感に欠ける
- 一貫性に欠けるサウンド
SHURE AONIC 4の特徴
- デュアルドライバーハイブリッド構成:Shureでは初となるBAドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッド構成が特徴で、ダイナミックな低音とクリアな中高域を再生することで、各楽器、ボーカルを繊細に表現します。
- 人間工学に基づいた薄型設計:最適化されたノズル角度により、長時間の快適さとフィット感を実現します。
- 高遮音性テクノロジー:周囲の騒音を最大37dB遮断。エクササイズや旅行など、どこでも臨場感あふれる最高のリスニング体験を楽しむことができます。
- 着脱式3.5mmミニプラグケーブル:取り外し可能な3.5 mmミニプラグケーブルにより、PC、機内エンターテインメントシステム、およびその他のモバイルデバイスに直接接続できます。ワイヤーフォームフィットの安全な耳かけ型デザインにより、ケーブルが邪魔になりません。
- その他のMMCXケーブルアクセサリーに簡単に変換:カスタマイズすることによって様々なリスニングスタイルに対応します
- 会話と音楽をコントロール:ケーブル上のマイク内蔵リモコンを使用して、通話、ボイスコマンド、音量調節および音楽再生など簡単に操作できます。
- 互換性:AppleおよびAndroidデバイスに接続できます。
プロモーション動画
パッケージ(8.5)
ビルドクオリティ(9.0)
SHURE AONIC 4のビルドクオリティは良好です。プラスチックのコンパクトなフォームファクターで、継ぎ目も滑らかです。手触りも良好です。
装着感(9.5)
小型に仕上げられているため、耳への収まりは非常に良好です。
正しい装着方法の案内ビデオ
音質
周波数特性
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
測定値は有料記事をご覧ください。
制動
SHURE AONIC 4はアンプ側の出力インピーダンスにかなり左右されます。
したがって駆動にはIEMの駆動に適したデジタルオーディオプレーヤーの使用が推奨されます。スマホで駆動するのはおすすめしません。
測定値は有料記事をご覧ください。
ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
SHUREらしくやや低域に寄ったフラットに近いサウンドに仕上がっています。ニュートラルを意識してはありますが、少しドンシャリに聞こえやすいサウンドで、中域はわずかに凹んでいます。ただし、加齢性難聴が進んでいる場合はかまぼこに聞こえるかも知れません。
中域はハーモニクスも強調されており、率直に言ってあまりクリアではありません。モニターイヤホンとしてのSHURE AONIC 4に欠点があるとすれば、この中域の曖昧性(明晰性のわずかな欠如)でしょう。AONIC 4はカジュアルリスニングモデルとして考えた方が適切です。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B+
- 深さ:A-
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:B
SHURE AONIC 4の低域はよく伸びており、比較的深くまで到達しています。全体の中での存在感は中庸な水準を維持していますが、太さや厚さのあって、多少の膨張感がある、浮き上がりのよい低域です。私にはタイト感はわずかに優しく思えますが、個人的には好みのバランスです。
ベースとドラムの描き分けは良いですが、中域との繋がりが強いところがあり、やや腰高にせり上がって聞こえるところがあります。ポップスは悪くない雰囲気ですが、ロックでは低域の熱気が中域に伝わりやすく、中域に濁りを感じやすいところがあります。
低域から中域にかけての分離感は抑制的なので、好みの曲にもよりますが、人によっては低域がウォーム過ぎて曖昧に聞こえるということもあるでしょう。
一見この曖昧性の原因は500Hz付近にあるように思われがちで、私も最初はそこが問題かと思いましたが、実際には高域の不足の影響の方が大きいです。
たとえば、2kHzを1dB、8kHzを4dB、16kHzを8dBほどイコライザーで上昇させると、中域下部以下を一切いじらなくてもはるかに引き締まって、音楽の縦軸が安定し、定位やディテールも明瞭になります。
そういうわけで、実際にはSHURE AONIC 4の低域は案外優れています。
以下で実際に上記のイコライザー設定をかける前とかけた後を録音したものを聴き比べることができます。
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4(FiiO M15)
- SHURE AONIC 4(FiiO M15+EQ)
中域(8.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:A-
- 明るさ:A-
- 硬さ:B+
- 存在感:B
SHURE AONIC 4の中域はそれなりに前進的な位置にいますが、中域自体は妙に後ろに下がっていく後傾的なバランスになっています。また4kHz付近は妙に盛り上がっているので、シャウティに聞こえやすいところもあり、ボーカルの軸はどうもふらふらしています。
クリア感がいまいちなところもあり、低域のところで指摘した濁りやすい傾向もあって、清潔感に欠け、少し野暮ったく聞こえる中域ですが、厚みがあるので充実感は期待できます。少しふっくらしたボーカルが好きなら悪くありません。しかし、軸が安定しないので、中空が埋没的で、ボーカルラインを追っていくと、ときどき遠ざかったり近づいたりしてよく聞こえない、いまいち一貫性の感じられない表現になりがちです。高域の息の伸びの不足も価格を考えると不満を覚えるところでしょう。
1万円クラスなら多少変なサウンドでも不満はありませんが、値段を考えるともっと作り込んで欲しかったところですね。高級機種ほどサウンドの一貫性、とくに定位に気を配るべきです。
高域(7.5)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B-
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D-
- 存在感:C+
多くのイヤホンの欠点は高域にあるわけですが、SHURE AONIC 4もご多分に漏れません。
妙にシャウティになりやすいボーカル、低域のコントロールの欠如はAONIC 4の高域の寸詰まりな天井にほぼすべての原因があります。
開放感に欠け、定位は少し破綻しており、マイクロディテールにも不足が見られます。率直に言って、マルチドライバー3万円クラスでこの高域はよくないでしょう。個人的には迂闊に思えるチューニングです。せめて露骨に不自然な4kHzは適正な位置に下げておくべきでした。1万円以下で多くのメーカーがこのあたりを適正にチューニングできているのに、天下のSHUREが3万円クラスでそれができないのは奇妙なことです。
もしかすると私がいつもここまで厳しくないのに、AONIC 4にはやたら厳しい気がするのは不公平に思うかも知れませんが、それはSHUREというブランドとこの製品の価格を考えて、SHUREの最新製品の3万円クラスならもっと優れているべきだと思うからです。これがたとえばFiiOだったらここまで厳しくは言いません。「お、なんか不満あるけど、わりといいんでねぇのw」で終わりです。
どちらにせよチューニングの完成度で言えば、大幅に安いSOUNDPEATS Gamer No.1のほうが断然優れており、サウンドの一貫性ははるかに良好です。
定位/質感
- 質感の正確性:A
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:A-
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvořák: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
オーケストラは中域の質感はわりと自然に聞こえますが、全体的に妙に楽器音が近く、倍音の伸びが足りないので、音場が少しコンパクトで、ややうるさく聞こえます。
雅楽も質感は悪くなく、笙の和音も比較的精彩に味わえますが、余韻を感じさせる高さが足りないので、全体的に少し圧縮されたサウンドに聞こえますね。
笙の抜けが悪く、ギュワンギュワンといった具合で、妙に耳にリンギングして残るように聞こえるので不快です。単純に下品な聴かせ方で風雅さのかけらもありません。
Gamer No.1とかいうアホな名前のイヤホンの方が百倍上品な音を聴かせてくれます。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域
- 音場:B-
- クリア感:B
SHURE AONIC 4の音響的焦点は中域に存在します。
音場はかなり親密な位置に形成されます。各楽器の音像は大きいですが、その分音場は窮屈に思えるかも知れません。高さに欠け、中域も窮屈に聞こえます。
クリア感は価格を考えると標準クラスです。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:B
- 個人的な好み:B+
SHURE AONIC 4は悪くありませんが、良くもありません。全体的に自然に聞こえるようで、いろいろ不自然という、いまいちなサウンドです。
第一印象はそれほど悪くありませんが、聴き込んでみるといろいろ不満が出てくるイヤホンです。そのうえ、制動が非常に不安定なので、デジタルオーディオプレーヤーで再生しないと本来の音で聴くのは難しいでしょう。使い勝手は悪くありませんが、「鳴らし勝手」が悪そうなイヤホンです。
そういうわけで、ユーザーが丁寧に性能を引き出してやる手間が必要なわりに、そうして苦労して得られるサウンドも比較的平凡なので、苦労のし甲斐もありません。
個人的にはこれを買うなら、似たようなサウンドで半額で買え、よりクリア感が高く、サウンドの一貫性もより優れているShuoer Soloistをおすすめします。駆動の点でもAONIC 4のような気難しさがありません。
音質的な特徴
美点
- 中域の音像が大きい
- ウォーム
- 中域への適切なフォーカス
- 比較的自然に近い質感
- 良好なボーカルフォーカス
- 高いディテール感
欠点
- 適切に駆動しにくい
- 不自然な定位
- 広くない音場
- 余韻に欠け、耳にへばりつきやすい音
- 甲高くなりやすいサウンド
- 中域のクリア感に欠ける
- 一貫性に欠けるサウンド
音像が大きく把握しやすい
ウォームで聴き心地が良い
中域への適切なフォーカス
音楽鑑賞
Run Girls, Run!「キラリスト・ジュエリスト」
こういう媚びっ媚びの曲はAONIC 4が魅力を引き出してくれる可能性がありますが、一方でギャンギャン吠える感じも強調されるところもあるのは悩みどころです。
ライバル機種として挙げたShuoer Soloistはこういう明るく屈託のない、キャピキャピした女声はボディの不足が目立ってしまう傾向もあるので、色気はあっても充実感に欠ける、少し「いかつい」感じに聞こえやすいところがあります。
一方で、AONIC 4はボディがしっかりしているのでそういう「薄さ」と「硬さ」はありません。しかし、ボーカルのボディと語尾の間に中空のように聞こえにくい場所があるので、ボーカルの一貫性に欠け、軸が立ってないので歌い方が「がさつ」に思え、しかも中低域の厚みが近いので時々埋没的です。
SHUREらしくドラムは活き活きと聞こえますが、全体的に妙に押し出し感が強く、中域が野暮ったく聞こえます。超高域の不足から来る空気感の欠如も大きく影響しているようですね。
この曲はわざわざAONIC 4を買わなくても、final A3000のほうがはるかに一貫性の高いサウンドで聞け、満足度が高いでしょう。
Endorfin.「カラフルモーメント」
電子音の艶はそれなりに良好に聞こえるので、わりと色気は感じますが、ドラムにもたつきを感じます。
全体的に音像が大きく、しっかり押し出されて聞こえます。そのため、頭が包み込まれている感覚につながり、充実感が感じられて良いですが、ちょっと窮屈です。
Sia「Chandelier」
Siaの迫力のあるボーカルをしっかり押しだしてくれる感じがあるのは良いですね。ぐっと声が迫ってくる表現は分かりやすく、曲に入り込みやすい雰囲気があります。ただ、慣れてくると息の抜けが悪く、妙に鼻にかかったボーカル表現が気になってきます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(シリコン)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- SHURE AONIC 4
総評
率直に言って、SHURE AONIC 4は個人的には難しい機種です。良いところといえば装着感と遮音性、そのくらいですかね。音質は中域に一貫性がなく、定位は少し支離滅裂に聞こえ、駆動要件でピーキーです。うまく鳴らしづらいうえに、音もあまり良くないという機種ですが、独特のディテール表現を好む人はいるかも知れません。サウンドバランスが極端に悪いというわけでもありません。
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