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Shuoer Tape Proの概要
こんな人におすすめ
- かっつりした少し硬めの音が好き
- 分析的なモニターフラットサウンドが好き
- ディテールサウンド重視
- コスパ重視
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~30kHz
- インピーダンス:16Ω
- 感度:105dB/mW
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:9.0/10.0
- ビルドクオリティ:9.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:8.5/10.0
- 中域:9.0/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:7.5/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:12.5/10.0
長所
- 中域への適切なフォーカス
- 骨組みのしっかりした構築的なサウンド
- 明瞭に聞こえるボーカル
- 高いディテール感
- ハリのある艶やかなサウンド
- ニュートラルに近くバランスが良い
- エッジ感がある
- 明度が高く明晰なサウンド
- 歯切れの良いサウンド
- 良好なパッケージ
- 優れたビルドクオリティ
- 品質の良いケーブル
短所
- 高域の拡張性に欠ける
- 硬く聞こえやすいサウンド
- 少し足りない低域の深さ
Shuoerについて
Shuoer Acousticsは、高品質のインイヤーモニター、特にエントリーレベルの価格帯のEST(静電型)ドライバー採用IEMであるShuoer Tape Proで知られ、静電型IEMメーカーとしては業界で有名なブランドの1つです。しかし、このブランドの製品は低価格だけに限定されていません。
このメーカーは先進的なドライバー技術の設計・生産に長けた専門的な技術者集団を備えた確かな開発製造力を持っており、自社ブランド製品でハイエンド機種の製造においても卓越した能力を見せるだけでなく、他社ブランド製品の製造を丸ごと請け負ってもいます。
Shuoer Tape Proの特徴
Shuoee Tapeの成功を続けたのち、コミュニティからの反応を丁寧に拾い上げ、Shuoerは、より優れた人間工学と調整可能な低域構造を備えたShuoer Tape Proと名付けたアップグレードバージョンをリリースしました。これは、以前のモデルと同様の静電型ダイナミックドライバー構成を採用しており、低電圧の静電ドライバーとダイナミックドライバーユニットを組み合わせて、低歪み、高速周波数応答、および比類のないディテールを持ったサウンド出力を実現しています。最新のTape Proは、前世代の従来のMMCXコネクタの代わりに、より頑丈な2pinコネクタを備えています。
- 静電ダイナミックドライバーユニット
- 調整可能な低域デザイン
- 高品質のアルミニウム素材を使用した人間工学に基づいたビルド
- ユニバーサル2pinコネクタ
- プレミアムバランス2.5mmケーブル
- インピーダンス:16Ω
- 感度:105dB / mW
調整可能な低域チューニング
複合静電ダイナミックドライバーユニット
兄弟機のShuoer Tapeと同じように、最新のTape Proは高性能の静電ダイナミックドライバーユニットを備えています。それにより、高解像度の明瞭性、卓越したディテール再現、超低歪み、および優れた楽器分離を備えた非の打ちどころのない音響性能を提供します。このコンポジットドライバーユニットのおかげで、Shuoer Tape Proは、その優れたオーディオパフォーマンスで競合他社を凌駕しています。
人間工学に基づいたデザイン
コミュニティからのフィードバックに基づいて、ShuoerはTape Proのキャビティをカスタマイズして、前世代よりもノイズアイソレーションと人間工学が改善された、より的確なIEMを実現しました。付属のケーブルは、長時間のリスニングの間もしっかりとフィットするように、事前に成形されたオーバーイヤーフックデザインで構築されています。イヤーシェルは、高品質のアルミニウム合金材料を使用した高精度のCNC機械加工プロセスで作られています。
取り外し可能な2pinケーブル
コミュニティから、Shuoer TapeのMMCXコネクタに関する問題がいくつか提起されました。Shuoer Acousticsは、改良された2pinコネクタでこれらの問題に対処しました。 イヤーシェルとケーブルの間にしっかりとした頑丈な接続を提供します。付属のケーブルにはバランス接続対応の2.5mmエンドプラグがあり、パッケージには2.5mm→3.5mm変換コネクタが含まれています。
ギャラリー
パッケージ(9.0)
端的に言って、Shuoer Tape Proのパッケージは私を感動させました。それは外観の上で豪華というわけではなく、たとえば同じ価格帯でひときわ豪華なパッケージを持つReecho × Peacock Springのように華美ではありません。
しかし、必要なものがわかりやすく梱包されており、イヤホン製品としては珍しいことに製品カタログまで用意されています。カタログにはShuoerの製品が一つ一つ紹介されており、見ているだけで楽しくなります。一昔前は多くの製品に同じ会社の別製品を紹介するカタログが入っており、それを読みながら次は何を買おうかとワクワクする瞬間がありました。今、このカタログを見て、そのワクワクする気持ちがよみがえりました。粋な計らいです。
Shuoer Tape Proは標準で2.5mmバランスと3.5mmシングルエンド接続に両対応しています。ユーザーの要望を受け、耐久性の点から2pinコネクタが採用されたそうです。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- 2種類合計6つのシリコンイヤーピース(S/M/L)
- チューニングキット(ネジタイプ、予備部品が1種類ずつ、簡易ネジ回しが1個付属)
- クリーニングツール
- 予備用フィルターノズル
- 2.5mmバランス接続対応0.78mm 2pinケーブル
- 2.5mm→3.5mmSE変換アダプタ
- キャリイングケース
Shuoerの製品カタログは読んでいて非常に楽しいです。
ビルドクオリティ(9.5)
Shuoer Tape Proは廉価なエントリークラスモデルですが、Shuoerがこの製品を長く使ってもらいたいと思っていることは、そのビルドからすぐにわかります。
Tape Proは高級イヤホンのCampfire Audioの製品と同等に思えるくらい、精巧で頑丈に作られています。さらにメンテナンス性が考慮されており、ノズルフィルターが取り外し可能で、イヤホンの清掃も簡単にできます。ノズルフィルター部分のネジ切りはかなり精度が高く、イヤホン装着中にノズルフィルター部分が緩んでくることはないと思われます。
背面のネジは取り外して付け替えることができます。ネジを付け替えることで音導管の内部圧力が変化し、音質が変化します。ネジの色は本体色によって違います。
この銀色モデルの場合、銀色のネジが標準です。青色を付けると低域が増すようです。
ノズルフィルターは本体に標準で装着されているものだけでなく、予備に2つ用意されています。
装着感(8.5)
金属製で尖っている感じがあるため、少し硬い装着感がありますが、小さな耳でも収まりの良いサイズです。
音質
周波数特性
上:生測定データ(破線)/下:自由音場補正済みデータ(実線)
上:生測定データ(破線)/下:自由音場補正済みデータ(実線)
上:生測定データ(破線)/下:自由音場補正済みデータ(実線)
上:生測定データ(破線)/下:自由音場補正済みデータ(実線)
ネジフィルターの音質の違いについて
聴感上はそれほど大きな差はありません。アンプ側の出力インピーダンスによって変化量が増えるかを確かめるため、Antelope Audio Amariを使用し、出力インピーダンス設定を27.9Ωに設定して測定しました。イヤーピースはfinal E Sサイズに変更しています。出力インピーダンスの違いは、ネジフィルターにほとんど影響はなさそうです。
オーディオステータス
※オーディオステータスは周波数特性(自由音場補正済み)から「各要素に関わる周波数帯域の平均値」を算出し、その特性平均値全体の「全体平均値」を求め、「各要素に関わる周波数帯域の平均値」の「全体平均値」からの乖離を数値化したものです。各要素の相対的な強さを表し、独自のオーディオ指標として試験的に導入しています。
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
THD特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
上は60dBSPL@1kHz時の周波数帯域ベースのTHD特性、下は1kHzでの音量レベルTHD特性(30dBSPL~70dBSPL;適正音量レベル)です。THD特性は1%以下で、満足できる品質です。
- THD平均値:0.104815255%
- THD平均値(100Hz以上):0.06907834%
- THDL平均値:0.149584475%
- THDL平均値(40dBSPL以上):0.191059866666667%
制動
アンプ側の出力インピーダンスが高い場合、Shuoer Tape Proは高域で出力インピーダンスの影響が比較的大きく出るようです。
Shuoer Tape Proを適切に駆動させたい場合、ソース側の出力インピーダンスは少なくともTape Proの公称インピーダンス値である16Ωの半分、8Ωを下回っている必要があると思われます。一部のスマートフォンやヘッドホンアンプはその数値を上回る可能性があるため、駆動に確実を期す場合、IEMの駆動に適したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)の使用が推奨されます。しかし、少し古いiPhoneをはじめ多くのスマートフォンでその駆動にそれほど問題はないでしょう。
ただし、実際に私が手持ちのスマートフォン(Samsung Galaxy P30)で聴いてみたところ、解像度は十分に高いですが、少し高域の繊細さが失われ、拡張性とマイクロディテールで劣るように思われました。
一般的には出力インピーダンスは0Ωに近い方が良いとされますが、もしソースの出力インピーダンスが十分に0に近い状態でノイズや歪みを感じる場合、出力インピーダンスが1.6Ω以上のものをソースとして選ぶのが良いかもしれません。私が試した範囲では、FiiO M15(SE出力時公称1.4Ω以下)とKANN ALPHA(SE出力時公称0.8Ω)でノイズや歪みはほぼなく、十分に静寂なように思われます(いずれもローゲイン。ただしハイゲインでも目立ったノイズや歪み感は感じなかった)。
以下はAntelope Audio Amariの可変出力インピーダンスシステムを用い、一定の装着感の下で、-4.6Ω、-0.3Ω、85.3Ω時の周波数特性(自由音場補正済み)を測定し、比較したものです。
出力をマイナスインピーダンスに持っていくと興味深い高域の伸長が見られます。
聴き比べ
ほとんどの人には関心がない情報と思われますが、実際にマイナスインピーダンスの影響は聴感上もそれなりに差があるように感じられたので、録音音源を用意しました。なおイヤーピースはfinal E Sサイズにしています。
-4.6Ωでは聴感上かなり高域の拡張性が改善され、ハイハットの余韻がはっきりするように思われますが、代わりにノイズが増えます。そこで、ノイズが気にならないレベルを探すと、私の場合、-2.8Ωくらいで気になりません。この状態でも0(-0.3)Ω時よりハイハットの余韻成分が多く、音抜けが良く聞こえます。
- インピーダンス-0.3Ω
- インピーダンス-2.8Ω
- インピーダンス-4.6Ω
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
Shuoer Tape Proは多くの人にとって、60phon~80phonで中域がニュートラルに近いサウンドを聴かせると思われます。
音質解説
Shuoer Tape Proは中低域から中域にかけて、比較的ニュートラルに近いサウンドを提供します。ディテールは強調されやすく、やや拡張性に欠けますが、全体的なバランスは良好です。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。(低域:20Hz~315Hz;中域:315Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz)[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B-
- 深さ:A-
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:B+
Shuoer Tape Proの低域は重みや太さに少し強調があります。
拡張性の点では比較的深く伸びており、階層性は悪くなく、エレキベースとドラムキックも比較的描き分けは良好です。しかし、ランブルの力強さにはやや欠け、力強さで物足りなさを感じます。少なくとも低域ジャンキーを満足させるレベルではないでしょう。
一方でコントラバスは厚みと重みのバランスが良く、自然な質感に近く聞こえます。
中域(9.0)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
Shuoer Tape Proの低域と中域は自然につながっており、低域から中域にかけては聴感上はほとんどニュートラルに聞こえます。
ボーカルは前進的で最前列に近い位置で聞こえます。軸はしっかりしていますが、息の伸びがやや足りない感じがあり、サ行が優しく聞こえます。柔らかみがある甘いボーカルに聞こえるので、日本語ボーカルの曲は聴き心地が良いですが、洋楽では子音が少し埋没的に思えるかもしれません。ただし、ツ音をはじめタ行は相対的に強く出やすい気がするので、ややチクチクする感じがあります。人によってはシャウティに思うかもしれません。
中域はやや前傾して聞こえるため、声質は基本的に明るく元気に聞こえますが、息の伸びに弱々しいところがあります。ボーカルはそれなりに快活ですが、溌剌さではいまいちに思うことも多いでしょう。
中域音は硬く聞こえやすいところがあり、骨組みは良く、構築的でかっつりしており、手掛かり良く聞こえます。モニターサウンドライクで分析的に聴けるところがありますが、硬い音が苦手な人には少し向かないかもしれません。
高域(8.5)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D-
- 存在感:C
Shuoer Tape Proの高域は艶やかでエッジ感に優れ、歯切れが良く聴こえますが、マイクロディテールと超高域の空気感に欠けます。そのため、風通しの点で物足りず、ときどき窮屈に聞こえます。
歯擦音や刺さりはほとんどでないため、高域に敏感な人でも比較的快適な高域ですが、余韻に欠けるため、音が硬く聞こえやすいでしょう。
定位/質感
- 質感の正確性:S-
- 定位の正確性:D+
- オーケストラのテクスチャ:A-
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvořák: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
拡張性に欠けるために倍音成分が弱い点が気になりますが、Shuoer Tape Proは比較的クラシック音楽向きです。バイオリンとチェロ、金管の力関係のバランスは比較的良好です。またバイオリンの一番エッジが効いている部分を良好に聴かせるので官能性の点でも優れています。
雅楽を聴くと、篳篥はそれなりに質感良く、「塩梅」の表情もわりとよく見えますが、龍笛や笙が前かがみで妙にガシャガシャして聞こえやすいところが気になります。高く抜ける感じに欠け、縦横無尽に天に駆け上がる音には聞こえません。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域上部~中高域
- 音場:B+
- クリア感:B
Shuoer Tape Proの音響的焦点は中域上部~中高域に存在します。
Shuoer Tape Proの音場はわずかに広い奥行きと標準的な深さの低域、やや拡張性に欠ける高域を持っています。
クリア感は価格の標準を満たしています。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:A-
- 個人的な好み:B
低域から中域にかけては比較的フラットでバランスの良いサウンドを持っていますが、高域の拡張性で劣る点が気になります。
質感的に少し硬く、手掛かり感はしっかりしたサウンドなので、構築感があり、モニターサウンドが好きなら気に入るかもしれません。
音質的な特徴
美点
- 中域への適切なフォーカス
- 骨組みのしっかりした構築的なサウンド
- 明瞭に聞こえるボーカル
- 高いディテール感
- ハリのある艶やかなサウンド
- ニュートラルに近くバランスが良い
- エッジ感がある
- 明度が高く明晰なサウンド
- 歯切れの良いサウンド
欠点
- 高域の拡張性に欠ける
- 硬く聞こえやすいサウンド
- 少し足りない低域の深さ
構築的なモニターサウンド
ディテールに優れる
ニュートラルに近くバランスが良い
音楽鑑賞
Jeremy Soule「Far Horizons」
高域の拡張性に欠けるので、倍音が空間に溶け込むように聞こえますが、明度は高く、木管やストリングスのエッジがきれいに聞こえます。
解像感は比較的良好に聞こえやすく、構築感がしっかりしており、モニター感があります。高さの不足は中域へのフォーカス感を高めているところもあり、ニュートラルで自然に近い質感で描き出される音楽の心臓部に集中して聴けます。
ナナヲアカリ「パスポート」
中域の構築感がしっかりしているので、こういう電子的なサウンドはかなりかっちりと聞こえる感じがあります。音楽のフレームも中域中心にフォーカスされるので、一番骨組みの良いところがしっかり聞き取れます。
ボーカルは媚びて鼻にかかって聞こえるわりに、少し溌剌さに欠けますが、この曲のアンニュイな雰囲気にはむしろふさわしい気がします。
マイクロディテールには劣り情報量は少しセーブされていますが、逆にそのおかげでシャカシャカしやすいうるさいところが聞こえなくて良いという印象も受けます。
sora tob sakana「ささやかな祝祭」
中域はしっかりしており、高域は静かなので、倍音が抑えられている分、響きよりも定位の明瞭感が高く聞こえます。そのため、オーケストラは物足りないですが、室内楽は満足度が高い傾向にあります。
そういうわけで、どちらかというと、室内楽的な雰囲気のあるこの曲とは相性が良いように思われます。中域の骨組みがしっかりしており、中域に限れば、かなり正確な定位で明確に聞こえます。
質感的にもかなり自然なので、アナログ感のあるこの曲とよく合います。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(白)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Tape Pro(銀)
- Shuoer Tape Pro(青)
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Tape Pro(銀)
- Shuoer Tape Pro(青)
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Tape Pro(銀)
- Shuoer Tape Pro(青)
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Tape Pro(銀)
- Shuoer Tape Pro(青)
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Tape Pro(銀)
- Shuoer Tape Pro(青)
総評
Shuoer Tape Proは比較的正確な中域構造を持ち、構築感に優れているモニターライクサウンドを持っているイヤホンです。高域の拡張性には欠けますが、中域をしっかりと明晰に聴かせる能力に長けています。フルオーケストラを聴くには窮屈な音場に思えますが、室内楽やJAZZ、EDM、テクノを好むユーザーには満足度が高いと思われます。
パッケージクオリティとビルドクオリティの点で価格を考えるとかなり優れており、コストパフォーマンスは全体的に高めです。
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