免責事項
- このレビューはShuoerから誠実な品質レビューを読者に伝えるために貸し出されたサンプルに基づいて書かれています。
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Shuoer Singerの概要
こんな人におすすめ
- 明瞭なサウンドが好き
- 音離れの良いサウンドが好き
- ボーカル重視
- ウォームなサウンドが好き
- ディテールサウンド重視
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~30kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:103dB/mW
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
- 価格帯:5000円~10000円
- パッケージ:9.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:9.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:12.5/10.0
長所
- 明瞭な定位
- 艶やか
- 構築的で確かな輪郭感
- ウォーム
- 中域への適切なフォーカス
- 自然で豊かなボーカル
- 良好なディテール感
- 拡張性のある高域
- 2.5mmバランス接続にデフォルト対応
- 豊富なアクセサリ
短所
- 甲高く聞こえやすい音
- 広くない音場
- 親密すぎる定位
- 音の高さの不足
- 効果が薄い上に緩みやすいノズルフィルター
Shuoerについて
Shuoer Acousticsは、2019年に独自ブランドとしてスタートしました。高品質のインイヤーモニター、特にエントリーレベルの価格帯のEST(静電型)ドライバー採用IEMであるShuoer Tape Proで知られ、静電型IEMメーカーとしては業界で有名なブランドの1つです。しかし、このブランドの製品は低価格だけに限定されていません。
このメーカーは先進的なドライバー技術の設計・生産に長けた専門的な少数精鋭の技術者集団を備えた確かな開発製造力を持っており、自社ブランド製品でハイエンド機種の製造においても卓越した能力を見せるだけでなく、他社ブランド製品の製造を丸ごと請け負ってもいます。
Shuoer Singerの特徴
Shuoer Singerは8mmダイナミックドライバーと静電気ドライバーが搭載されたハイブリッド型イヤホンです。 デュアルドライバーが精心的にチューニングされたので、立派な音質表現を持っています。20㎐から30000㎐まで の周波数反応範囲は色々なサウンドが聞こえできることを保障します。Shuoer Singerからの音は美しいで、 中高音域の音が強い貫通力をもって、ボーカル部分の音が豊かになって、低音域の音が明らかになります。
特別なデザイン
快適な装着感
Shuoer Singerは快適と軽量の設計を採用します。Shuoer Singerはより良い密閉性を持って、カナル型の設計が耳に非常に フィットします。より良い装着感を持ってきます。それとともに、Shuoer Singerのケーブルが断線にくいし、外観の設計を 注意されたので、視覚と触れる感覚によってShuoer Singerの良い品質を感じることができます。
高品質ケーブル
Shuoer Singerは高純度の単結晶銅ケーブルを搭載します。128コア4芯の高純度単結晶銅ケーブルが素晴らしい音声伝導性を持ちます。 それと、このケーブルの外には特別な材料を入れたので、断線にくいです。使用寿命が長めになります。 そして、便利なイヤホン収納ケースもあります。レザーのイヤホン収納ケースは触れる感が良いです。外出中にイヤホンを持ってきます。 どこでもHiFi音楽を楽しむことができます。
パッケージ(9.5)
Shuoer Singerのパッケージの外観は価格を考えると豪華ではありませんが、標準を満たしています。
パッケージ内容
付属品は価格を考えると豪華です。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- 2種類合計6つのシリコンイヤーピース(S/M/L)
- フォームイヤーピース
- 2.5mm→3.5mm変換アダプタ
- キャリイングポーチ
- マニュアル
ビルドクオリティ(8.0)
Shuoer Singerのビルドクオリティは比較的良好ですが、ノズルフィルター交換部分のネジの工作精度は少し甘いようです。
一日に数回フィルターノズルが取れることがあり、少し不安を覚えました。個体差があるとは思いますが、非常に気になります。フィルター自体の効果が高ければ、まだ良いですが、後述するようにその効果は限定的なので、なくてもよかったですね。
レトロな円筒形デザインはとても趣があり、個人的には好きです。
ケーブルの極性がわかりづらいかも知れません。ケーブル側のコネクタにある「●」を「+」に合わせると正しい極性になります。
装着感(8.5)
小型なので装着感は良好です。
音質
周波数特性
Shuoer Singerには低域を増強するというオプションのノズルフィルターが付いています。これに交換すると低域が増えると言うよりは高域が減衰するようです。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
THD特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
上は60dBSPL@1kHz時の周波数帯域ベースのTHD特性、下は1kHzでの音量レベルTHD特性(約30dBSPL~約70dBSPL;適正音量レベル)です。THD特性は1%以下で、満足できる品質です。
- THD平均値:0.07809447%
- THD平均値(100Hz以上):0.052811226666667%
- THDL平均値:0.0682817%
- THDL平均値(40dBSPL以上):0.057200566666667%
制動
Shuoer Singerは超高域でアンプ側の出力インピーダンスの影響を受けやすいようです。しかし、可聴域のほとんどで出力インピーダンスの影響は低く抑えられているようです。
スマートフォンで駆動を試しましたが、充分に駆動できている印象です。もちろん音源の解像度をより引き出すという意味でDAPを使用した方がエクスペリエンスの全体は向上しますが、スマホでの解像度も充分です。
以下はAntelope Audio Amariの可変出力インピーダンスシステムを用い、一定の装着感の下で、-4.6Ω、-0.3Ω、85.3Ω時の周波数特性(自由音場補正済み)を測定し、比較したものです。
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
BLON MINIは多くの人にとって、80phon付近で中域がニュートラルに近いサウンドを聴かせると思われます。
音質解説
Shuoer Singerはかなり自由音場フラットに近く、静電型ドライバーにより高域の拡張性も充分なサウンドを聴かせてくれます。フラットサウンド特有のやや奥行き感の少ない全音域が張り付いて聞こえるようなところはありますが、全体のバランスが非常に良好です。また自由音場フラット特有の音像の明晰感があり、各音像のまとまりが良く、定位が明確な、いわゆる「音離れの良い」サウンドになっています。
すでに書きましたが、低域ノズルフィルターに交換すると高域が減衰します。
以下のレビューはノーマルフィルターで行っています。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S+
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B+
低域は単体ではかなりフラットに近く、わずかにリラックスしています。
非常に自然なモニター感のある低域で、階層性は明瞭で、ベースとドラムの描き分けもしっかりしています。底は少し浅いですが、重量感は充分でしょう。
この価格では引き締まりもあり、ディテールも分かりやすく、かなり精彩感のある低域のため、量的な存在感以上に活き活きとしています。低域ジャンキーをかなり満足させることが出来そうです。
コントラバスの響きも自然で深みがあり、やや重いバランスに思えますが、かなりボディが豊かです。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B
- 硬さ:B
- 存在感:B
中域の心臓部はわずかに引っ込んでいますが、比較的前面で聞こえます。
中域の充実感と透明感は高く、Singerの名に恥じない、豊かで自然なボーカル表現を聴かせてくれます。
少しウォームですが、かなり均整が取れています。高域はややおとなしいことは事実で、少しかまぼこに聞こえるところがあります。
高域(9.5)
- 原音忠実度:A-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C+
- 荒さ:C-
- 繊細さ:C
- 存在感:B-
海外のレビューを読むと、高域の不足がよく指摘されているようです。たしかに中域のところで述べたように少しかまぼこに聞こえる気がするので、高域が不足しているように思うかも知れませんが、実際には高域の不足はそれほどありません。むしろ中域下部の厚みを削った方が良いですね。
実際のところ、自由音場フラットに比較的忠実なSingerの高域は定位の明瞭性やディテールにそれほど不足はありません。若干自由音場フラット特有の輪郭感の強さは感じますが、おそらくその硬い感触を抑えるために中域下部の厚みを足した気配があります。
しかし、実際にはこの硬い感触はむしろ高域の高さの不足に由来しているように私には思われますから、これは根本的な解決になっていません。それがウォームなサウンドであるにも関わらず、少し聞き疲れやすい傾向に繋がっているんでしょう。
たとえばイコライザーで125Hzを+2dB、250Hzを-2dB、500Hzを-2dB、8kHzを+1dB、16kHzを+2dBするだけでサウンドはより定位が明瞭になり、全体印象が改善します。ロックではギターの軸はよりまっすぐになり一貫性が増し、フルオケでは中域のわずかな濁りが改善され、距離感も適正になり、見晴らしが良くなります。この場合、実際にはウォーム感は減少していますが、聞き疲れ感も減るでしょう。
以下で実際に上記のイコライザー設定をかける前とかけた後を録音したものを聴き比べることができます。
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer(FiiO M15)
- Shuoer Singer(FiiO M15+EQ)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer(FiiO M15)
- Shuoer Singer(FiiO M15+EQ)
定位/質感
- 質感の正確性:A
- 定位の正確性:C
- オーケストラのテクスチャ:A+
- 雅楽のテクスチャ:A+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvo?ak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
定位の正確性のスコアが低いですが、これは音場が前方定位的でしかも前屈みになっているために、コンパクトに聞こえすぎるためで、中域の定位に限ればかなり正確です。
質感もかなり自然でクラシック音楽ファンにはおすすめしやすいイヤホンです。ただフルオーケストラを再現するには音場が少し狭いですね。
フルオーケストラの大規模編成に比べてコンパクトな構成で演奏されることが多い雅楽の場合は、音場の狭さでそれほど不利を感じません。質感もわりと自然で、笙の和音はやや派手で甲高さがわずかにありますが、自然に近く、非常に綺麗に細やかに聞こえます。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域
- 音場:B-
- クリア感:A
Shuoer Singerの音響的焦点は中域に存在します。
音場の位置はやや近く、全体も少しコンパクトに聞こえます。幅と奥行きが少し物足りない感じがします。
クリア感は価格を考えるとかなり優れています。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:A+
- 個人的な好み:A+
Shuoer Singerはあまり人気がないイヤホンのようで、海外のレビューでも「悪いチューニングだ」と直截的に否定的な評価を下す声もあります。
私はそのレビューが間違っているとは思いません。なぜなら、そのレビューはSingerのコンパクトな音場を批判しており、それは私自身のレビューで私が問題点として指摘したとおりの意見です。そしてこのレビューは実際のところ、Singerの優れたディテール感を的確に捉えており、窮屈な中域と少し輪郭の硬い中高域、やや高さに欠ける高域の構造から生まれる聞き疲れやすいサウンドを見事に指摘しています。
ただ、私はSingerは実際にはそれほどひどいチューニングではなく、ただほんの少し足りないだけだったというふうに修正します。そして、同価格帯の多くのイヤホンより実際には優れているサウンドであるように私には思われるので、欠点は認めつつも否定的な評価を下すことはしません。
事実、高域の拡張性はこの価格帯ではかなり優れています。それは「悪いイヤホン」ではなく、「惜しいイヤホン」であり、しかも音質の完成度は価格を考えると優れています。したがって、私はとくに抵抗なくこのイヤホンをおすすめできます。
音質的な特徴
美点
- 明瞭な定位
- 艶やか
- 構築的で確かな輪郭感
- ウォーム
- 中域への適切なフォーカス
- 自然で豊かなボーカル
- 良好なディテール感
- 拡張性のある高域
欠点
- 甲高く聞こえやすい音
- 広くない音場
- 親密すぎる定位
- 音の高さの不足
艶やか
良好なディテール感
明瞭な定位
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(白)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Singer
総評
Shuoer Singerはこの価格帯で買えるイヤホンの中では音質的な完成度が高く、フラットで万人向きのサウンドになっています。ノズルフィルターは緩みやすく、工作精度はもう少し足りない気がしますが、この価格で2.5mmバランスと3.5mmシングルエンドに両対応していることも含め、全体的なパッケージクオリティは高い水準にあります。音場は少し狭いですが、定位の明瞭性は高く、その名の通り、ボーカルフォーカスが良好な点が魅力です。
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