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【中華イヤホン Shuoer EJ09 レビュー】情報量が多く、粒度も細かい、高ディテールかつ高精細なモニターサウンド。それは分析的に音楽を楽しみたい人にとって最高レベルの相棒になる
Shuoer EJ09の概要
こんな人におすすめ
- 繊細で高解像度なサウンドが好き
- 分析的なモニターフラットサウンドが好き
- ディテールサウンド重視
- コスパ重視
基本スペック
- 周波数特性:20Hz-30kHz
- インピーダンス:20±2Ω
- 感度:110±1dB
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
長所
- 中域への適切なフォーカス
- 高い分析能力
- ニュアンスが豊かで清潔で繊細なボーカル
- 高いディテール感
- 全音域で均一性が高く、高水準のクリア感
- ニュートラルに近くバランスが良い
- 鮮明感が高い
- プロユースに耐える高品質のモニターサウンド
- 高精細なわりに聴き疲れしにくい
- 見通し感に優れ、情報量が多い
- 歯切れの良いサウンド
- 良好なビルドクオリティ
- 良好な装着感
短所
- 歯擦音が強く出やすい
- カリカリとした金属的で硬い印象を与えやすいサウンド
- 低域の深みに欠ける
- 超高域の抜けはもう少し欲しいかもしれない
Shuoer EJ09 5 EST + 3 BA + DD Flagship In Ear Earphone IEMs
Shuoerについて
Shuoer Acousticsは、高品質のインイヤーモニター、特にエントリーレベルの価格帯のEST(静電型)ドライバー採用IEMであるShuoer Tape Proで知られ、静電型IEMメーカーとしては業界で有名なブランドの1つです。しかし、このブランドの製品は低価格だけに限定されていません。
このメーカーは先進的なドライバー技術の設計・生産に長けた専門的な技術者集団を備えた確かな開発製造力を持っており、自社ブランド製品でハイエンド機種の製造においても卓越した能力を見せるだけでなく、他社ブランド製品の製造を丸ごと請け負ってもいます。
Shuoer EJ09の特徴
Shuoer EJ09は、同クラスの製品群をリードするインイヤーモニターの最新のフラッグシップモデルです。EJ07の直系アップグレードモデルとして提供されます。EJ07は7ドライバーハイブリッドセットアップ(Quad EST + 10mm DD + Dual BA)を備えていましたが、最新のEJ09は両側にプレミアム9ドライバーハイブリッドセットアップ(5EST + 3BA + 1DD)を備えています。ユーザーは、EJ09を購入する際に、3.5mmシングルエンドまたは4.4mmバランスエンドプラグの2つの異なるエンドオプションから選択できます。
- プレミアムハイブリッドドライバー構成
- 各サイドに5基の静電ドライバー
- 各サイドに3基のバランスドアーマチュアドライバー
- 1基のダイナミックドライバーユニット
- カスタムフェイスパネルオプション
- 3.5mmシングルエンド/4.4mmバランスターミネーションオプションで注文可能
- 2pin 0.78mmコネクタ
フラッグシップパフォーマー
Shuoer EJ09によって、フラッグシップグレードのオーディオパフォーマンスをどこにでも持ち運べるようになります。
Shuoer EJ09は、高品質のHiFi音響性能を備えたフラッグシップグレードのIEMです。 このIEMは、両側に9ドライバーハイブリッドセットアップを収容する人間工学に基づいたプレミアムイヤーシェルを備えています。このモデルは、高低両端の優れたエクステンション、豊かなパンチの効いたベース、自然なボーカル、そして風通しの良いサウンドステージで非常に優れたパフォーマンスを発揮します。音楽は詳細に聞こえるだけでなく、生き生きとした没入感のある音になり、音楽体験をまったく新しいレベルに引き上げます。
プレミアム静電ドライバー
ShuoerはESTドライバーに熟達しているブランドです。 EST(Electrostatic)は、適切に機能するために大量の電力を必要としていたため、以前はハイエンドヘッドホンでのみ使用されていたプレミアムドライバーです。
ここ数年で、テクノロジーは急速に進歩し、様々なブランドが現在、小型のIEMにESTテクノロジーを実装し始めています。
Shuoerは、Tape、Tape Pro、Singer、EJ07などでESTドライバーを採用しており、この新技術に習熟していることをすでに示しています。これらShuoerの代表的製品群はすべて、その品質の高いディテール再現度によって、多くの肯定的な評価を受けています。
フラッグシップモデルであるEJ09では、片側5基のESTドライバーと3基のBAドライバー、1基のDDドライバーを搭載しており、より優れた詳細なオーディオ出力を期待できます。
さまざまなエンドプラグオプション
ユーザーは、2つの異なるエンドオプションでフラッグシップEJ09を購入できます。1つは、高解像度プレーヤー、スマートフォン、その他のソースをサポートするシングルエンド3.5mmターミネーションです。 もう1つは、4.4mmバランスターミネーションオプションです。これは、バランス型4.4mmヘッドフォン出力オプションを備えた高解像度プレーヤーとDAC/AMPシステムをサポートします。
カスタムモデルも選択可能
Shuoerは自社でカスタムIEM製造能力を持っており、実際に自社内で耳型を取ってカスタムの受注を受けています。そのため、耳型データがあればEJ09をカスタムIEMとして発注することも可能です。カスタムモデルオプションについては各販売店に詳細を確認してください。
ギャラリー
パッケージ(8.5)
Shuoer EJ09は受注生産を基本としているため、パッケージの外装は簡素なようです。
しかし、外箱の中にはコンパクトでありながらしっかりした作りの内箱が入っています。内箱は二層に分かれており、上層に付属品、下層に金属製イヤホンケースに収められたイヤホン本体とケーブルが収められています。
内容物はイヤホン本体と、イヤーピース3種類合計8ペア、キャリイングケース、クリーニングツール、説明書などです。
ビルドクオリティ(9.0)
イヤホン本体のビルドクオリティは良好です。一見それほど派手さもなく、豪華さにおいてそれほど優れているように思えないかもしれません。しかし、快適な遮音性を実現する良好な装着感を持っており、よく構築されています。
フェイスパネルは選択可能なようです。
装着感(9.0)
筐体は少し厚みがありますが、遮音性に優れており、音漏れもかなり防いでくれます。小さな耳でも収まりが良いようです。
ドライバー構成
Knowles 22955 LFドライバーはサウンドステージの強固な基盤となります。細かく調整された中域用の2基のカスタム1006ドライバーを持ち、さらに1基のカスタム30098および2基のカスタム31735ドライバーは、細かく詳細でありながら絹のような滑らかな高音を実現します。
全ての周波数はバランスが取れており、互いに調和しており、プロの音響設計によって技術的に保証され、すべての音源が正確かつリアルに表現されます。
最適なバランスチューニング
HiByの社内音響エンジニアチームは、蓄積された経験を活かして、このバランスの取れた周波数曲線に基づいた音響設計をまとめ、優れたサウンドのための必要な基盤を実現しました。
ハイレゾオーディオ認定
日本オーディオ協会からハイレゾ認定されており、高音質ハイレゾミュージックの再生に最適です。
音質
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(白色) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(白色) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(白色) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(白色) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(黒軸) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(黒軸) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(黒軸) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(黒軸) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- イヤーピース比較(自由音場補正済み)
サウンドシグネチャー解説
Shuoer EJ09のサウンドはほとんどフラットなW字型というべき形をしています。低域は少し深めで高域も比較的高い、レンジの良い形をしています。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD+N特性
THD+N特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
THD+N特性は高級イヤホンの場合、1%以内であることが望ましいです。下の図は上が-40dBu@1kHz(適正音量レベル)における、スイープでの周波数毎のTHD+N特性、下が上限-30dBuで1kHzでの音量レベルによるTHD+N特性(THDNL)です。このイヤホンはどちらでも概ね1%未満で優秀です。
- THDN平均値:0.158307975%
- THDN平均値(100Hz以上):0.224766%
- THDNL平均値:0.248255666666667%
- THDNL平均値(-60dB以上):0.1362123%
制動
アンプ側の出力インピーダンスが高い場合、Shuoer EJ09は高域で出力インピーダンスの影響が比較的大きく出るようです。
Shuoer EJ09を適切に駆動させたい場合、ソース側の出力インピーダンスは少なくともEJ09の公称インピーダンス値である20Ωの半分、10Ωを下回っている必要があると思われます。一部のスマートフォンやヘッドホンアンプはその数値を上回る可能性があるため、駆動に確実を期す場合、IEMの駆動に適したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)の使用が推奨されます。しかし、少し古いiPhoneをはじめ多くのスマートフォンでその駆動にそれほど問題はないでしょう。
ただし、実際に私が手持ちのスマートフォン(Samsung Galaxy P30)で聴いてみたところ、解像度は十分に高いですが、少し高域の繊細さが失われ、拡張性とマイクロディテールで劣るように思われました。
一般的には出力インピーダンスは0Ωに近い方が良いとされますが、もしソースの出力インピーダンスが十分に0に近い状態でノイズや歪みを感じる場合、出力インピーダンスが2Ω以上のものをソースとして選ぶのが良いかもしれません。私が試した範囲では、FiiO M15(SE出力時公称1.4Ω以下)とKANN ALPHA(SE出力時公称0.8Ω)でノイズや歪みはほぼなく、十分に静寂なように思われます(いずれもローゲイン。ただしハイゲインでも目立ったノイズや歪み感は感じなかった)。
以下はAntelope Audio Amariの可変出力インピーダンスシステムを用い、一定の装着感の下で、-0.3Ω、85.3Ω時の周波数特性(自由音場補正済み)を測定し、比較したものです。なお、通常-4.6Ω設定も測定していますが、今回は-4.6Ω設定でつないだところ、ハウリングのような共鳴音がしたので測定しておりません。
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
Shuoer EJ09は多くの人にとって、60phon~80phonでフラットに近い、バランスの良いサウンドを聴かせると思われます。
音質解説
Shuoer EJ09は5基の静電型ドライバーが実現する類を見ない、非常に繊細に聞こえる高域を最大の魅力とし、さらにかなり数の多いマルチドライバー構成にも関わらず、全体的に低い歪み率とクロスオーバー歪みの低さ、非常にバランスの良いフラットサウンドを特徴としています。チューニングはかなり丁寧に行われているようです。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B
Shuoer EJ09の低域は比較的フラットに近く、中域と釣り合っており、階層性も確かです。
低域は比較的深くまで伸びていますが、重さや太さは強くなく、黒くなりすぎない適度な熱気があります。タイト感は中庸に近く、自然に近いライブ感に聞こえます。ドラムキックとエレキベースにも自然な分離感があり、描き分けは強調されませんが、自然に聴き分けられます。
低域は低域ジャンキーを満足させるレベルではないと思われますが、モニターするのに十分な量と深さがあり、見通し感がよく、バランス的にも中域を邪魔しません。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
Shuoer EJ09の低域と中域は自然につながっており、低域から中域にかけては聴感上はほとんどニュートラルに聞こえます。
ボーカルは前進的で最前列に近い位置で聞こえます。軸はしっかりしており、息の伸びは良く、歯擦音は少し強めに聞こえるためにニュアンスは良好です。ただし、ツ音が尖る音が嫌いな人には向きません。サ行のほうの刺さりはおそらくそれほどありません。音量やイヤーピースの密閉度次第ですが、場合によってス音やシ音を中心に少し強い程度に思われます。
光沢感は強めで、金属光沢感は少し強く出やすく、アコースティックギターはカリカリしやすいところがあり、ピアノもやや硬くキンキンしやすい質感に思えますが、非常に鮮明感が高く聞こえます。
この中域から高域にかけてはかなり音数が多く、情報量が豊富に聞こえるため、モニターサウンド的な構築感があり、解像感はかなり高く思えます。マルチドライバーにも関わらず歪みも少ないため、音像の純度も高く付帯音が少なめに聞こえます。
情報量の多さ、分離感の確かさ、フラットサウンド独特の音像の均等性からくる「音楽全体と定位の把握のしやすさ」、繊細さを兼ね備えていながら、長時間のリスニングでも聞き疲れしにくいサウンドであることから、このイヤホンは音質的には十分にプロ用モニターとしても通用するように思われます(本当にプロ用に使うためには耐久性、保守性など音とは別の要素があるので、あくまで音質面に限った話です)。
高域(10.0)
- 原音忠実度:C-
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C-
- 存在感:C+
Shuoer EJ09の高域は金属的な硬度が高く聞こえやすく、ややカリカリして聞こえやすいところがありますが、全体的に輝度が良好なために鮮明感が高く、エッジの再現度が細やかでディテールに優れています。
高域から超高域の高いところは私にはわずかに後退的に聞こえるので、ハイハットの広がりと抜けの良さはわずかに足りない気がし、それが高域の硬い雰囲気につながっていますが、その硬さのおかげで緻密感は高く感じられます。
Shuoer EJ09の高域の欠点はこうしたカリカリ感が出やすいところとボーカルの歯擦音が強く感じられやすいところで、それが人によって耳障りに聞こえる可能性があります。
しかし、それを除けば刺さりや不快感につながる要素はほぼなく、全体的にマイクロディテールに優れているにもかかわらず、聴き疲れる要素は少なめです。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域~高域
- 音場:A-
- クリア感:B+
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B
Shuoer EJ09の音響的焦点は中域~高域に存在します。
Shuoer EJ09の音場はわずかに広い奥行きと開放的で風通しの良い高域、少し深い低域を持っています。ボーカル周辺はとくに広く聞こえ、中域が広々としているのが特徴です。
クリア感は価格の標準を満たしています。これだけの数のマルチドライバー機としては高水準です。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S+
- 個人的な好み:S+
Shuoer EJ09は高精細、高レンジ、高情報量を併せ持つ現代的なモニターサウンドを持っています。Shuoerによる5基の静電型ドライバーの実装とクロスオーバーの処理はかなり丁寧に行われているようで、全体的に歪率を低い水準に抑えており、プロ用モニターとしても実用的な音質を確保しています。
そのサウンドの分析力は非常に高く、最近の緻密な構成のボカロ曲でさえ、エッジを丁寧に描き出し、適切に各音を詳細に分離して聞かせ、分析の信頼性を確保するほどのディテールを引き出すでしょう。
価格は人気機種のCampfire Audio ANDROMEDA 2020と同等です。しかし、サウンド面ではおそらく多くの人にとってANDROMEDA 2020を凌駕するように私には思われます。
ANDROMEDA 2020はよりマイクロディテールで優れますが、ガシャガシャしやすいところがあり、サ行は刺さりやすく、全体的に歪みも多く、中域から中高域にかけての音数でもEJ09より少なく聞こえるでしょう。
EJ09は逆にカリカリしやすく、ボーカルの歯擦音が強くなりやすいという欠点がありますが、情報量が多く、分析力ではANDROMEDAに勝り、より緻密でくっきり、かっつりしたエンジニア的なサウンドを聴かせます。ANDROMEDAより実用的でプロユースに耐えることができるサウンドに思われます。
この機種は約15万円ですが、そのサウンドは30万円クラスとでも渡り合えるかもしれません。
音質的な特徴
美点
- 中域への適切なフォーカス
- 高い分析能力
- ニュアンスが豊かで清潔で繊細なボーカル
- 高いディテール感
- 全音域で均一性が高く、高水準のクリア感
- ニュートラルに近くバランスが良い
- 鮮明感が高い
- プロユースに耐える高品質のモニターサウンド
- 高精細なわりに聴き疲れしにくい
- 見通し感に優れ、情報量が多い
- 歯切れの良いサウンド
欠点
- 歯擦音が強く出やすい
- カリカリとした金属的で硬い印象を与えやすいサウンド
- 低域の深みに欠ける
- 超高域の抜けはもう少し欲しいかもしれない
繊細で緻密なモニターサウンド
ニュアンスとディテールに優れる
ニュートラルに近くバランスが良い
競合機種との聴き比べ
今回は静電型の高級機種ULTRASONE SaphireとTri Starlightと聞き比べます。
ULTRASONE Saphire
ULTRASONE Saphireは前方定位感のある音場の中で、静寂感と繊細さを伴って音楽を丁寧に聴かせるULTRASONEらしい上品なサウンドを持っています。
それは明るく、ボーカルがはっきりと聞こえますが、一方で聴き心地が良い滑らかさと静寂感、分離感があり、長時間のリスニングでも疲れることのないサウンドを実現しています。
音場は広く、楽器音は良く整理されて聞こえますが、高さや深さといったレンジの拡張性に優れている機種ではありません。
ULTRASONEは解像度を重視しつつ、同時に聴き心地にも配慮した全体的なエクスペリエンスの高いサウンドデザインで知られています。ハイエンドイヤホンであるSaphireもその点は変わらず、耳に優しく立体的に聞こえる奥行き感を重視したリスニングサウンドになっています。
Tri Starlight
Tri Starlightは高域でディテールと粒立ち感を強調するいかにも静電型らしいサウンドを持っています。
また、Tri i3のサウンドを受け継いで音場重視のレンジと奥行き感に優れたサウンドになっており、ステージングに優れているのが特徴です。
やや高域でピーキーなところがあり、ときどきカリカリギラギラしていて、ガシャガシャすることもあり、尖りや刺さり感が出やすいところもあるサウンドですが、金細工のような細やかさと派手さを兼ね備えています。
また低域がかなり深く到達するため、ベース音などに黒みがあり、全体のコントラスト感も高めです。
Tri Starlightは人気の高いTriのフラッグシップモデルです。Triの製品の中では珍しくアグレッシブなサウンドで、ややピーク感が強いですが、Triらしいレンジ感の良いサウンドは価格相応の満足感を十分に与えてくれます。
聴き比べてみましょう!
というわけで、早速それぞれの静電型イヤホンを聴き比べてみましょう。
録音音源で使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
- Shuoer EJ09
- ULTRASONE Saphire
- Tri Starlight
この音源をとくにギターに集中して聴くによって中域の音のバランス、上下の情報量が把握できることが期待されます。ギターサウンドの全体像(音の傾き)がどのように聞こえるかでそのイヤホンの分析能力とバランス感覚の良し悪しが把握できるでしょう。
結論めいたことから先に言いますと、この3機種の中で最もフラットに近く聞こえることが期待されるのはShuoer EJ09で、とくに中域から高域にかけて最も情報の提示が多いモニター的なサウンドに聞こえると思います。エレキギターに注目すると、エッジの歯切れの良さ、艶やかさ、鮮明感、上下のバランスの良さなどの点で最も全体の情報量が多く、優れて聞こえるのではないでしょうか。少なくとも私にはこの中でギターサウンドの全体像が最も把握しやすいのはEJ09です。
他の2機種はどちらも奥行きのあるステージングを重視していますが、より中域にフォーカスする傾向が強いSaphireとより高域と低域が強調されたレンジ感重視のStarlightといった具合にカテゴライズすることができるでしょう。
もっと簡潔に言うと、最もドンシャリなStarlight、最もフラットなEJ09、最もかまぼこなSaphireとなります。
- Shuoer EJ09
- ULTRASONE Saphire
- Tri Starlight
この音源では各イヤホンの音場感をわりとわかりやすく把握できます。
おそらく多くの人にとってはフラットでモニター的で、各音の音像が並列的に把握しやすいのはShuoer EJ09でしょう。
ULTRASONE Saphireの音場はShuoer EJ09よりは奥寄りで少し遠く聞こえると思われます。
それに対し、全体的に音場が最も親密な位置で、立体的に定位も強調されて聞こえるのはTri Starseaです。このイヤホンはこの中で最も没入感が高いと思われます。
- Shuoer EJ09
- ULTRASONE Saphire
- Tri Starlight
この楽曲ではバイオリンを聴くことによって、倍音成分の響き方を確認でき、高域の表現の仕方を確認できます。
おそらく多くの人にとって、EJ09のバイオリンの聴かせ方は軸が立ち、倍音の響き方が素直にまっすぐ伸びており、音像の安定感が高く、モニター的に把握しやすいサウンドに聞こえると思われます。
一方でSaphireの聴かせ方は倍音が広い空間に溶け込むように聞こえ、音楽に空間的奥行きを感じさせますが、モニター的に聴くには音が遠すぎる印象を受けると思います。
最後にStarlightのバイオリンの倍音は揺らぎ成分が多く、非常にグルーヴ感に満ちて生き生きと聞こえますが、ときどき遠ざかったり近づいたり響いてくるように聞こえ、モニター的にしっかり聴くには音像が安定していないように思われます。
こうした特徴を捉えていくと、おそらく多くの人にとって楽曲を分析するための、信頼するに足る正統派のモニターサウンドを提供するのは、この中ではEJ09なのではないかと思います。
音楽鑑賞
Void_Chords feat.MARU「The Other Side of the Wall」
非常に情報量の多い曲ですが、このイヤホンはその情報量が密集する中域から高域にかけてのあたりを、かなりフラットに近くすべての音をほとんど均等な存在感で聴かせつつ、聞き取りづらさをほとんど感じさせずに再生しきることができます。
最初は情報量の多さに少し眩暈がするくらいですが、情報量の多い中でもボーカルフォーカスは良好で、音楽全体を聞き取る手がかりとしてボーカルラインの存在感は確かです。そのためボーカルラインを手掛かりに音楽を聴いていけば、とくに最も分析的に聴きたい帯域の情報はほぼ完全に把握できます。このモニター力の高さは驚異的です。
歪みもモニターに支障がないくらいの音像の純度を実現する水準にあるので、解像感は非常に高く、音数が多い曲でも付帯音などの雑味がかなり少なく、高い音像描写力を発揮してくれます。
Christopher Tin「Baba Yetu [feat. Soweto Gospel Choir]」
EJ09は高品質な録音音源ほどその分解能の高さを発揮するところがあり、たとえばゲームミュージック史上に残るこの曲の圧倒的情報量のあるオーケストラサウンドをほぼ完ぺきに表現するかのように思えます。
コーラスの情報量と広がり、ディテール感は圧倒的で、ボーカルは天井知らずに伸びるかのように聞こえます。そのサウンドは非常に臨場感が高く、イヤホンがないかのように聞こえる、いわゆる「イヤホンの存在(ウェイト)が消えるサウンド」に近く、私には驚きしかありませんでした。
間違いなく、EJ09が聴かせるこの曲は、これまで数多く聴いてきた「Baba Yetu」の中で最高のサウンドで、これが私がこのイヤホンを欲しくなった瞬間です。このサウンドは聴いたことがない。
天才Christopher Tinが信じられない緻密さで作り出したこの世界最高峰のスケール感のある音楽を、遺憾なくここまで再現できるイヤホンは数えるほどしかないでしょう。まるでこのイヤホンのために書き上げられたのではないかと錯覚するほどです。
澤野弘之「βios」
とにかく緻密。このイヤホンの、精緻な情報量を引き出すかのような分解能の高さは、情報量が多く、精巧に構築的に作られた音源ほど、正義に思えます。
音数が少ない曲でも、少し硬いけどきれいで解像感が高いと思え、満足度は高いですが、音数が多い曲はとにかくおかしいくらいの描写力が発揮され、無限大に近い暴力的没入感を感じます。
逆に言うと、情報量的な緻密さが足りない曲ほど物足りなく思えるところがあるので、意外と曲を選ぶところがあるかもしれません。
かめりあ feat. ななひら「【高音質】魔力エネルギーで激ヤバ最強音質!マジカルオーディオ なんばーわん! (128kbps)」
この、明らかに頭がおかしい情報量爆発している曲も完璧と言えるほどすべての音を聞き取ることができ、かつ聴き疲れ感をかなりセーブして聴かせてくれます。信じられません。
たとえばTri Starlightなんて同じ静電型ですが、明らかに音数に不足を感じ、中毒性で断然劣ります。
普段私がこの曲を聴くときに使う驚異の低価格モニター Moondrop SSRとかいう神イヤホンがありますが、それすらEJ09と聴き比べると、描写力でだいぶ(!)足りておらず、まだこの曲の本当の暴力を引き出せていなかったのだと気づかされました。
このイヤホンのモニター力はかなり異常です。
Shuoer EJ09 5 EST + 3 BA + DD Flagship In Ear Earphone IEMs
BGVP DM8は完璧なパッケージであり、それは美しい外観、強力なサウンドを持っており、お財布に優しい価格で購入可能です。ユーザーは$350でこの素晴らしい製品を手に入れることができ、高品質なオーディオファン向きの音楽パフォーマンスを楽しむことができます。我々は以前、このブランドのDM6、DMG、Zeroや他の製品を試してみましたが、それらはどれも非常によくできていました。
BGVP DM8は滑らかで安定的、温和でウォームなサウンドで、中域を丁寧に聴かせるイヤホンです。その甘くふっくらとした、ニュアンスの柔らかい調和的なボーカル表現はどこか懐かしく、メロウでノスタルジックな雰囲気があります。マイルドで耳当たりが良く、音量を上げても荒れるところのないイヤホンです。ビルドクオリティやパッケージクオリティも価格の標準以上のため、この価格帯で音楽的な中域を持つイヤホンを探している人の最適解になりえます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(黒軸)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
巨イナルチカラ
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
ユルギナイツヨサ
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer EJ09(Antelope Audio Amari)
総評
正直に言って、これまで私はハイエンドイヤホンにそれほど価値を感じてきませんでした。私の音楽鑑賞はもっと安いイヤホンで十分でしたし、それらはハイエンドイヤホンよりモニタリング能力で優れてさえいたので、私には10万円以上のお金をイヤホンに払う必要性がありませんでした。しかし、Shuoer EJ09のサウンドはその私の経験を容易に突き崩しました。そこにあったのはただただ暴力的なまでの描写力で、まさに異次元でした。「これが15万円?安すぎる」という、自分でも明らかに意味不明な思考に支配され、現在進行形で自分自身に困惑しているほどです。
とにかくこのイヤホンの常識はずれなモニタリング能力は、多くの人の音楽体験を新しいレベルに引き上げることは間違いありません。そしてこのサウンドを作り上げたShuoerというメーカーは明らかにクレイジーです。
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