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Shuoer Conductorの概要
こんな人におすすめ
- かっつりした少し硬めの音が好き
- 分析的なモニターフラットサウンドが好き
- ディテールサウンド重視
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~30kHz
- インピーダンス:8±2Ω
- 感度:104dB/mW
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:9.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:7.0/10.0
長所
- バランスが良い
- かなり忠実なハーマンチューニング
- 拡散音場に基づく自然な響き
- 音像の均一性が高い
- 中域への適切なフォーカス
- ディテール感のあるサウンド
- みずみずしい中域
- 自然に近い質感
- 中域とよく釣り合っている高域
- 豊富な付属品
- 良好なビルドクオリティ
短所
- 高域の拡張性に欠ける
- わずかに刺激的になりやすい高域
- ダイナミズムに欠ける
- クリア感に欠ける
- ケーブルのタッチノイズ
Shuoer Conductor Electrostatic DD+2BA+4EST Tribrid Flagship In-Ear Earphones
Shuoerについて
Shuoer Acousticsは、2019年に独自ブランドとしてスタートしました。高品質のインイヤーモニター、特にエントリーレベルの価格帯のEST(静電型)ドライバー採用IEMであるShuoer Tape Proで知られ、静電型IEMメーカーとしては業界で有名なブランドの1つです。しかし、このブランドの製品は低価格だけに限定されていません。
このメーカーは先進的なドライバー技術の設計・生産に長けた専門的な少数精鋭の技術者集団を備えた確かな開発製造力を持っており、自社ブランド製品でハイエンド機種の製造においても卓越した能力を見せるだけでなく、他社ブランド製品の製造を丸ごと請け負ってもいます。
Shuoer Conductorの特徴
フラッグシップドライバーモデル
ShuoerのフラッグシップインイヤーモニターモデルであるConductorは、ヨーロッパのドライバーメーカーSonion社の最新の静電型(EST)ドライバーを搭載しています。
このEST65QB02は、独自に開発したトランスを搭載し、4つのウルトラナノメンブレン静電型トゥイーターを駆動することで、高音域を人間の耳で知覚できる範囲を超えて拡張することができます。
Knowles WBFK 30095スーパートゥイーターとSonion 2389デュアルバランスド・アーマチュアとの組み合わせにより、Conductorは非常にまとまりのある、細部まで行き届いた、絹のように滑らかな高音域レスポンスを実現しています。
Shuoerが自社で製造した10mm液体シリコンダイナミックドライバーは、深みのあるパワフルな低音を出力しますが、減衰が早く、透明感のある均一な中音域レスポンスを実現します。これらのドライバーは、緻密に計算された3ウェイクロスオーバーシステムと3つのサウンドボアを用いて、楽器の分離とステレオイメージを強調するようにまとめられています。
ハーマンターゲットカーブ2019に基づいたバランスの良い出力
全体的なチューニングは、最近の2019年版Harman Curveをアップデートしたものですが、より良い低音のインパクトと、さらに届く高音の伸びを実現するために修正されています。Conductorは、透明感と生命感あふれる雰囲気が特徴の、快適でスムーズなリスニング体験を提供します。
医療用樹脂による快適性の高いイヤーシェル
Conductorの筐体には、生体用の補綴物や補聴器によく使用されるヨーロッパの医療用樹脂が使用されています。Shuoerでは、より強力な紫外線照射と長い処理時間により、快適な装着感を保ちながら、経年劣化に耐えうる耐久性の高いシェルを実現しています。厚みのあるシェルは、外耳道の密閉性を高め、外界の騒音を最大で26dB遮断します。
超高純度銅ケーブル
音質を最大化するために、カスタムの6N超高純度無酸素銅ケーブルがConductorとペアになっています。銅の自然な電気伝導特性により、中音域はより暖かく、より豊かな音色を生み出し、低音のパワーがさらに強化されます。Shuoer Conductorは、あなたのために最高のサウンドを準備してお届けします。
ギャラリー
パッケージ(8.5)
Shuoer Conductorのパッケージクオリティは価格の標準を充分満たしています。そのパッケージは凝ったデザインではありませんが、価格に見合った高級感があり、機能的でエレガントです。
Shuoer Conductorは標準で4.4mm/2.5mmバランスと3.5mmシングルエンド接続に対応しています。Shuoerの製品カタログも付属しています。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- 3種類合計8つのシリコンイヤーピース(S/M/L)
- フォームイヤーピース
- クリーニングツール
- 2.5mmバランス接続対応0.78mm 2pinケーブル
- 2.5mm→3.5mmSE変換アダプタ
- 2.5mm→4.4mm変換アダプタ
- キャリイングケース
Shuoerの製品カタログは読んでいて非常に楽しいです。
ケーブルはファブリックコーディングされ、非常に高品質です。ただしタッチノイズは少し目立ちます。
ビルドクオリティ(9.0)
Shuoer Conductorのビルドクオリティは精巧です。医療用樹脂が採用されたイヤーシェルは高品質に出来ており、内側から覗ける配線も丁寧に組み上げられています。
デザインに新奇性はなく、むしろ地味でさえありますが、全体的な造型に優れています。
装着感(9.0)
レジン製シェルは耳当たりが優しく、外耳道をほぼ完全に塞ぐことができ、密閉性は良好です。
イヤーノズルが少し長いので、人によってはイヤーピースは小さめの方が良いかもしれません。私はいつもより1サイズ~2サイズ下を使っています。
音質
周波数特性
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD特性
THD特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
上は60dBSPL@1kHz時の周波数帯域ベースのTHD特性、下は1kHzでの音量レベルTHD特性(30dBSPL~70dBSPL;適正音量レベル)です。THD特性は1%以下で、満足できる品質です。
- THD平均値:0.28304613%
- THD平均値(100Hz以上):0.30972784%
- THDL平均値:0.7836585%
- THDL平均値(40dBSPL以上):0.818677%
制動
アンプ側の出力インピーダンスが高い場合、Shuoer Conductorは高域で出力インピーダンスの影響が比較的大きく出るようです。
Shuoer Conductorを適切に駆動させたい場合、ソース側の出力インピーダンスは少なくともConductorの公称インピーダンス値である8Ωの半分、4Ωを下回っている必要があると思われます。一部のスマートフォンやヘッドホンアンプはその数値を上回る可能性があるため、駆動に確実を期す場合、IEMの駆動に適したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)の使用が推奨されます。しかし、少し古いiPhoneをはじめ多くのスマートフォンでその駆動にそれほど問題はないでしょう。
ただし、実際に私が手持ちのスマートフォン(Samsung Galaxy P30)で聴いてみたところ、解像度は十分に高いですが、少し高域の繊細さが失われ、拡張性とマイクロディテールで劣るように思われました。
一般的には出力インピーダンスは0Ωに近い方が良いとされますが、もしソースの出力インピーダンスが十分に0に近い状態でノイズや歪みを感じる場合、出力インピーダンスが0.8Ω以上のものをソースとして選ぶのが良いかもしれません。私が試した範囲では、FiiO M15(SE出力時公称1.4Ω以下)とKANN ALPHA(SE出力時公称0.8Ω)でノイズや歪みはほぼなく、十分に静寂なように思われます(いずれもローゲイン。ただしハイゲインでも目立ったノイズや歪み感は感じなかった)。
以下はAntelope Audio Amariの可変出力インピーダンスシステムを用い、一定の装着感の下で、-0.3Ω、85.3Ω時の周波数特性(自由音場補正済み)を測定し、比較したものです。なお、通常-4.6Ω設定も測定していますが、今回は-4.6Ω設定でつないだところ、ハウリングのような共鳴音がしたので測定しておりません。
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
Shuoer Conductorは多くの人にとって、80phon付近で中域がニュートラルに近いサウンドを聴かせると思われます。
音質解説
Shuoer Conductorは中低域から中高域にかけて、比較的ニュートラルに近いサウンドを提供します。中高域で充分なディテール感を確保しつつ、全体的に自然な質感が重視されており、非常に万能性が高いサウンドです。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:A-
- 深さ:A-
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B
Shuoer Conductorの低域は深さも充分で、階層性に優れています。
比較的深くまで低域が伸びており、量的には強調されませんが、存在感は充分です。中域とのバランスはほぼ釣り合っているので、うるさくなることはありません。質感はかなり自然で、中庸に近いタイト感があります。
ベースとドラムキックの分離も良く、全体的に明瞭性の高い低域です。個人的にはもうちょっと深いところが強調されている方が好きでベースが薄い感じがしますが、ほとんど不満はありません。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
中域はフラットに近く、低域、高域との繋がりとの自然で、かなり透明度が高く、みずみずしいサウンドを奏でます。
質感も自然で、ボーカルと楽器のバランスも良いですが、アコースティックギターのエッジの歯切れがやや目立ち、少しギラつきが強く聞こえます。輪郭がはっきりするので、モニター感がありますが、人によっては少し音が硬いかも知れません。
ボーカルはタ行に少し強調があり、わずかに唾が多く聞こえますが、トゲトゲしい感じはありません。全体的にかなりナチュラルで軸もほぼまっすぐに聞こえますが、母音はわずかに弱く、やや重心が上ずって聞こえるところがあります。
中域の明度は充分で、見通しも良いです。
高域(9.5)
- 原音忠実度:B-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B
- 脆さ:C+
- 荒さ:D
- 繊細さ:D+
- 存在感:C
高域は全体的にバランスが良いですが、拡張性は少し足りないようです。
高域の輝度と中域の明度は釣り合っており、マイクロディテールは充分かわずかに不足するくらいですが、余韻は少し物足りません。
高域の刺激的な成分を抑えたい場合、標準イヤーピースの白色のものを使用すると収まる可能性があります。さらにそれでも不十分な場合、final Eタイプ BLACKがおすすめできますが、高域の拡張性も犠牲にしやすいイヤーピースなので、根本的な解決にはならないでしょう。静電型の利点が少し失われます。
高域はとくに健聴な若い人にとって、わずかに刺激的で尖った音に思わせるかも知れません。50代以上になると、ボーカルが押し出し気味になって、もう少し中域中心で聞こえるようになりそうです(イコライザーで確認)。
全体的なバランスは良いので、欠点は少ない高域です。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B-
- オーケストラのテクスチャ:A
- 雅楽のテクスチャ:A
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvořák: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
あくまで中域の質感に限れば、私にはConductorのサウンドは完璧に近く聞こえます。それはたしかにその名にふさわしく、指揮者のように中域の定位をほぼ完璧に、各楽器をふさわしい場所に配列しています。各音のバランスもほぼ均等で、管楽器と弦楽器のバランスも適切に思えます。
N5005と聞き比べても、中域はむしろ完璧です。質感の点では私の耳にはN5005よりも実際には優れて聞こえるほどです。
しかし、その音はクラシックファンにとって、おそらくN5005に及びません。私の耳にはたしかに、N5005の音は質感の点で自然より少し明るく聞こえますが、一方でConductorに比べてダイナミズムとエッジ感に優れており、倍音が豊かで圧倒的迫力と勢いがあり、音に高い没入感があります。私にとってN5005とConductor、どちらがより優れた指揮者であるかは明らかです。ドヴォルザークのこの曲の優雅さと華やかさを引き出す性能においては、N5005に軍配が上がります。
雅楽についてもConductorはほぼ完璧と言って良いです。非常に繊細で明るく、「塩梅」の音のフシもよく聞こえます。しかし、それはハーマンターゲットカーブ特有の中高域が目立つ傾向があり、篳篥がやや埋もれて聞こえやすいところがあります。完成度が高いことは事実ですが、Conductorは私にとって、リファレンスであるfinal A3000に及びません。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域~高域
- 音場:B+
- クリア感:B-
Shuoer Conductorの音響的焦点は中域~高域に存在します。
音場は奥行きと深さは少し広く、高さ、幅はほぼナチュラルだと思います。
クリア感は価格の標準を満たしています。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:A-
- 個人的な好み:B
Conductorは私にとって完璧に近いサウンドであり、素晴らしいイヤホンです。しかし、それはより完璧に思えるいくつかのイヤホンと比べたとき、魅力を大幅に失います。
まず異次元のサウンドを持つShuoer EJ09が価格以上に思えたのに対し、Conductorは価格を考えると私には平凡な音に聞こえます。EJ09の圧倒的ディテール感とは価格差以上に思えるほど雲泥の差があります。それは同価格帯のAKG N5005よりも質感のうえで自然に聞こえますが、拡張性とダイナミズムに欠けます。質感の上では私には完璧に自然に近く聞こえるfinal A3000に劣り、わずかに退屈に聞こえます。
私自身些か当惑しています。周波数特性の上でも聴感の上でもConductorがかなり素晴らしいということは事実で、私の好みのサウンドに思えたのですが、なぜか私には深く響かず、それは価格なりか……もしかするとちょっと価格に劣るサウンドに聞こえます。
ですが、客観的に考えると、おすすめ度が高い水準であることは間違いありません。そのため、これらのランクは高くスコアリングしています。
しかし、見た目のスコアに比べると、個人的なおすすめ度ははるかに低く、これより1more ComfoBuds Pro(低域がConductorに劣るので本来であればより私の好みではないはずの機種)を買った方が総合的な音質的満足度が高いだろうとすら思っています。
音質的な特徴
美点
- バランスが良い
- かなり忠実なハーマンチューニング
- 拡散音場に基づく自然な響き
- 音像の均一性が高い
- 中域への適切なフォーカス
- ディテール感のあるサウンド
- みずみずしい中域
- 自然に近い質感
- 中域とよく釣り合っている高域
欠点
- 高域の拡張性に欠ける
- わずかに刺激的になりやすい高域
- ダイナミズムに欠ける
- クリア感に欠ける
構築的なモニターサウンド
ディテールに優れる
ニュートラルに近くバランスが良い
Shuoer Conductor Electrostatic DD+2BA+4EST Tribrid Flagship In-Ear Earphones
音楽鑑賞
田村ゆかり「あ、ほーるうにゅわーるど。」
ディテール感はかなり確かで、解像感もあるので、こういう電子音の多い曲も充分な分離感で楽しめます。輪郭感もしっかりしており、構築感も確かです。
それでいて、質感は比較的ナチュラルなので、ボーカルに不自然さがほとんどありません。低域から高域まで上下の音域のバランスも良好なので、見通し感も良好です。
梶浦由記「Swordland」
全体的に見通し感が良好で、バイオリンの質感も自然に近く、コーラスものびやかに聞こえます。
それでもN5005と聞き比べるとマイクロディテールに不足を感じ、コーラスやバイオリンももう少し伸びた方が官能性の点でより高い満足度が得られることに気づきます。
全体のクオリティは悪くなく、むしろ優れているんですが、それだけにより作り込まれたサウンドのイヤホンとの違いがわかりやすく感じるところがあります。
中域のクリア感が足りないのも大きいかも知れません。
三月のパンタシア「ピンクレモネード」
私の大好きな曲です。Conductorのバランスは悪くないのですが、どうもピアノの音やボーカルの声質が角が立って聞こえやすく、全体的に硬すぎる印象を受けます。
単純に高域から超高域の不足だと思いますが、スネアは少しガタガタして聞こえます。こういうバランスが好きという人もいそうですし、少し強めにガツンとくる感じがメリハリ感に繋がってよいという意見もありそうですが、私には嫋やかさが足りず、ボーカルが少し窮屈に聞こえます。
これももっとバランスが悪ければ不自然に感じないのですが、なまじバランスが良いだけにわずかな不足がより大きな不満に思えるところがあります。「玉に瑕」というやつですね。価格がもっと安い機種なら気になりませんが、価格がこれくらいの機種になるとどうしても妥協しづらいところがあります。
Shuoer Conductor Electrostatic DD+2BA+4EST Tribrid Flagship In-Ear Earphones
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(黒軸)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Conductor
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Conductor
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Conductor
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Conductor
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Shuoer Conductor
総評
Shuoer Conductorはハーマンターゲットカーブにほとんど忠実な良質なチューニングと、静電型特有のきわめて品質の高い高域が特徴です。そしてバランス感覚もかなり優れています。
しかし、クリア感やマイクロディテール、拡張性のわずかな不足がこのイヤホンのサウンドを私には少し退屈で窮屈なものにしています。この印象が本当に客観的なものかどうかは保留すべき点もあり、オーディオスペック的に目立って劣るわけでもなく、むしろそれは優れてさえいると言える点も多いので、スコアにすると点数は良好でした。それでも、私個人としてはあまり妙味を感じなかった製品です。パッケージやビルドクオリティなどを総合的に勘案すると、おすすめ度は高いのですが、本心ではいまいち煮え切らない印象が拭えません。
Shuoer Conductor Electrostatic DD+2BA+4EST Tribrid Flagship In-Ear Earphones
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