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【中華イヤホン SeeAudio ANOU レビュー】ステージングに優れた中域と豊かなグルーヴを持つダイナミックな高域が、ボーカルをはじめ音楽全体を生き生きとしたものにする
SeeAudio ANOUの概要
こんな人におすすめ
- スマホでも鳴らせるイヤホンが欲しい
- 没入感の高い音を楽しみたい
- おしゃれなイヤホンが好き
- ボーカルをしっかり楽しみたい
基本スペック
- 周波数特性:20hz-20khz
- インピーダンス:27Ω
- 感度:108dB
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
公式サイト
長所
- 中域の暖かなハーモニクス
- 良好なステージング
- エネルギッシュでディテール感のある高域
- 没入感が高い
- 質の良いパッケージ
- ビルドクオリティが高い
- 一般的なスマホで十分に駆動できる
短所
- パッケージの作り込みが甘い
- クリア感に欠ける
- 低域の深みは少し足りない
See Audioについて
SeeAudioは2018年に設立されたばかりのまだ非常に若いブランドです。その評判は中華イヤホン界隈でもほとんど無名と言っていいでしょう。このブランドの製品は現代日本文化へのリスペクトに溢れています。静電型ドライバー4基とバランスドアーマチュアドライバー4基を搭載したブランドのフラッグシップIEMは「Kaguya(輝夜)」と名付けられました。
SeeAudio ANOUの特徴
SeeAudio ANOUはSeeAudio Yumeの分身でありながら、それはSeeAudioにとってYumeより大きな意味を持っています。
See Audioは世界展開させるモデルとして、市場の流行に沿ったサウンドのYumeを作りながら、一方で彼ら自身のブランドが本当に愛する音、実現したい音を温めていました。彼らが敬愛し、進出することを夢見ていた日本で製品を展開するにあたって、彼らは秘蔵していたこのチューニングレシピを尊敬してやまない友人であり、成熟した感性を持つ日本のオーディオファンに真っ先に聴いてもらいたいと思ったのです。
日本には流行を追う世界のオーディオシーンとは異なり、四季折々の情景とともに生み出されてきた独自の典雅なオーディオ文化があります。そこには風味のある芸術的なサウンドを高度に理解できる音楽文化があるとSeeAudioは信じており、表面的な意味でない、本当に心に響く美しい音を最もよく理解してくれるのが日本のオーディオファンだという信頼と尊敬の気持ちがあります。
SeeAudioがすでに成功したYumeではなく、ANOUのサウンドで日本市場に進出することは冒険でした。彼らは彼ら自身が最も愛する音を日本で展開し、日本の人々に受け入れてもらいたいと切に願って、あえて日本限定モデル「ANOU」を完成させました。
ANOUはSeeAudioが世界のどこよりも日本のオーディオファンを重視している気持ちの表れであり、彼ら自身の真心が詰まっている結晶です。彼らの日本に対する情熱がANOUという唯一無二の製品を生み出しました。
3BA構成
SeeAudio ANOUは1DD+2BAだったSeeAudio Yumeとは異なり、3基のバランスドアーマチュアドライバーを搭載しています。
変更されたフェイスプレート、イヤホンケース
SeeAudio Yumeと似たようなデザインながら、SeeAudio Anouのフェイスプレートの色合いは変更され、ケースも新たに公式キャラクターRinkoを押し出すものに変更されました。
日本限定パッケージ
SeeAudio ANOUのパッケージはSeeAudio Yumeのそれを引き継いでいますが、日本限定のANOUには富士山が描かれています。
パッケージ(8.5)
内容物はイヤホン本体と、イヤーピース2種類合計8ペア、キャリイングケース、説明書、ステッカーなどです。
パッケージデザインと内容物はSeeAudio Yumeからほとんど変更がないため、私のYumeのレビューをすでに知っている人は、なぜパッケージの評価がYumeから低下しているのか気になるかもしれません。
それは単純にパッケージフォントの問題です。Yumeの日本語フォントは中国製品にありがちな、硬く、どことなく不自然に見えるゴシック体、ゴシック体と明朝体の不自然な混淆(写真には写ってません)、わずかな誤植(「ドラーバー」)によって、海賊版のWindowsパッケージのような印象を抱かせます。
したがって、自身で使うなら問題ないでしょうが、ANOUを親しい人へのプレゼントなどに考えた場合、こうした細かなパッケージ上の問題が、相手にいかがわしい印象を与えるかもしれません。
ビルドクオリティ(9.0)
イヤホン本体のビルドクオリティは良好です。非常に美しく、透明感のあるデザインになっています。
Yumeと比べるとANOUのデザインは同じく透明度の高さがありながら、より深みの感じられるものとなっています。
装着感(8.5)
筐体はコンパクトで耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
サウンドシグネチャー解説
SeeAudio ANOUのサウンドはW字型というべきものですが、比重は低域側に寄せられています。中域から自然につながる、リラックスして優しい雰囲気の低域と奥行き感がある中域、印象的に聞こえる高域が比較的釣り合った構成になっています。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD+N特性
THD+N特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
THD+N特性は高級イヤホンの場合、1%以内であることが望ましいです。下の図は上が-40dB@1khz(適正音量レベル)における、スイープでの周波数毎のTHD+N特性、下が上限-30dBで1khzでの音量レベルによるTHD+N特性(THDNL)です。このイヤホンはどちらでも概ね1%未満で優秀です。
- THDN平均値:0.24122996%
- THDN平均値(100hz以上):0.145674946666667%
- THDNL平均値:0.27037975%
- THDNL平均値(-60dB以上):0.271520666666667%
制動
アンプ側の出力インピーダンスが高い場合、SeeAudio ANOUは出力インピーダンスの影響が大きく出るようです。
SeeAudio ANOUを適切に駆動させたい場合、ソース側の出力インピーダンスは少なくともANOUの公称インピーダンス値である27Ωの半分、13.5Ωを下回っている必要があると思われます。一部のスマートフォンやヘッドホンアンプはその数値を上回る可能性があるため、駆動に確実を期す場合、IEMの駆動に適したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)の使用が推奨されます。しかし、少し古いiPhoneをはじめ多くのスマートフォンでその駆動に問題はないでしょう(むしろDAPより適している可能性もあります)。したがって、私の見立てでは、SeeAudioの主張通り、ANOUは多くのスマートフォンで比較的ハイクオリティな音質を楽しむことができるでしょう。
一般的には出力インピーダンスは0Ωに近い方が良いとされますが、もしソースの出力インピーダンスが十分に0に近い状態でノイズや歪みを感じる場合、出力インピーダンスが2.7Ω以上のものをソースとして選ぶのが良いかもしれません。私が試した範囲では、FiiO M15(SE出力時公称1.4Ω以下)とKANN ALPHA(SE出力時公称0.8Ω)でノイズや歪みはほぼなく、十分に静寂なように思われます(いずれもローゲイン。ただしハイゲインでも目立ったノイズや歪み感は感じなかった)。
その状態で背景は十分に静かだと思われますが、Amariで4.5Ω~8.1Ωに合わせた時よりわずかに背景が明るく音場が平面的になり、奥行きが減っているように思えます。それが本当に聞き取れているものなのか、プラシーボ効果でないかはまだよく理解できていないので、最終的に聴感上、Amariがより静寂かは保留します。
以下はAntelope Audio Amariの可変出力インピーダンスシステムを用い、一定の装着感の下で、-4.6Ω、-0.3Ω、85.3Ω時の周波数特性(自由音場補正済み)を測定し、比較したものです。
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
SeeAudio ANOUは多くの人にとって、60phon~80phonでフラットに近い、バランスの良いサウンドを聴かせると思われます。
音質解説
SeeAudio ANOUは中域から高域にかけて、奥行きがある音場を形成し、精彩のある印象的なサウンドを聞かせます。それは十分に静かな雰囲気を持っていながら、中域にYumeと同じく暖かいハーモニクスを持ち、高域はよりエネルギッシュで、JAZZセッションやアコースティックギターのエッジ、エレキギターサウンドのディストーション、そしてボーカルニュアンスの精彩を引き出し、楽しく情熱的に聴かせるでしょう。
それは活気のあるJAZZセッションをより躍動的に、元気のあるアイドルソングをよりはきはきと、穏やかでのびやかなバラードはより胸を焦がす声色で聴かせます。それは曲ごとに自らの趣きをうまく変化させて曲に寄り添うように思わせるところがあり、春の曲とともに歌い、夏の曲に乗って旅をし、秋の曲では色づきを楽しみ、冬の曲で故郷を想う、四季の風物を感じさせるサウンドでもあります。
低域(8.5)
- 原音忠実度:B+
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:B
SeeAudio ANOUの低域は比較的フラットに近く、わずかにリラックスしていますが、深さは十分に到達しています。
どこか優しく聞こえる低域ですが、太さと重みは十分で量的な存在感でも優れており、音楽の底辺に確かな土台を形成します。それでいて、エレキベースは黒くなりすぎず、適度な柔らかみのあるボディを持っており、中域に調和的です。バスドラムのキックも少し膨張的でややブーミーな雰囲気があり、ベースとキックの描き分けはあまりはっきりしません。
低域の明晰性にこだわる場合、ANOUよりはYumeの方が優れていると感じるかもしれません。
中域(9.5)
- 原音忠実度:B+
- 厚み:B+
- 明るさ:B-
- 硬さ:B
- 存在感:B+
SeeAudio ANOUの中域は奥行き感があり、ボーカルの周辺に良好なステージングを形成します。そのボーカルは少し暖かなハーモニクスを感じさせ、調和的な雰囲気があります。
ボーカルは鮮明度が十分にあり、子音のニュアンスもしっかりしていますが、少し柔らかな輪郭と嫋やかに伸びる軸を持っています。
ボーカルの周辺には余裕があり、楽器音はボーカルと適度に分離されながらも過剰に離れすぎることはありません。
ANOUの中域にはYumeと同様に輪郭の優しい人肌感のあるハーモニクスがあり、背景と音楽を過剰に分離することがありません。それはモニター的なサウンドを求める人には解像感の点で満足させない可能性がありますが、耳に音が馴染む親和的な雰囲気があります。
高域(9.0)
- 原音忠実度:B+
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B-
- 脆さ:B+
- 荒さ:C+
- 繊細さ:B-
- 存在感:B-
SeeAudio ANOUの高域はエネルギッシュで繊細であり、その響きはグルーヴを豊かに感じさせます。
高域は量的な存在感の上では中域より控えめですが、繊細で高いディテールを持っており、質的な存在感で優れています。
高域のピークはエレキギターのディストーションやアコースティックギターのエッジを際立たせ、十分に印象付けます。また高域のマイクロディテールの強調はシンバルクラッシュを生き生きとしたものにし、ボーカルの息から精彩を引き出します。
高域の上には抜けが感じられ、清潔な風通しが感じられます。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域~高域
- 音場:B+
- クリア感:C
SeeAudio ANOUの音響的焦点は中域~高域に存在します。
SeeAudio ANOUの音場は奥行きに優れ、中域が広く聞こえます。高さも少し多めに感じられ、幅もわずかに優れて感じられます。
クリア感は標準レベルか、価格帯では少し物足りないです。
音質総評
- 原音忠実度:B+
- おすすめ度:S
- 個人的な好み:S
私はSeeAudio Yumeのサウンドに非常に感動し、それを愛していたので、Yumeが日本展開されないということを知ったときは少しショックでした。SeeAudioがANOUのターゲットカーブを公表した後、私の友人の何人かもANOUがYumeのアップデートモデルではないことを残念がっていましたし、私もそれにかなり落胆していました。
しかし、SeeAudioはYumeを称える私の言葉をうれしく思ったようですが、もどかしそうにANOUのサウンドがより良いと思っていると私に語りました。今、ANOUを聴いて、その意味が確かに分かりました。ANOUは音楽的な感性に溢れており、Yumeの儚く美しい音とは違う、精彩に富んだ四季の彩を持っています。
彼らがなぜYumeではなくANOUを日本で展開しようと思ったのか、それはANOUのサウンドがすべてを物語っています。そこにはYumeのように深いローレンジや上から下まで見渡せるような眺望感はありません。しかし、ANOUのサウンドは中域に余裕と広がりを持っており、高域はより繊細で、音楽の綾をより引き出し、リスナーに提示します。
ANOUを通して聴く音楽にはYumeのまどろむような響きの美しさのあるものとは全く異なる、立体的で精彩に満ちた体験が待っていました。それはときどきCayin YB04のようであり、ときにはKinera FreyaやQoA Pink Ladyに似ているように聞こえましたが、それらのどれもとは違う新しいサウンドです。
SeeAudioの音楽の世界は想像以上に奥深いようです。彼らはSeeAudio Yumeでフラットサウンドの常識を破り、単にフラットでワイドレンジ、クリアな音を目指すのではない、独自の音楽性を追求し、成功させました。Yumeというネーミングも含めてそれはすでに十分完成されていましたが、ANOUはさらに彼らの巧みなチューニングセンスを雄弁に語る製品です。この美しく四季とともに移ろうような歌うイヤホンに、私は素直に感嘆します。
音質的な特徴
美点
- 中域への適切なフォーカス
- 高域の優れたグルーヴ
- ニュアンスが多く、生き生きしたボーカル
- 全体的にリラックスして滑らかな聞き心地の良いサウンド
- エネルギッシュな高域
- ウォームで聴き心地が良い
- 鮮明感が高い
- 輪郭の広がりが良く、人肌感のあるノスタルジックなサウンド
欠点
- クリア感に欠ける
- 低域の深みに欠ける
- 低域描写力に劣る
高いグルーヴ感
良好なステージング
生き生きとしたボーカル
競合機種との聴き比べ
今回はANOUの兄弟機であるSeeAudio Yumeと、同じ価格帯でライバルになりうるKinera Freyaと聞き比べます。
SeeAudio Yume
SeeAudio Yumeは音質バランスが良く、鮮明感は高いのに調和的で、どこか人間的なサウンドを聴かせる魅力的な機種です。
深い低域と拡張性に優れた高域を持ち、艶やかなボーカルを甘い雰囲気で豊かに聴かせる独特のサウンドに、もしかすると強く魅了されてしまうかもしれません。
実際私もその優れた音楽性の高いサウンドをとても気に入っており、レギュラーメンバーとして使っています。
パッケージやビルドクオリティの点でも優れた機種で、不満は出ないと思いますが、FiiO FH3やTri Starseaといったライバル機種と比べると、バランスは最も良いですが、クリア感や音場の広さで少し劣るように思うかもしれません。
最新のハーマンターゲットカーブを意識して、よく調整されている最新機種です。SeeAudioは2018年に設立されたばかりの新しいブランドで、無名に近いですが、この2月に日本進出も果たす予定で、今後急速に成長する可能性が高いです。Yumeは中国国内で大変な人気を博したANOU(中国版)のインターナショナル版で、多くの海外レビュアーがすでに高い評価のレビューを書いており、現在進行形でオーディオファンの間にその人気が広がりつつあります。
Kinera Freya
「3万円以内の予算でおすすめのイヤホンはありますか?」と誰かに聴かれたら、私が真っ先に思い浮かべるイヤホンの一つがKinera Freyaであることは間違いありません。
2万円以下の大抵のイヤホンより優れた解像感があり、バランスに優れ、ボーカルが美しい透明感のある音質を持つだけでなく、ビルドクオリティにおいてハイエンドモデルに匹敵し、パッケージも豪華と、文句のつけようがありません。思わず持ち運びたくなる魅力的な美しいイヤホンです。
Kinera Freyaは外観が非常に優れたイヤホンであり、いつまでも身に着けていたくなるような美しい製品です。エネルギッシュで力強いボーカル表現が特徴で、まさに歌うイヤホンという形容がふさわしいでしょう。
聴き比べてみましょう!
というわけで、早速それぞれの中華イヤホンを聴き比べてみましょう。今回は2曲録音音源を用意しました。またSeeAudio ANOUについては、出力インピーダンス85.3Ωの状態で接続した、鳴らしきれていない状態の音源も用意しています。
録音音源で使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
- SeeAudio ANOU
- SeeAudio ANOU(鳴らしきれていない)
- SeeAudio Yume
- Kinera Freya
まず、SeeAudio ANOUのサウンドを聞き比べてほしいのですが、ほぼ鳴らしきれているのに近い状態と明らかに鳴らしきれていない状態では、とくに中域の明るさに大きな差があることがわかります。鳴らしきれていないANOUのサウンドは輪郭がだいぶたるんで聞こえ、全体的にメリハリに欠けます。低域の締まりも悪いですね。ノイズ感が露骨に増えて聞きづらいというわけではないですが、音がぼんやりと濁っている印象を受けると思います。
さて、次にSeeAudio YumeとANOUを聞き比べてみますと、Yumeのほうが音の見通しは良いですが、サウンドが淡々としており、低域の床面はYumeのほうがはっきりしていて安定感がありますが、ANOUのほうが生き生きしているサウンドに聞こえると思います。Yumeのサウンドは美しいですが、少し没入しづらい距離感を感じるところもあり、音楽に入り込みやすいのは、より情熱的なサウンドに聞こえるANOUだという人が多いのではないでしょうか。
その次はKinera Freyaと聞き比べてみましょう。Freyaのサウンドは少し歌うような表情がありますが、この曲のような落ち着いた曲では、とくに音量が小さいときに、その表現の出し方が上ずっていて、音楽全体がふらふらとしているように感じられます。それに比べるとANOUのサウンドは同じく少し朗らかな雰囲気がありつつも、表現はより地に足がついており、安定感や静寂感でより優れているように思えます。オペラのようにボーカルを朗らかに豊かに聴きたいという場合、Freyaは優れていますが、少し落ち着いたこういう曲を聴くときには、ちょっと情緒不安定なサウンドになりやすいように思えます。
- SeeAudio ANOU
- SeeAudio ANOU(鳴らしきれていない)
- SeeAudio Yume
- Kinera Freya
もう1曲用意しました。ANOUの良いところは中域のステージングがしっかりしているので、比較的小さな音量でも音楽の全体像を十分な音像の大きさで描き出してくれ、没入感の高いサウンドを得られやすい点にあります。
音楽鑑賞
YuNi「命に嫌われている。」
この曲を最初Yumeで聴き、次にANOUで聴き比べました。Yumeで聴いたとき、そこにはいつものバランスの良い、適度な距離感を取って見通しよく聞こえる音楽があり、低域の深みも十分で魅力的に聞こえました。
「ANOUにYume以上のサウンドが出せるだろうか?」と疑問に思いつつ、ANOUを聴いてみましたが、たちまち唸らされました。
ボーカルの音像は大きく、ダイナミックでニュアンスも豊かに前面に出てきます。空間全体に生き生きとしたうねるようなダイナミズムがあり、明らかにYumeで聴くより迫力を持って聞こえてきました。
Yumeの上下で非常に整ったサウンドは確かにこの曲をより丁寧に聞かせますが、ANOUのダイナミズムにより説得力を感じます。
足りないところはもちろんあります。低域は明らかにあいまいで魅力に乏しいですが、むしろそのおかげで低域が気にならずに中域の生き生きしたボーカルにしっかりと耳が引きつけられます。
22/7「空のエメラルド」
私の大好きな曲の一つですが、ANOUで聴くこの曲のボーカルには高い没入感があり、ぐっと顔を引き付けられたような感覚があります。
ボーカルは顔の近くでニュアンスもきれいに聞こえ、その背景には奥行き感のあるステージが広がっており、非常に立体的です。楽器音は滑らかで自然なのびやかさを維持しつつ、中高域付近の最も光沢のあるあたりで高いグルーヴのうねりが生まれており、この曲のラスト付近で音がそのグルーヴに飲み込まれるような奔流感が味わえます。
ボーカルを中心に音楽の上半分全体が躍動的で、天井に向かって音が吸い上げられるようにのびやかに聞こえます。そのダイナミックなうねりは、音楽の熱気が渦を巻いているかと錯覚するほどです。
石川由依「言葉の向こう」
SeeAudio ANOUの中高域の優れたグルーヴは、活気のある曲だけでなく、淑やかな曲からもボーカルディテールを引き出します。
信じられないことですが、私はANOUでこの曲を聴いていた時、そのボーカルに引き込まれてしまい、おもわず我を忘れて涙を流してしまいました。
豊かな色彩感のあるANOUの音楽は、それを優れた高域のグルーヴ感で広がりと奥行きのあるものにします。
ゆったりとした曲であれ、激しい曲であれ、ANOUはそのディテールをグルーヴとともに引き出し、いつも感動的なダイナミズムを加えてくれます。
BGVP DM8は完璧なパッケージであり、それは美しい外観、強力なサウンドを持っており、お財布に優しい価格で購入可能です。ユーザーは$350でこの素晴らしい製品を手に入れることができ、高品質なオーディオファン向きの音楽パフォーマンスを楽しむことができます。我々は以前、このブランドのDM6、DMG、Zeroや他の製品を試してみましたが、それらはどれも非常によくできていました。
BGVP DM8は滑らかで安定的、温和でウォームなサウンドで、中域を丁寧に聴かせるイヤホンです。その甘くふっくらとした、ニュアンスの柔らかい調和的なボーカル表現はどこか懐かしく、メロウでノスタルジックな雰囲気があります。マイルドで耳当たりが良く、音量を上げても荒れるところのないイヤホンです。ビルドクオリティやパッケージクオリティも価格の標準以上のため、この価格帯で音楽的な中域を持つイヤホンを探している人の最適解になりえます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは4.5Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-40LUFS)
- SeeAudio ANOU
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-40LUFS)
- SeeAudio ANOU
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-40LUFS)
- SeeAudio ANOU
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-40LUFS)
- SeeAudio ANOU
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-40LUFS)
- SeeAudio ANOU
総評
SeeAudio ANOUのサウンドはステージングを丁寧に構築し、適切な位置に豊かに歌うボーカルを聴かせ、その周辺にエネルギッシュで生き生きとした楽器を配置し、音楽をグルーヴとダイナミズム、精彩に満ちたものにします。そのサウンドは没入感が高く、スマホでも十分に駆動でき、パッケージデザインやビルドクオリティに不満はありません。
SeeAudio Yumeと比べてどうかって?Yumeは周波数特性の上でもサウンドの印象の上でもほぼほぼ私が好きなものをすべて満たしており、そのサウンドに高く満足していました。ANOUを聴くまではそこにYume以上のものがあるとは思えませんでした。しかし、ANOUのサウンドを聴いた後、私がおすすめしたいのは、どちらかといえばANOUです。たしかに、私のつけたスコアはYumeの方が高く、コスパの点でもYumeが優れています。しかし、ANOUのサウンド、とくにそのボーカル表現は私の心を打ち、感動を呼び起こします。その非常に印象的で素晴らしい中域のステージングがANOUを私の中で特別なものにしました。
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