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qdc Dmagic 3Dの概要
こんな人におすすめ
- ダイナミックで楽しいサウンドが好き
- デザインが凝ったイヤホンが欲しい
- グルーヴの豊かな優雅なサウンドが好き
- 春めいた華やかなサウンドが好き
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~30kHz
- インピーダンス:13.5Ω
- 感度:98dB/mW
- ケーブルコネクタ:qdc 2pin
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:9.0/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:9.5/10.0
- 歪みの少なさ:9.5/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:10.5/10.0
長所
- 比較的原音忠実性が高い
- ボーカルフォーカスが良い
- ダイナミズムに優れる
- グルーヴ感に優れる
- ナチュラルさを意識した質感
- 良好なディテール感
- 音楽的で楽しい
短所
- わずかにしつこく感じられる高域
- モニター的ではない
- 定位の一貫性に欠ける
qdc Dmagic 3Dの特徴
2種類の異なる素材の振動板を同軸で配置
qdc Dmagic 3Dは、3基のダイナミック型ドライバーを搭載したハイエンドIEMです。中/低域には10mmのグラフェン振動板と10mm チタンコーティング振動板の2種類のトーンが異なる振動板を採用し、それらを同軸で配置して駆動させています。高域には 8mmの複合振動板採用のダイナミックドライバーを採用することで、ピュアで自然な広がりのあるサウンドを実現したとされています。
独自のプラグ機構を備え、あらゆるバランス/シングルエンド出力に対応
qdc Dmagic 3Dに付属する高品質な単結晶銅と銀メッキ銅のハイブリッドケーブルには、独自のプラグ交換機能が備わっています。これにより、3.5mmシングルエンド出力だけでなく、2.5mm/4.4mmのバランス出力にもケーブル交換なしで対応することができます。パッケージには6.35mmヘッドホン出力用の変換アダプタ、航空機出力変換用プラグも含まれており、様々なオーディオ機器にシームレスに対応することができます。
レビュー動画(Bad Guy Good Audio Reviews)
パッケージ(8.0)
qdc Dmagic 3Dのパッケージは最高級レベルの製品にふさわしいものになっていますが、特別豪華と言えるかは難しいところです。
このイヤホンがDUNU LUNAとほぼ同じ価格だということを思い出してみましょう。私自身はLUNAのパッケージ実物を見たことはないので完全に比較することは出来ませんが、HiFiGOのレビューを見る限り、LUNAのほうがパッケージの豪華さでは勝るように思われます。
qdcは必ずしもパッケージングで卓越したメーカーというわけではなく、むしろどちらかというとパッケージはシンプルなことが多いです。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- イヤーピース5種類(S/M/L)
- 交換用フィルター(銀/金/黒)
- キャリイングケース
- マニュアル
ビルドクオリティ(9.0)
本体のビルドクオリティは文句なく高く、吸い込まれるような高級感があります。ケーブルの質も高く、不満はないと思われます。
装着感(9.0)
耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性(自由音場補正済み)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
qdc Dmagic 3Dは低域で出力インピーダンスの影響を比較的大きく受けるようです。なるべくなら駆動にはデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を使用した方が良いでしょう。
ただスマホで鳴らしても個人的にはそれほど問題を感じません。手持ちのスマートフォンGalaxy A30で試しましたが、ほとんど不足を感じません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
qdc Dmagic 3Dの最大の魅力はその迫力と質感に優れたサウンドです。パワフルで豊かな厚みのある実体感に優れた音を持っており、音場は自然な雰囲気よりはダイナミックで、うねるようなグルーヴ感を音楽から引き出し、豊かで芸術的な音がします。
評価基準について
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B+
低域はパワフルで印象的です。そのサウンドは一般に重く、太く、重厚で、中域とは少し分離されて深い位置で聞こえます。それはモニター的ではなく、ライブ感のある音楽的な床鳴りや胴鳴りが楽しいサウンドで、ドラムキックにインパクトがあり、活き活きしています。
低域のグルーヴ感を重視する場合、イヤホン全体を見ても屈指のパフォーマーで、どんな曲を聴いても音の深みに不足は感じられないでしょう。音楽全体のコントラストの最も黒い部分を形成する、充分に鮮やかな低域ですが、息苦しい圧迫感はなく、深すぎないのでノイズ感もない、非常にクリアで美しい低域です。
ダイナミック型の魅力を最大限引き出しているような低域はqdc Dmagic 3Dの最初のチャームポイントであることは間違いありません。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
グルーヴ感のある低域に支えられた中域は前進的で、透明感があり、わずかに上向いて聞こえます。奥行きと見通しに優れ、一見落ち着いているように感じられる中域ですが、トーンが豊かで音の質感にうねるような変化があり、ワクワクさせてくれる楽しいサウンドです。
その雰囲気はリスニング的なので、正統派のモニターサウンドを求める人には向きませんが、豊かでリッチに聞こえます。
高級オーディオセットのように鮮やかで心温まる美しいサウンドがそこにあります。
高域(8.0)
- 原音忠実度:B
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:C+
- 荒さ:C-
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
高域はqdcらしい、滑らかさと質感のナチュラルさを重視したサウンドになっていますが、中高域のあたりは強調されています。
艶やかなサウンドが印象的に聞こえ、音楽の明瞭感はニュートラルより少し強調されています。そのため、音楽全体は明度の点で少し明るく、くっきり感が高まっています。
それに対し、輝度は非常に丁寧に調整されていて、わずかにギラつきが強い印象を受けますが、シンバルは清潔で耳障りさがなく、中域の音楽的な雰囲気と調和しています。
この主張しているようで中域を邪魔しない高域のチューニングはqdcの真骨頂で、ディテールがしっかりしているのに耳に不快感が残りません。
賑やかでエネルギッシュでありながら後味の良いサウンドです。しかし、それでも一部の人にはざらつき感があり、シャカシャカしているように聞こえる可能性があります。
定位/質感
- 質感の正確性:S-
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:A-
- 雅楽のテクスチャ:S-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
qdcは中域の質感にこだわっており、自然に聴こえます。バイオリンの弦の運びは滑らかかつしなやかで優雅に聴こえ、のびやかさでも優れています。躍動感の表現力の高いので、ダイナミズムも豊かです。
雅楽も個人的には好きですね。華やかな和音が下品にならずにきれいに聞こえてくるので、高い没入感があります。グルーヴ感が強調されているので、旋律が細やかに揺らいで響いて聞こえるのも美しく、拡張性の点でも余韻も比較的多く、音抜けもよくて後味がすっきりとしています。
雅楽のサウンドが生き生きと聞こえる、qdcらしいセンスのある表現に思えます。
音場/クリア感
- 音場:B
- クリア感:A+
自由音場フラットに近いのでかなり広さは自然ですが、全体的にグルーヴが強調されているので、オーケストラを聴くと各パートの音が揺らいで聞こえ、ところどころ遠ざかったり近づいたりして感じられるかもしれません。定位の一貫性に少し欠ける印象ですね。
クリア感はかなり優れています。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S-
- 個人的な好み:S
私が比較的qdcのサウンドを好んでいることは事実ですので、やや評価が甘い可能性はありますが、率直に言ってそのサウンドは明瞭感に優れ、とても音楽的で楽しく、魅惑的です。
低域、中域、高域それぞれに華があり、グルーヴ感に優れ、惹きこまれるサウンドです。
癖があるとすればおそらく高域ですが、それは不快なピーキーさがあるというような明白な欠点ではなく、どちらかというとシャカシャカした粒立ちの質感の好みの問題のようなもので、その音にはシルキーというよりはもう少しジャリつくところがあるといった具合です。すっきりした高域を好む人にはこの点、少し不快な可能性があるでしょう。
音質的な特徴
美点
- 比較的原音忠実性が高い
- ボーカルフォーカスが良い
- グルーヴ感に優れる
- ダイナミズムに優れる
- ナチュラルさを意識した質感
- 良好なディテール感
- 音楽的で楽しい
欠点
- わずかにしつこく感じられる高域
- モニター的ではない
- 定位の一貫性に欠ける
ダイナミックで生き生きとしたサウンド
自然な質感
高いクリア感
HiFiGOレビュー
この製品についてのHiFiGOによるレビューはこちらの記事を参照して下さい。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
巨イナルチカラ
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
ユルギナイツヨサ
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- qdc DMagic 3D
総評
qdc Dmagic 3Dはうねるようなグルーヴ感とクリアな明瞭感、リッチな優雅さを兼ね備えたハイエンドイヤホンです。そのサウンドとパッケージ/ビルドクオリティは充分価格に見合うものだと思われますが、音質は若干演出感が強いように思えます。わくわくする活気に満ちた楽しいリスニングサウンドを求めている場合、このイヤホンは最高に魅力的に思えるでしょう。音楽を楽しくする魔法がかかっているイヤホンです。私には少し見栄を張った「傾(かぶ)いた」音に聞こえます。この聴かせ方、とても好きですね。
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