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レビュー趣旨
このシリーズでは、Antelope Audio Amariと様々なヘッドホンやイヤホンをつなぎ、日本ファルコムのサウンドをレコーディング用のHATSから録音して実際に聴き比べてもらいながら、各音響機器の特徴を解説します。
今回は個人的に愛用している開放型ヘッドホン3機種を紹介したいと思います。
最初にそれぞれの機種を簡単に紹介します。
今回聴き比べる開放型ヘッドホン3機種
GRADO PS2000e
開放型ヘッドホンと言えば、GRADO。GRADOと言えば、開放型ヘッドホンというくらい、こだわりのあるメーカーGRADOのフラッグシップモデルです。現状手に入れることのできるオープンバックヘッドホンの最高峰の一つであることは間違いありません。
GRADO独特の色気のあるサウンドは、筆舌に尽くし難い蠱惑的な魅力を持っており、ボーカルやギター、木管などに独特の風味があります。私は1週間に1回はこのヘッドホンでDaryl Hall & John Oatesを聞かないと生きていけない謎の病気にかかっています。
GRADO PS2000eは高級クラブのような、少し華やかな最高のプライベートオーディオ空間を実現してくれる神ヘッドホンです。
少し重たいのが難点ですが、装着感は比較的快適で、長時間使用でもそれほど負担感は感じません。それでも女性には少し重すぎるかもしれませんね。
UNCOMMON PDH-1
UNCOMMON PHD-1は価格を考えるとかなり魅力的な平面駆動型ヘッドホンです。ビルドクオリティは高く、音質的にも価格以上の価値はあるように思われます。透明感は高く、ボーカルや楽器音が少し広い音場に、響きと余韻豊かに雄大に聞こえるサウンドは没入感が高く、魅惑的です。
5万円くらいの予算で、とくに真空管アンプと合わせるような平面駆動型のヘッドホンを探している場合、かなりおすすめできる機種です。
歪みが少なく、平面駆動型らしい上下で均質な駆動感のあるサウンドが楽しめます。音の質感が自然で滑らかに聞こえ、歪みも少なく、中域の透明度が高いのが特徴です。多くの人にとって、味付け感が少ない素直なサウンドに感じられるでしょう。
beyerdynamic DT990 2005 600Ω
かなりお気に入りでなにかと使い込んでいる機種です。装着感も良好で長時間音楽を聴いても快適です。
そのサウンドはこれぞ開放型というような、風通しの良いサウンドです。中域でしっかりとした濃厚感がありながら、耳に爽やかな後味が残るような清涼感のあるサウンドになっています。
ビルドクオリティも高く、デザインも質実剛健なヨーロピアンスタイルでかっこいいですね。グリルに独特の機能美が感じられます。
元々はDAPの駆動力テスト用に買った機種ですが、風通しの良い草原のようなサウンドにたちまち魅了されてしまいました。
聴き比べてみましょう!
というわけで、早速それぞれの開放型ヘッドホンを聴き比べてみましょう。録音音源を用意しました。
録音音源で使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
今回聴き比べる3機種はいずれも開放型ヘッドホンですが、価格は全く違います。そういう意味で、今回の聴き比べのテーマにはオーディオにおける価格差とは何かという話も絡んでくるかもしれません。
さて、どれもわりと気に入ってる機種なのですが、GRADO PS2000eはやはり別格扱いしたくなります。今回の音源でわりと面白いのがピアノで、それぞれのヘッドホンの個性が反映されて、明るく聞こえたり、少し暗く落ち着いて聞こえたりすると思いますが、GRADO PS2000eのピアノの音は艶があって非常に色気がありますよね。こういう色つやのあるサウンドはGRADOの特徴の一つで、音楽全体が甘い雰囲気で聞こえます。
さて、それではGRADO PS2000eが優勝終わりでよろしいと思うかもしれませんが、先を急がず、価格の上では一番安いbeyerdynamic DT990を聴いてみましょう。そこには同じ曲なのに、GRADO PS2000eとは全く異なった世界観が提示されています。ピアノは明るく、管楽器の響きによくフォーカスされ、GRADO PS2000eでは空間に溶け込むようにわからなかった楽器音のエッジ感が息つぎの雰囲気まで丁寧に提示されています。サウンドは高域で特にPS2000eよりエネルギッシュで、音場の印象は少し明るく、スポットライトの量が多く、より詳細に音楽が聞こえる感じがあります。
UNCOMMON PDH-1はそれに比べるともっとGRADO PS2000eに近づいていると言えるかもしれませんが、さらに落ち着いた安定感のあるサウンドになっています。ピアノや管楽器の音色を聴いてみると、GRADO PS2000eのような華やかな雰囲気はだいぶ抑えられて、より芯が太い、質実な重厚感のあるサウンドに聞こえるでしょう。PS2000eに比べると第一印象で面白くないかもしれませんが、よく聞いてみると一つ一つの音の芯がしっかりしており、地に足の着いたサウンドです。アドリブを入れずに曲を一番丁寧に演奏しているような職人気質なサウンドに聞こえ、音楽そのものによりよく寄り添っているのは、このPDH-1ではないかとさえ思えてきます。
さて、最初の話に戻りましょう。オーディオにおける価格差とは何かという話です。結局のところ、値段が高いからと言って良い音がしたり、好みの音が鳴るというわけではなさそうだということはわかると思います。良さという点ではそれぞれに面白みがあります。
オーディオ製品の価格は素材やデザイン、流通コスト、開発研究費、製品テスト代、生産コストなどなど、もろもろによって変わります。高い機種だからと言って、素晴らしい音を持っているというわけではありません。もちろんそれを言うには素晴らしい音とは何かということについて考える必要がありますが、ここでは深入りしないでおきましょう。
皆さんがどういう基準でオーディオ製品を選んでいるかについては知りませんし、そんなのは他人がどうこう言うことではないですが、私の場合、「ほしいものがいくらするか」という考え方をしており、音が好みかどうかを考えて、この価格だったら「買う/買わない」という判断をしています。そして、イヤホン・ヘッドホンであれば、基本的に5万円以上する機種は買いません。その音が唯一無二で人生に不可欠であるというのであれば、お金は惜しみませんが、私の場合はいまのところそんな音に出会ったことはないですし、音は非常に多様な世界なので、低価格製品の音の方が興味深いなんてことはザラです。
ですから本音を言えば、オーディオの世界で価格なんて気にする必要はなく、個々人の価値観と生活環境、懐事情などによって普段聴く製品の範囲なんておのずと定まるだろうと思っています。これは何を言ってるかというと、結局のところ、その人にとって一番いい音とはその人が実際にお金を払ってもよいと思える音なので、それが高いか安いかなんてのは語る必要はありません。私は数十万の機種だろうと数千円の機種だろうと等しく製品として愛用しているので、数千円の機種は数十万の機種と勝負にならないなんてことは感じません。
むしろオーディオの世界では、価格にとらわれると本質を見失うのではないかとさえ思えます。実際、私が普段よく聴いてるのはむしろ安いほうだったりします。今回の中でも一番愛用してるのはDT990ですね。これは単純にPS2000eが重いというのもありますが。
オーディオは面白いもので、基本的に、PS2000eの音はPS2000eにしか出せず、DT990の音はDT990にしか出せないところがあるんです。もちろんこれはその音の製品がいくらで買えるだろうかと考えることが有益でないと言っているわけではありません。DT990がPS2000eより優れているという話でもありません(実際細かな点を注意して聴けば、PS2000eのほうが音の分離感や輪郭感で優れており、DT990の音は多少荒っぽいですよね。)し、それぞれの製品価格というのはそれ自体意味がありますが、価格設定には音質とは別の要素も多く含まれているという点に留意する必要があるかもしれません。
まとめ
オーディオ製品の最大の魅力は、それぞれが固有の世界観を持ち、固有の音を鳴らす多様性にあります。収入も出自も異なる人間の命に本質的な差がないように、オーディオ製品の高い安いに(意味がないとは言いませんが)本質的な価値はありません。むしろ価格にとらわれず、さまざまな価格帯のオーディオ製品を聴いていくと、より興味深い世界が広がっているかもしれません。
結局のところ、大事なのは自分がどういう音を聞きたいかということであり、そこに高い安いはないのです。オーディオの価格なんてものは、その人が聞きたい音によっては出費がかさむことがあるだろう、その程度の話であり、大事なのはどういった音が自分にとって好ましいかです。
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