免責事項
- このレビューは「私的な購入品」または「対価を払ってレンタルした商品」に基づいて書かれています。これを掲載することによる原稿料のような報酬または対価は一切受け取っておらず、個人的な試験での測定データや個人的見解に基づいて誠実に評価したものです。
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ONKYO A800の概要
こんな人におすすめ
- 音像一貫性重視
- 原音忠実度重視
- 優れたリスニング用ヘッドホンを探している
- 定位感にこだわる
基本スペック
- 再生周波数:4-40000Hz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:100dB
- 価格帯:30000円~50000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:10.5/10.0
長所
- 優れた原音忠実性
- 良好な解像度
- 音像一貫性が高い
- ほぼ完全なスピーカーサウンドの再現
- 優れた定位感
- 良好なサウンドバランス
- 十分な高域拡張性
短所
- 低域の深さに欠ける
- 中域はもう少し改善できる
ONKYO A800の特徴
- クリーンでクリアかつ正確な音楽情報を再現するため、高周波数帯域を滑らかにするマルチレイヤーダイヤフラム50 mmハイパードライバーを搭載
- セパレーションに優れ、精密な音場を再現するオープンバックアコースティック構造
- オーディオ信号伝達能力向上のため、独自設計による低インピーダンスOFCリボンケーブルを採用
- 快適な長時間装着を可能にする70mm極太ヘッドバンド
- イヤーパッドには低反発フォームを用いた高級かつ通気性の高い柔らかな材質を採用。側頭部形状へのフィット感、放熱性を高め、快適な装着感を実現
パッケージ(7.5)
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(8.5)
独特のデザインです。装着感は悪くありませんが、人によっては少し重いかもしれません。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
ONKYO A800はアンプの出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回はFiiO M15につないでレビューしています。
ONKYO A800はハーマンターゲットOEカーブの高域を拡張した非常に合理的なサウンドシグネチャーを持っています。少なくとも私の評価スキームではハーマンターゲットカーブよりも高い評価値が得られる調整です。そして最近のKnowlesの研究でもこうした高域の調整がハーマンオリジナルより優れていることは裏付けられています。
そういうわけで、A800のサウンドバランスは多くの人にとって非常に優れていると言えることが期待でき、解像度や歪みの少なさの点でもハイエンドにふさわしく、一般にそれは日本製ヘッドホンの最高峰の一つとして語るにふさわしい実力を持っています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:A-
- 臨場感:C+
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:B+
- 存在感:B
低域は少し浅く聞こえますが、十分な重みがあり、重厚感が感じられます。
ドラムキックはインパクトがあり、エレキベースも広がりが感じられますが、深みには少し欠ける印象を受けます。とはいえ、ヘッドホンとしては優秀な水準にあります。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:A-
- 明るさ:A-
- 硬さ:B+
- 存在感:B
中域は非常にうまく調整されており、一般に最前面に近い位置にあり、原音忠実性が高く、質感もかなり自然に聞こえます。
わずかに奥行き感が強調されており、定位感は少し立体的に聞こえますが、概ねニュートラルかつスピーカーに寄せた定位感を実現しています。鮮明感も十分なため、自然な分離感が実現されており、シンバルの音もほどよく細かすぎないほどに繊細です。ボーカルはサ行がわずかに強く聞こえる感じがあるかもしれませんが、歯擦音はよく抑えられています。たとえば歯擦音が目立ちやすい富田美憂「インソムニア・マーメイド」を聴いても、尖る印象は受けません。リスニングしやすいように4kHz付近や8kHz付近をうまい具合に落とし込んでいます。ただこのせいでモニター的というよりは少しリスニングに寄ってしまっているとも言えるでしょう。
個人的には中高域は自然なつながりを重視するので、ここは尖っている音源を尖った感じが掴めるように聞かせた方が信頼できます。それに、一般にそのほうが透明感の向上も期待できるはずです。高域に敏感な人には快適な調整なので、難しいところですけどね。
そういうわけで気になるところがないわけでもないですが、総じて中域の完成度は優れていると言えるでしょう。
高域(9.5)
- 原音忠実度:C
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
高域は拡張性もほぼほぼ十分で、比較的優れた調整です。それでも個人的にはもう少し空気感がほしいところですが、音域の広い生ドラムや篳篥を聴いても自然な倍音でよく抜けているので、ハイエンド機種として十分な実力があると結論付けてよいと思います。
定位/質感
- 質感の正確性:A-
- 定位の正確性:A
- オーケストラのテクスチャ:A
- 雅楽のテクスチャ:A+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域の質感はなかなかに良好で、定位感に優れ、空気感にも不足はほぼないため、フルオーケストラも十分鑑賞に堪えます。最高のクラシック演奏というわけではないですが、水準は非常に高いと言えるでしょう。バイオリンの倍音の出方、シンバルの粒立ち感がきれいです。木管は今一つ抜けが悪い気もしますが、そこらへんのヘッドホンに比べれば格別に優れています。
篳篥は十分抜けが良く、わずかに耳障りな印象があるものの、概ね天上まで滑らかで、高さもそれほど不足しません。和音はやや金属質になりますが、十分に繊細です。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:A
- クリア感:B+
- イメージング:B+
- 高域:A-
- 中域:B+
- 低域:C+
低域の深さは物足りません。中域は最前面近くにあり、高さはハイエンドクラスとして十分ですが、もう少し欲しかったですね。
クリア感は価格を考えると標準以上です。
解像度は価格を考えると標準以上です。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S
- 個人的な好み:S
ONKYO A800は真の意味でハイエンドと言える水準を満たしており、全体的に非常に優れたヘッドホンです。
別ブランドのPioneer SE-MASTER1の優れた出来栄えを考え併せても、ONKYO(あるいはギブソン)が非常に優れた技術力とチューニングセンスを持っていたことは間違いないでしょう。海外の一流メーカーに全く引けを取らないどころかそれらを凌駕する、日本のオーディオ業界の優れた「勲(いさおし)」が後継機種もなく消えて行ってしまうのは本当に悲しいですね。
音質的な特徴
美点
- 優れた原音忠実性
- 良好な解像度
- 音像一貫性が高い
- ほぼ完全なスピーカーサウンドの再現
- 優れた定位感
- 良好なサウンドバランス
- 十分な高域拡張性
欠点
- 低域の深さに欠ける
- 中域はもう少し改善できる
優れた原音忠実性
良好なサウンドバランス
優れた音像一貫性
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- ONKYO A800
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- ONKYO A800
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- ONKYO A800
総評
ONKYO A800のサウンドを初めて店頭で聴いたときの衝撃は忘れられません。それはONKYOのデジタルオーディオプレーヤーの試聴用に据え付けられていました。その音を聞いた私は「ONKYOのDAPってエントリークラスのこんなに安いのでも恐ろしいほど整ったきれいな音がするし、迫力もあってすごいのだな」と驚き、自分のイヤホンで聴いて「あれ?」と思い、今度は自分のウォークマンにA800を繋ぎなおして聴いたそのサウンドに唸らされました。非常に良い音を出していたのはこのA800だったのです。
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