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Moondrop KATOの概要
こんな人におすすめ
- 解像度の高いサウンドが好き
- モニタースピーカーの音が好き
- コスパに優れたイヤホンが欲しい
- とにかく曲の隅々まで確認したい
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:123dB/Nrms
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
- 価格帯:20000円~30000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:10.0/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:10.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:12.5/10.0
長所
- 全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
- ほぼ完璧なモニタースピーカーサウンド
- 全体の原音忠実度が高い
- 透明度の高い音
- ノズルシステムにより解像度を調整できる
- 高いビルドクオリティ
短所
- 没入感に欠ける
- 高域の拡張性が足りない
- クリアすぎて広がりに欠ける人工的な低域
- 低域の深さに欠ける
Moondrop KATOの特徴
- 新世代フラッグシップの10mmダイナミックドライバー。線形ダイナミックレンジを大幅に改善し、静電ヘッドホンに匹敵する全周波数帯域の非線形歪みを実現することを目標に2年以上の開発を繰り返し、新しいULT(Ultra-Linear-Technology)超線形ダイナミックドライバーを搭載したKATOが誕生しました。より強力になったダイナミクス、低い歪み、復元された音色 、 オープンな聴覚と、より豊かでありながら自然なディテールをもたらします。
- 筐体は MIM製法(金属粉末射出成形法)で鋳造されており、高強度で不規則な外観を実現することができました。内面は微細で不規則な表面であり、定在波の抑制にプラスの効果があります。仕上げに手動研磨を繰り返すことにより、表面の全部分が鏡のような滑らかさを実現しました。
- 新設計の高性能DLC(ダイヤモンドライクカーボン)複合振動板を搭載しています。 DLCを含む3つの異なる特性の材料を使用し、 振動板の各部分を形成します。 DLCは、剛性が高く、ダンピングファクターが高く、軽量であるという特徴があり、ベリリウムを超えた総合的音響性能を備えています。
- 付属するイヤーチップは、新開発の「 Spring Tips(清泉)」イヤーチップです。このイヤーチップは、特殊な拡散構造により不良な共振を抑制し、ノズル共振による高域線形歪みを大幅に低減。高域の音色をより自然にする同時に、特殊な補強材サポート設計により、音漏れによる低音の損失を防ぎます。特殊素材で、外耳道をべたつかずにフィットさせることができます。
- 星形カッド( Star Quad)構造の高純度銅 ・銀メッキケーブルが装備されております。 4芯の星形カッド( Star Quad)構造により、表皮効果や近接効果の影響を効果的に低減し、干渉防止の役割を果たします。
新開発ULTスーパーリニアダイナミックドライバー搭載シングルダイナミックIEM「Moondrop Kato」リリース
本日、MoondropはKXXSラインアップのアップグレード、最新のMoondrop Katoを発表しました。Moondrop Katoは、過去2年間の設計・検証・改良を経て、歪みの少ない自然な音色でパワフルかつ魅力的なサウンドを再生するULT(Ultra-Linear Technology)ダイナミック・ドライバー・ユニットを新たに開発しました。Moondrop Katoは、このULTダイナミックドライバーに第3世代のDLC(Diamond Like Carbon)複合振動板を採用し、ハイレゾ音源の新しい体験を提供します。また、新開発のMIMステンレスキャビティを採用することで、圧倒的な立体感を実現しています。Moondrop Katoは、交換可能なサウンドノズルを採用しており、2種類のイヤーノズルが同梱されています。
パッケージ(8.5)
パッケージは価格の標準を満たしています。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- キャリイングケース
- キャリングポーチ
- チューニングノズル
- イヤーピース(2種類)
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは価格の標準を十分満たしています。
装着感(8.5)
装着感はかなり良好ですが、金属ハウジングのせいか少し硬い感触です。また清泉イヤーピースは傘の形状のせいか、若干おさまりが悪いように思います。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Moondrop KATOは出力インピーダンスの影響はほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ(清泉) Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Moondrop KATOはかなりニュートラルに近くチューニングされており、わずかに奥行き感が強調されています。左右の音が少し耳元を離れて前方に位置する、前方定位するモニタースピーカーを意識してチューニングされているようです。
上に示したカプラーの測定値には共振ピークで周波数特性に違いが出ていますが、実際にはノズルの違いは周波数特性に影響をほとんど与えない(HATSの測定結果ではほぼ変わりません)と思われます。一方でノズルの違いにより耳元での音の響き方が変わるため、Brassノズルでは響きが増え、解像度が落ち、柔らかいマイルドな聞き心地になるでしょう。音の変化はレコーディングシグネチャーでご確認ください。
ここではSteelノズルでレビューしています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:A-
- 深さ:A
- 重み:A-
- 太さ:B+
- 存在感:A-
Moondrop KATOの低域は十分に深く、存在感も確かで、レイヤリングにも優れています。見通しがよく、深いベースも十分に黒くしっかりと聞こえるでしょう。
一般にランブルまで明確に聞こえる低域を提供するので、イヤホンとしては音の実在感の不足をそれほど感じないでしょう。臨場感が十分に感じられる低域です。ただし一般的なイヤホンやヘッドホンに比べて、THDがかなり低いので、非常にクリアですが、音に広がりが感じられず、意外と包容感の感じられない音です。
同じような印象はiBasso IT07でも感じましたが、私がイヤホンやヘッドホンの音に慣れすぎているせいか、個人的にはこの優秀な、クリアな低域にあまり親しみを感じません。SOUNDPEATS T2と比べて、深さの点で劣っているのもこの低域に生々しさを感じない原因の可能性もあります。
総合するに、非常に良い低域ですが、あまりにきれいに聞こえすぎるので、低域好きを満足させることはそれほどできないのではないかと思います。一方で低域をモニターする能力は高いので、モニターイヤホンとしては優秀です。
個人的にはあまり好きではない低域ですが、オーディオマニアとして評価する場合、これを低く評価することはできません。
中域(10.0)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B
- 硬さ:B
- 存在感:B
中域はかなり原音忠実的かつほとんど完全にニュートラルです。
明瞭度は高く、THDも低い上、質感も非常に自然なため、中域は驚くほど透明です。最初はあまりにきれいで人工的に思えますが、しばらく聴いたあとでほかのイヤホンを聴くと逆に濁っていると感じるくらいです。
この中域はMoondropの真骨頂とも言うべき場所で、エッジが鋭く音像をはっきりと構築しながら、ギラツキ感などをうまく抑え、音が金属的に聞こえないように調整されています。
この中域から高域にかけての解像度は標準の、装着感の若干悪い清泉イヤーピースによる改善効果も大きく、高域の音の音像が潰れず、中域から高域の抜けが滑らかかつすっきりと抜けるようになっています。実際イヤーピースをスパイラルドット++に変更して聴いてみると、少し金属的に聞こえ、音は派手にしっかり聞こえる気がしましたが、繊細さと透明感には少し欠けるように思えます。
高域(9.5)
- 原音忠実度:D+
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:C+
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D+
- 存在感:C+
高域は中高域を少し前傾させ、中域に奥行き感を出して前方定位感を出しつつ、なだらかにロールオフするよう調整されており、前方に自然な距離感を感じられる減衰が実現されています。
これにより、Moondrop KATOの音場は完全にニュートラルよりはやや前方に寄った奥行きのある構造となっており、モニタースピーカーの音がよく再現されます。
中域に比べると、高域は少し鮮明感を強く調整されすぎていて、その穏やかな聞こえ方にも関わらず、個人的にはハイハットや息遣いにわずかに刺激的なものを感じます。高域にかなり敏感な人には少し刺さる感じがあるかもしれませんが、多くの人にはすっきりした抜けの良い感じに聞こえると思います。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:A+
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
フルオーケストラは奥行きが強調され、左右が耳元を離れて少し前方に定位します。モニタースピーカーの雰囲気をよく再現してると言えますが、個人的には耳元まで完全に覆う完璧なニュートラルサウンドでクラシックを聞くほうがより定位と質感で優れて感じられますし、何より包まれ感の向上により没入感が出るので好きです。Moondropは信じられないくらいスピーカーの雰囲気をうまく再現していますが、私はスピーカーの音を聞きたいのではありません。
雅楽は非常に解像度が高く、空気中に塵一つない、真っ暗な背景の透明な空間に音がくっきりと描き出されます。とてもきれいですが、私の趣味からするとクリアすぎ、残念ながら雅楽の音の奥ゆかしさのようなものが感じられません。
低域をはじめ全体がクリアすぎるわりに、一番深いところの鳴動感のようなもの、場の深みが出ておらず、空間的な実在感に欠け、非常に不自然に聞こえるのがあまり好きではないですね。雅楽の風雅さというものがない、素っ気ない音です。
音場/クリア感/イメージング(括弧内はBrassノズル)
- 音場:B+
- クリア感:S-
- イメージング:A-(B+)
- 高域:S-(A+)
- 中域:A-(B+)
- 低域:B-(C+)
音場は少し奥行きが強調されています。深さは標準を満たしていますが、高さは少し物足りません。
クリア感は非常に優秀です。
イメージング性能はかなり優秀で、価格帯では抜群に近いように思います。
音質総評(括弧内はBrassノズル)
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S+(A+)
- 個人的な好み:B-(A+)
この価格帯で最もクリアで解像度の高いモニタースピーカーのようなイヤホンが欲しい場合、Moondrop KATOがその最高の候補です。のみならず、この上の価格帯を探してもこれ以上はほとんど望めないというくらい、スペック的にも優秀です。
個人的にはSteelノズルの場合、よくできたイヤホンですが、とくに面白いとは思いません。むしろBrassノズルのほうが響きが加わり、まろやかになり、解像度は落ちるものの、味わいが出てきて好きです。
音質的な特徴
美点
- 全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
- ほぼ完璧なモニタースピーカーサウンド
- 全体の原音忠実度が高い
- 透明度の高い音
- ノズルシステムにより解像度を調整できる
欠点
- 没入感に欠ける
- 高域の拡張性が足りない
- クリアすぎて広がりに欠ける人工的な低域
- 低域の深さに欠ける
全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
ほぼ完全なモニタースピーカーサウンド
ノズル交換でリスニングライクに
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING L50を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース(清泉) Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Moondrop KATO(Steel)
- Moondrop KATO(Brass)
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Moondrop KATO(Steel)
- Moondrop KATO(Brass)
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Moondrop KATO(Steel)
- Moondrop KATO(Brass)
総評
Moondrop KATOは高い解像度と抜群に低いTHD、そしてモニタースピーカーにほぼ完全に近づけた前方定位感のあるフラットサウンドを提供する非常に優れたモニターイヤホンです。さらにノズル交換により響きを増大させ、解像度を調整することでよりリスニングライクな音を実現することもできます。個人的に全体のコンセプトと音作りに心から称賛を惜しまない機種ですね。これ以上のイヤホンはそうそうありません。
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