免責事項
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MacaW GT600sの概要
こんな人におすすめ
- 濃厚感のある音が好き
- いぶし銀のような渋い音が好き
- メタリックな音が好き
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~40kHz
- インピーダンス:16Ω
- 感度:98dB
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:7.5/10.0
- 中域:6.5/10.0
- 低域:7.0/10.0
- 歪みの少なさ:7.5/10.0
長所
- ウォームで聴き心地が良い
- 奥行き感のあるサウンド
- ノスタルジック
- 濃厚感がある
- 解像度に優れる
- メタリック
- 落ち着きがある
- 渋みがある
短所
- 彩度に欠ける
- 爽快感に欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- 構築感に欠ける
- ブーミーな低域
- 扁平なボーカル表現
- 音像一貫性に欠ける
- 地味で無骨
- 人によっては濁って聞こえる音
- ざらつく質感
MacaW GT600sの特徴
- ハイブリッドカナル型イヤホン
- チューニングノズルによる調音機能
- 1本25芯の銀コートOFCを4本使用した撚り線を採用
- ハイブリッド構成により優れた分解能を実現
- コネクタにMMCXを採用
- チューニングノズルを交換することにより音質のチューニングが可能
パッケージ(8.0)
パッケージはシンプルです。価格が価格なので、標準的な水準と言えます。エコで環境に優しいと肯定的に評価することも可能です。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- チューニングノズル
- イヤーピース(2種類)
- キャリングポーチ
- 説明書など
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは価格帯の水準を満たしています。MMCXの噛み合わせは少し硬いかもしれませんが、しっかり固定できると思えば悪くないはずです。
装着感(8.5)
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
MacaW GT600sは出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
MacaW GT600sは鮮明感を重視したV字型ないしU字型のサウンドシグネチャーを持っています。この価格帯では非常に解像度に優れていますが、音楽は全体的に金属質でメタリック、ドライでブリキのように聞こえるため、自然な質感には聞こえないのが欠点です。音場も少し狭く聞こえやすいですね。また歯擦音が少し強くなりやすい傾向があるので、高域に敏感な人には少し不快な音に聞こえやすいかもしれません。
チューニングノズルは中域を調整しますが、それほど極端に音質は変わりません。基本的に明るいサウンドを聞きたい場合は金、逆に音が明るすぎると感じたら黒を使うことになるでしょう。
今回は銀ノズルで標準イヤーチップ Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.0)
- 原音忠実度:A
- 臨場感:B-
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:A
低域は力感が豊かで、やや太く重厚です。
レイヤリングはそれほど悪くありませんが、底がやや曖昧に聞こえる低域です。パンチが強めでリズムは気持ち良いですが、バッツンバッツンする少し膨張感の感じられるところがあります。弾力感があるので個人的には好きな傾向の鳴らし方ですが、人によっては引き締まりに欠ける印象を受けるでしょう。
中低域が膨張しているので、中域の音像を少しぼやかすところがあり、滲みやすい傾向があります。豊かな雰囲気があるので、オーディオマニアでない一般消費者には好まれそうですが、中域の音像にこだわるオーディオマニアには好まれない音です。またバスドラムの存在感が大きくなりやすい傾向があり、中域にかぶさってくる感じが気になるかもしれません。
中域(6.5)
- 原音忠実度:B+
- 厚み:A-
- 明るさ:B+
- 硬さ:B
- 存在感:B
中域は厚みが強調されており、充実感があります。
ボーカルは楽器音に包まれた位置に引っ込んでいますが、高域方向は少し広いので混濁感はそれほど感じません。ただ滑舌が悪く、少し軸が弱く、力強さに欠けるところがあり、ギターやドラムの音に対して埋没的になりやすい傾向があります。歯擦音は一般に強くなりすぎないと思いますが、人によってはツ音に少し尖りを感じるかもしれません。タ行とサ行の区別が時々曖昧に聞こえます。
グルーヴ感が強く思え、中域で響きの豊かで包まれるような雰囲気が人によっては好ましく思えるでしょうが、密度が高すぎて少し窮屈に感じられやすいところは欠点になりやすいポイントです。
また全体的にメタリックでギラギラしており、ブリキのようなドライな質感になっています。ざらざらして聞こえやすいですね。レンガかコンクリートを叩いているかのような鈍く強いアタックの、疾走感に欠ける無骨すぎるスネアにも違和感が出やすいでしょう。
高域(7.5)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:B
- 荒さ:D-
- 繊細さ:C-
- 存在感:B-
高域は鮮明感が高めに調整されています。
一般にメタリックでキラキラ、ギラギラと輝いて聞こえるトレブルハッピーな高域で、マイクロディテールは詳細に聞こえる感覚がありますが、色味はグレーに近い印象を与えます。
ハイハットやアコースティックギターは鉄分や鉛分の多い、がさつく印象を与えるところがあり、音が派手さを抑えて引き締まって聞こえるため、スタイリッシュに思えるかもしれませんが、色彩感の再現度に大きく劣ります。いぶし銀のような音にダンディズムを感じるところがありますが、キレの悪い鈍い感触で一本調子に聞こえがちでもあります。
また拡張性にも欠けており、抜けも悪いですね。
定位/質感
- 質感の正確性:C+
- 定位の正確性:B-
- オーケストラのテクスチャ:D-
- 雅楽のテクスチャ:D-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
このイヤホンでフルオーケストラを聞くと、ほとんど平板な表現でみずみずしさに欠けるガサついた音で聞こえます。古いラジオで聴いているかのような風化した雰囲気を感じます。ある意味、ノスタルジアが感じられて面白いとも言えますが、表現が単調なうえに精彩を欠くので、すぐに飽きます。
ブリキ人形が奏でるような雅楽が聞きたいなら、このイヤホンを手に入れるべきでしょう。普通の人はこんなイヤホンで雅楽を聞きません。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:C+
- クリア感:B
- イメージング:A
- 高域:S-
- 中域:A
- 低域:B
中域に奥行き感がありますが、全体的に音場は上も下もコンパクトです。
クリア感は平凡です。
イメージング性能は価格を考えると破格です。
音質総評
- 原音忠実度:B+
- おすすめ度:D-
- 個人的な好み:D-
古いオルゴールのようなサウンド、いぶし銀のようなブラックメタリックな音が好きなら、このイヤホンをきっと気にいるでしょう。しかし、この音は多くの人に好まれる音とは思えません。ノズルを変えてもサウンドの全体印象は殆ど変わらないため、メタリックな傾向が改善されることはありません。
音質的な特徴
美点
- ウォームで聴き心地が良い
- 奥行き感のあるサウンド
- ノスタルジック
- 濃厚感がある
- 解像度に優れる
- メタリック
- 落ち着きがある
- 渋みがある
欠点
- 彩度に欠ける
- 爽快感に欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- 構築感に欠ける
- ブーミーな低域
- 扁平なボーカル表現
- 音像一貫性に欠ける
- 地味で無骨
- 人によっては濁って聞こえる音
- ざらつく質感
ウォームで聴き心地が良い
高い解像度
渋く無骨で落ち着きがある
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- MacaW GT600s (Silver)
- MacaW GT600s (Gold)
- MacaW GT600s (Black)
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- MacaW GT600s (Silver)
- MacaW GT600s (Gold)
- MacaW GT600s (Black)
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- MacaW GT600s (Silver)
- MacaW GT600s (Gold)
- MacaW GT600s (Black)
総評
深みのあるグレーメタリックな渋みと無骨なダンディズムのあるサウンドを好むなら、MacaW GT600sは最適な選択肢です。解像度も高いので、最高の満足感を得られるでしょう。しかし、そういう特殊な趣味がない多くの人は素通りするのが良さそうです。
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