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【完全ワイヤレスイヤホン M-SOUNDS MS-TW11 レビュー】深く黒い重低音サウンドと緻密な中高域。SONY WF-XB700の強力な対抗馬であり、コントラストの高いサウンドはEDMを精彩に満ちたものにする
M-SOUNDS MS-TW11の概要
こんな人におすすめ
- EDMやボカロ曲が好き
- 没入感の高い立体的なサウンドが好き
- モニター的で緻密なサウンドを楽しみたい
- コントラストの高いサウンドを楽しみたい
- 連続再生時間にこだわる
- aptX対応の機種が欲しい
- コンパクトで上質なデザインのイヤホンが欲しい
基本スペック
- 連続/最大再生時間:11h/30h
- 防水性能:IP54
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:204-B00312
長所
- 低域ジャンキーをかなり満足させる重低音
- ディテールとグルーヴのある高域
- コントラスト感が高い
- 比較的バランスが良い
- 比較的良好なボーカルフォーカス
- 良好なステージング
- 重厚で安定感のあるサウンド
- 立体感に優れる
- 映像観賞に向く
- 接続品質が高い
- ビルドクオリティが良好
短所
- 人によって強すぎる低域
- 存在感のわりに深くない低域
M-SOUNDSについて
M-SOUNDSは株式会社エム・エス・シー(メディア・セル・コーポレーション)の音響ブランドで、完全ワイヤレスイヤホンを出している日本企業としては実は老舗です。エム・エス・シーと聞いて「どこ?」と思う人でも、スイスの大手PC周辺機器メーカーLogitechの製品を「ロジクール」ブランドで国内展開していると言えば、かなり親近感が湧くのではないでしょうか。
M-SOUNDSのMはMirai(ミライ)を表し新しいミライのミュージックライフを提供するブランドです。「音楽をより快適に、 より身近に」をコンセプトとし、音だけでなく使い勝手の部分にもこだわった製品を提供します。
https://www.m-sounds.jp/
M-SOUNDS MS-TW11の特徴
磨き上げた、音の存在感
スリムボディに表現豊かな低音をプラス
連続11時間再生のスタミナモデル
日本のユーザーの嗜好やニーズに応えるため「MS-TW11」シリーズは、デザインや音質チューニング、アフターサポートに至るまで、日本人のデザイナー・エンジニアらの手によって行われています。
存在感のある低音。最大ボリュームを10dBアップ
スリムな形状でありながら迫力のあるサウンドが魅力。豊かな低音の十分な質感と、ボーカルをくっきりと鮮明に描き出す中高域の繊細な表現力を兼ね備えています。φ6mmダイナミックドライバーにチューニングを施し、最大ボリュームを10dBアップ※。大音量で音楽を楽しみたいユーザーのニーズに応えます。 ※MS-TW21との比較
コンパクトなイヤホン&充電ケース
イヤホン本体は装着感を感じさせない片耳わずか5gの小型軽量ボディ。充電ケースも厚み2.6cmの薄型タイプなので持ち運びも快適です。
高性能SoCと高感度アンテナ搭載
Qualcomm社高性能SoCと高感度アンテナを搭載することで通信の安定性を確保。電波干渉の多い街中でも安定して音楽を楽しむことができます。
2種類のイヤーピース付属
芯材とドーム部分で異なる硬度のシリコンを組み合わせたハイブリッドイヤー ピースが2種類付属。芯部分は硬い素材で音の通路形状を保持し、先端潰れによる音質劣化を防止。ドーム部分には柔らかい素材を使用してフィット感と遮音性を向上させています。
- ショートタイプ
芯材に硬度の異なる二層シリコンを採用する「dual-core」仕様。ノイズレスでクリアな音質を実現します。 - ロングタイプ
ショートタイプより長い芯材を採用。芯部分が耳の奥までしっかりと入るので装着感と遮音性能に優れています。
ワイドイヤーピースホール採用
他社製のイヤーピースに付け替えたイヤホンも収納できるように、充電ケースの左右イヤホン収納部のイヤーピースホールの体積を1.5倍※大きくしました。 ※MS-TW21との比較
パッケージ(9.0)
M-SOUNDS MS-TW11のパッケージは決して豪華ではありませんが、機能的でPC周辺機器のようなパッケージに入っています。
付属品も個別にわかりやすく袋分けされており、製品が輸送や販売店での展示で痛まないよう適切に梱包されています。PC周辺機器の取り扱いに長けたブランドらしい心配りの効いたデザインになっています。
ビルドクオリティ(9.0)
ビルドクオリティはなかなか良好です。充電ケースの蓋もぐらぐらしません。全体的に高級感が感じられ、おしゃれです。
手触りは滑らかでポケットから取り出すのもスムーズでしょう。
装着感(9.0)
耳が小さい人でも問題なく装着できそうです。収まりもよいでしょう。
ワイドレンジな音を実現する音響空間
高音質でクリアなサウンドを実現するスパイラルドットイヤーピース
快適な装着感の小型・軽量ボディを採用
最大28 時間の長時間再生とクイック充電
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではなかなか優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。ただし、遮蔽物を挟むと通信が少し乱れがちになりました。それでも途切れ途切れになりますが、曲は比較的一貫性を保って聞き取れます。結果を考えると、通信が混雑する場所などではわずかに通信乱れが目立つかもしれません。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースは物理式です。
電源ON
充電ケースの蓋を開けると、イヤホンは自動で電源ONになります。
あるいは多機能ボタンを2秒長押しすることで、手動で電源ONにすることもできます。
電源OFF
充電ケースにイヤホンを収納し蓋を閉じると、自動で電源OFFになります。
またイヤホンの多機能ボタンを4秒長押しすることで、手動で電源OFFにすることもできます。
ペアリング
イヤホンの電源ON後、接続先がない場合、自動でペアリングモードに移行します。
曲再生/停止
多機能ボタンを1回クリックします。
曲送り
右耳側の多機能ボタンを2回クリックします。
曲戻し
左耳側の多機能ボタンを2回クリックします。
音量を上げる
右耳側の多機能ボタンを長押しします。
音量を下げる
左耳側の多機能ボタンを長押しします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回クリックします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回クリックします。
着信拒否
着信時に左右どちらかの多機能ボタンを1秒長押しします。
音声アシスタントの起動
多機能ボタンを3回クリックします。
音質
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(ホワイト) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(ホワイト) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(ホワイト) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(ホワイト) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(ブラック) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(ブラック) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(ブラック) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(ブラック) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- イヤーピース比較(自由音場補正済み)
サウンドシグネチャー解説
特徴的な低域が目立ちます。低域はかなり存在感が強調されていますが、中低域は抑えられているので、相対的にブーム感は抑えられており、中域に滲む感じはあまりありません。重低域の強調を除けば、フラットを意識した弱ドンシャリで、比較的バランスの良いサウンドが期待できます。
なおイヤーピースのホワイトがショートタイプ、グレーがロングタイプです。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD+N特性
THD+N特性とは音に含まれる歪み成分を表し、パーセンテージが低いほど音がピュアできれいに聞こえます。
THD+N特性は高級イヤホンの場合、1%以内であることが望ましいです。下の図は上が-40dB@1khz(適正音量レベル)における、スイープでの周波数毎のTHD+N特性、下が上限-30dBで1khzでの音量レベルによるTHD+N特性(THDNL)です。このイヤホンはどちらでも概ね1%未満で優秀です。
- THDN平均値:0.15329645%
- THDN平均値(100hz以上):0.062677933333333%
- THDNL平均値:0.117078775%
- THDNL平均値(-60dB以上):0.1129448%
ラウドネスステータス
ラウドネスステータスはISO226:2003 等ラウドネス曲線に基づく補正値を自由音場補正済み周波数特性(Z特性)に加えたものです。ラウドネスステータスは音量による聴感周波数特性の変化を表します。一般的な人は40phon~80phonの間で音楽の聴取音量を快適に感じると思われます。
上は10phon~90phonの変化グラフ、下は40phon・60phon・80phonのみにフォーカスした変化グラフです。
このイヤホンは低い音量でもしっかりと重低域を楽しむことができます。また、高域もはっきりとしているため、音楽の全体像は小さな音量でも比較的明瞭に楽しめます。
音質解説
重低域を強化したというブランドの主張通り、量的に強調された重低域が特徴的です。それぞれの音域にグルーヴが生まれるようチューニングされており、聴感上のバランスはわりと良いです。高域は量的に低域に劣っていますが、質的に情報量が多く聞こえるので、音楽の全体が低域に埋没することはあまりありません。
低域(10.0)
- 原音忠実度:B
- 臨場感:A+
- 深さ:S
- 重み:S
- 太さ:A-
- 存在感: A+
低域は量的に存在感があるため、低域が主張するのを好まないタイプの人には合いません。
かなりボトムがしっかりしたサウンドです。鳴動(ランブル)や打撃(サンプ)は相対的に強くないので、重苦しすぎない優しさが感じられる(ぶっちゃけ私には少し生ぬるい)低域で、とくに頭を爆撃されていると感じるくらいのインパクトを求める重度の低域ジャンキーには物足りないかもしれませんが、多くの低域ジャンキーにとって満足できる品質です。
またランブルが強すぎないおかげで、音楽の底辺が安定しており、スタジオレコーディングサウンドに近く聞こえ、低域由来のノイズ感も抑えられるため、多くの人にはむしろ好ましいと思われます。
低域はグルーヴ感もそれなりに感じられて生き生きしており、量のわりに引き締まりが良いです。ベースとドラムの描き分けもわりとはっきりしており、高いライブ感を維持しながら、低域のディテールも探せば見つかるように調整されています。
中域(8.0)
- 原音忠実度:B+
- 厚み:B
- 明るさ:B-
- 硬さ:C+
- 存在感:B-
中域は低域に対してかなり引っ込んでいますが、低域から適度な分離感が維持されており、低域のパワーに埋没しすぎる感じはありません。それでも大抵の場合でやや埋没的に聞こえます。
中域の範囲内ではボーカルがしっかりした軸とともにボディも十分に前に出てきます。淑やかでわずかにふっくらとしながら、軸がまっすぐ立った清楚な雰囲気があります。語尾が少し上ずるコケティッシュな雰囲気もあり、個人的には結構好きな声質で聞こえます。
その周囲はわりとすっきりと開けており、鮮明感は高めで、フラットに近く構築的に聞こえる中域なので、骨組みはしっかりしています。重低域のおかげで安定感は高いので、ステージングは良好に聞こえるでしょう。
高域(8.5)
- 原音忠実度:B+
- 艶やかさ:B-
- 鋭さ:B-
- 脆さ:B+
- 荒さ:B
- 繊細さ:B
- 存在感:B
高域はわりとはっきり前に出てくる形となっており、音楽からディテール感とグルーヴを引き出します。
超高域の伸びもよく、かなり風通しも良いので、高域は量的には低域に敵いませんが、質的な要素も含めると十分に釣り合っており、EDMなどでは緻密な高域の方にむしろ注意が向くくらいです。
音楽の焦点はボーカルの上の中高域あたりにフォーカスされやすいので、重低域モデルと聞いて多くの人が想像するような、音楽のディテールがあやふやに埋没してしまうことはありません。ただ高域に敏感な人にとっては、ボーカルの歯擦音はときどき鋭く聞こえすぎる可能性があります。その場合、後述するSONY WF-XB700のほうが聴きやすいバランスで好ましく思えるかもしれません。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域上部~高域
- 音場:A-
- クリア感:B+
このイヤホンの音響的焦点は一般に中域上部から高域に存在すると思われます。
音場は深さに優れ、高さもあり、奥行き感もあって中域はやや前方定位的で、上下にはわりとワイドレンジです。音場自体は親密な位置に形成され、音像は大きめで小さな音量でもボーカルをはじめ音楽の全体像ははっきりしています。
クリア感は価格を考えると、かなり良好です。
音質総評
- 原音忠実度:C+
- おすすめ度:A-
- 個人的な好み:A+
M-SOUNDS MS-TW11はMS-TW21を再構成した低域モデルのようです。もともとの素性が良いので、重低域を盛ったバランスのMS-TW11もわりとバランスが良く聞こえます。
高いコントラスト感が期待できるので、とくに色づきを重視するリスナーにとって、価格以上の価値が如実に味わえるでしょう。
個人的にはEDMを楽しむのに最適なように思えますが、低域のピークが少し高いので、本当の低域の底が味わえるというイヤホンではありません。この点はSOUNDPEATS T2が勝ります。
音質的な特徴
美点
- 低域ジャンキーをかなり満足させる重低音
- コントラスト感が高い
- ディテールとグルーヴのある高域
- 比較的バランスが良い
- 比較的良好なボーカルフォーカス
- 良好なステージング
- 重厚で安定感のあるサウンド
- 立体感に優れる
- 映像観賞に向く
欠点
- 人によって強すぎる低域
- 存在感のわりに深くない低域
良好なステージング
深淵を思わせる重低音
ディテールとコントラストに優れる
競合機種との聴き比べ
今回は手持ちの完全ワイヤレスイヤホンの中から、名だたる?重低域モデルを集めて比較してみました。SoundPEATS T2とSONY WF-XB700、そしてAKIKI A3です。
これらとM-Sounds MS-TW11を聴き比べてみましょう。
SoundPEATS T2
SoundPEATS T2は低域への造詣が深いこのブランドが生み出した、現状における重低域完全ワイヤレスイヤホンの至宝です。
SoundPEATS T2のサウンドは本物の重低音を聴かせるためだけにあり、魂を揺さぶられる重低音とともに心の底から音楽と一体化したいと本気で願っている、一部の低域ジャンキーのためのものです。そこは低域好きのための聖域であり、一般人が土足で入り込む場所ではありません。
そこにあるのは全イヤホンを見渡してもおそらくこれ以上はそうそう望めないだろうと思わせる、圧倒的一体感をもたらすサウンドです。
SoundPEATS T2はこれまで一貫して低域にこだわり続けてきたSoundPEATSがその技術をつぎ込んで作った古今最高レベルの重低音イヤホンであり、それは完全ワイヤレスイヤホンが有線イヤホンより秀でたサウンドを獲得した金字塔でもあります。T2によって、完全ワイヤレス重低音モデルの新しい歴史が始まりました。少なくとも低域ジャンキーにとって、T2以前のすべての重低音完全ワイヤレスイヤホンは過去の遺物です。
SONY WF-XB700
SONY WF-XB700は、何事もおしゃれに作ることがうまいSONYらしい洗練された重低域モデルです。
このメーカーは業務用モニターヘッドホンも作っており、ただ低域を盛れば低域が感じられるわけでもないということを熟知しているので、全体のバランスを考えながら丁寧に重低域を作り込んでおり、万人にとって表面上、質が良いと思える重低音を提供します。
しかし、残念ながらそこにあるのは所詮うわべだけの「なんちゃって重低音」であり、その音はとても魂までは到達しません。かつて重低域ファンに至福をもたらしたExtra BASSシリーズの名を冠していますが、それはXBに値しない単なるファッションモデルです。本物の重低域を求める低域ジャンキーの渇望を満たすものは何もありません。SONYは重低域の本質をどこかに置いてきてしまったようです。
もちろん、低域ジャンキーでない方には一番おすすめする機種です。私も嫌いなわけじゃなく、むしろお気に入りの部類ですが、この機種は音響構造においてしっかり低域にフォーカスされていないので、私の定義ではこういうのを重低域モデルとは言いません。
重低音モデルの入門機種としては非常に優れています。これで聴くEDMなんかは気持ち良いですね。安心のSONYサウンドです。
AKIKI A3
少なくとも低域ジャンキーにとって、SONY WF-XB700より、はるかに安いAKIKI A3を買った方が高い満足度が得られる可能性があります。そこにはWF-XB700のただ深いだけの死んだような低域とは違う、グルーヴに満ちた低域が存在しています。
AKIKI A3は市場ではほとんど無名に近い存在ですが、そのチューニングをした人物は明らかに低域の楽しみを理解し、自身が楽しめる低域サウンドを丁寧に作り込んでいます。そして低域への適切なフォーカスが、一番聞いてほしいところがどこかをわかりやすくリスナーに提示します。そのサウンドから感じられる確かな低域愛が、同じく低域を愛する人を惹き付け、ただファッションとして重低域を加えただけのWF-XB700とは全く異なる、そのイヤホンでしか聞けない「生きた低域グルーヴ」を生み出します。
非常に豊かなグルーヴを持つ低域が魅力の機種です。低価格で無名に近いメーカーの製品ですが、そのサウンドは低域好きを十分に満足させるでしょう。
聴き比べてみましょう!
というわけで、早速それぞれの完全ワイヤレスイヤホンを聴き比べてみましょう。
録音音源で使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
- M-Sounds MS-TW11
- SoundPEATS T2(ANC ON)
- SONY WF-XB700
- AKIKI A3
まずMS-TW11とSoundPEATS T2 ANCを聴き比べてみます。おそらく、T2がなぜ重低域モデルの金字塔なのかということが聴いただけで分かってしまうと思います。音楽の深みに圧倒的差があり、臨場感、実在感の点でT2は別格です。MS-TW11の低域は明らかに魂を震わせるほど深くはなく、もうちょっと浅いところにピークがあります。T2と比べると、MS-TW11の音はベース音の生々しさに欠けると言わざるを得ません。MS-TW11は……残念ながらT2以前の機種であり、その点で登場が少し遅かったと言えるでしょう。
さて、T2が別格であるということを確認したうえで、次にSONY WF-XB700とMS-TW11を聴き比べてみます。両者は実際のところ、わりとコンセプトは似通っており、中域と低域の距離感を丁寧に構築して、中域の広さを確保しつつ、低域の存在感に埋もれない、高域のディテール感を構築しようとしています。
中域のテクスチャはどちらかというとXB700のほうが自然で、MS-TW11は少し厚みが少なく、すっきりしすぎているような印象を受けるかもしれません。MS-TW11のほうがどちらかというと高域により資源が振り分けられており、そのため、全体像はよりドンシャリで、繊細なサウンドになっています。奥行き感で優れますが、少し中域が薄い印象を受けるかもしれません。ただ、こういう色彩感と光沢感を重視した曲の場合、MS-TW11のほうがより分析的でモニター的に聞こえるので、好ましく思える人が多そうな気がします。
低域を単体でよく聞くと、よりグルーヴ感があり、生き生きしているのはMS-TW11のほうだと思われますが、両者とも実際には中高域以上のグルーヴや情報量のほうが鮮烈なので、低域に意識を向けづらいところがあり、この曲ではほとんど違いがわからないかもしれません。
次にAKIKI A3と聞き比べてみます。さて、AKIKI A3とMS-TW11では音響コンセプトの違いは高域で明確です。MS-TW11が先に述べたように繊細で分析的なモニター感に寄せたサウンドになっているのに対し、AKIKI A3の高域はどちらかといえば静かで、リスナーは自然と低域のグルーヴに引き付けられる構造になっています。音楽の全体を精密に楽しみたい場合、情報量が多いのはMS-TW11ですが、AKIKI A3の素直な低域重視のサウンドは、どんな曲を聴いてもほぼ低域からフォーカスが外れないので、低域だけをしっかり聞きたい人には好ましく思えるでしょう。
そういうわけで、以上の聴き比べからMS-TW11の立ち位置を定めるとすれば、それは比較的SONY WF-XB700に近いと言えるでしょう。多くの人にとって、グルーヴと情報量、深さの感覚でWF-XB700を凌駕して聞こえる可能性が高いですが、WF-XB700よりテクスチャ表現が不自然に思えるかもしれません。とくにボーカルのみずみずしさではWF-XB700のほうが優れていそうです。しかし、価格が高いWF-XB700と普通に勝負できることは確かです。
もしローエンド由来のノイズ感を気にしないどころか好んでおり、本物の重低域を求めている重度の低域ジャンキーの場合はこの中ではT2が最も優れています。そのサウンドは別次元の臨場感をもたらすでしょう。
音楽鑑賞
ロザリーナ「君がくれたmelody」
MS-TW11の深い低域と全体的に躍動的でディテールの良いサウンドは、この曲から豊かなグルーヴを引き出します。ステージングもしっかりしており、臨場感にも優れています。
ボーカルは温かみがあり、軸がしっかり安定していて、全体的にしんみりと落ち着いていながら、ニュアンスは少し強調され、語尾は少し伸び、甘い雰囲気があります。
この曲の静寂感を丁寧に維持しながら、高域は響きがのびやかに広がる高さが感じられます。
rionos「ウィアートル」
この曲のrionosの甘く清楚なボーカルを深く味わいたいなら、MS-TW11はおすすめのイヤホンの一つです。
MS-TW11の低域はボーカルの周辺の楽器音を十分に沈みこませ、深みのある床面を実現します。その深淵を思わせる黒い低域が十分に効果的に働くために、清楚なボーカルはよりはっきりと明るく浮かび上がり、高域の息のニュアンスをよりコントラストのあるものとし、全体的にメリハリの効いたサウンドが実現されています。
空間の奥行き感も良好で、吸い込まれるような没入感があり、この曲をじっくりと味わえます。
今井麻美「朝焼けのスターマイン」
重厚な低域が引き締め、しっかりと支えるステージの上には十分な静寂感があり、中高域の光沢をより明瞭に感じさせる高いコントラストを実現しています。
この曲を映画のワンシーンのように鮮烈に味わいたいなら、MS-TW11はかなりお勧めですね。ローエンドがうるさくないので、ランブルに気を散らされることもありません。
ベストセラーモデルがさらに進化
⼈気モデル「Soundcore Liberty Air 2」の音質・機能性をさらにアップグレードした上位モデル。Anker独自の「ウルトラノイズキャンセリング」を搭載。イヤホンの外側と内側に配置した2つのマイクで周囲の音を検知し雑音を除去することで、聴きたい音楽をクリアに届けます。また、あなたが今いる環境をアプリ上で選ぶだけで、そのシーンに最適なノイズキャンセリングを起動させることができます。
HearID 2.0
従来のHearing Profileの自動作成に加えて、ロックやポップ等の音楽ジャンルを掛け合わせて設定することが可能になり、より自分の好みにあったサウンドをお楽しみいただけます。
外音取り込み機能
音楽を聴いていても、イヤホンを付けたまま会話や公共施設のアナウンス等の外音を取り込んで聴くことがきます。(※本機能はアプリでの設定が必要です)
直感的なタッチ操作
イヤホンのタッチパッドを操作するだけで、着信への応答や音楽の再生、停止、曲送りが可能なほか、ノイズキャンセリングや外音取り込み機能の切り替えができます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。コーデックはaptXで使用イヤーピースは標準イヤーピース(ショートタイプ)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-40LUFS)
- M-SOUNDS MS-TW11
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-40LUFS)
- M-SOUNDS MS-TW11
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-40LUFS)
- M-SOUNDS MS-TW11
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-40LUFS)
- M-SOUNDS MS-TW11
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-40LUFS)
- M-SOUNDS MS-TW11
総評
M-SOUNDS MS-TW11は黒みのある重低域により音楽全体に引き締まった高いコントラストをもたらしてくれるイヤホンです。それはより深いローエンドのランブルやサンプを強く引き出しすぎないので、重度の低域ジャンキー向きではありませんが、それ以外の多くの人にとってうるさすぎない低域バランスを保っており、比較的万人向きです。競合相手としてはSONY WF-XB700が想定されますが、ライバルよりメリハリの効いたサウンドが期待でき、価格も安く手に入るため、WF-XB700を検討している場合は、MS-TW11も聴いてみることをお勧めします。
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