免責事項
- このレビューは誠実な品質レビューを読者に伝えるためにKZから提供されたサンプルに基づいて書かれています。
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KZ ZESの概要
こんな人におすすめ
- 深みのある低域を聞きたい
- エレキベース、バスドラムのサウンド重視
- 臨場感重視
- KZファン
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~40kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:113dB
- ケーブルコネクタ:0.75mm 2pin
- 価格帯:不明
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:9.0/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:7.0/10.0
- 中域:7.5/10.0
- 低域:9.5/10.0
- 歪みの少なさ:8.5/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:10.5/10.0
長所
- 優れたダイナミズム
- 奥行き感のあるサウンド
- ノスタルジック
- 濃厚感がある
- ボーカルフォーカスが良い
- 深く臨場感のある低域
- 優れたビルドクオリティ
短所
- 彩度に欠ける
- 爽快感に欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- 構築感に欠ける
- 音像一貫性に欠ける
KZ ZESの特徴
12mmダイナミックドライバーと静電(静磁)型ドライバーを組み合わせたエントリー中華イヤホン。
パッケージ(7.5)
KZ ZESのパッケージは簡素で、価格なりです。エコで良いとも言えますね。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- イヤーピース
ビルドクオリティ(9.0)
外観のビルドクオリティは価格帯の水準以上です。最近のKZの造型技術の進化はめざましいですね。デザインも下手な高級イヤホンより洗練されています。
装着感(8.5)
若干重みを感じますが、装着感は良好です。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
KZ ZESはアンプ側の出力インピーダンスにほとんど影響を受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーピース Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
KZ ZESはKZ ZEXの低域側を改善したとも言うべきサウンドバランスで、低域と中域でより均整の取れたウォームW字型サウンドを提供します。ただし、高域と解像度はZEXのほうが優れています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:A-
- 深さ:A-
- 重み:A-
- 太さ:B+
- 存在感:A-
KZ ZESの低域はかなり深くまで到達しており、レイヤリングは良好です。
ZEXのブーミーな低域とは異なり、引き締まって深くまで見通せる上質な低域になりました。ランブルも比較的豊かで、実在感のある低域が広がっています。バスドラムキックには確かな重みが感じられ、エレキベースにも精彩が感じられます。
低域好きもかなり満足させることができるでしょう。
中域(7.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
低域ほど劇的ではありませんが、中域もZEXから改善されています。
中低域のブーム感と中域下部のウォーム感が適正量に調整されたため、中域の透明度は改善されています。ボーカルはふっくらした豊かさは失われましたが軸がしっかりと聞こえるようになりました。
ただし欠点もあります。中域上部から高域はZEXより劣化したため、とくに歯擦音の処理能力でパフォーマンスが悪化しました。ボーカルはより刺激的に聞こえやすくなり、がさつになっています。そのため全体の表現はKZ ZESのほうがZEXよりアグレッシブになりやすく、聴き心地の安定感が減っています。
クランチ感の不足も気になるところです。このせいでスネアが固く扁平に聞こえすぎる傾向が出ており、アタックははっきりしますが、エレキギターの色彩感の表現にも悪影響が出て、存在感が薄くなっています。よく言えばスリム、悪く言えば薄味で陰気で、色気が足りません。ボーカル優位で聞きやすいとも言えるので、一概に悪いとは言えませんが、録音音源に忠実的とは言えないという点ではよくないでしょう。少なくともエレキギターの表現力はZEXのほうが明確に優れています。
高域(7.0)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B-
- 脆さ:C+
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D+
- 存在感:C+
高域はZESの最大の欠点であり、ZEXからかなりパフォーマンスが悪化しました。拡張性が減少しています。
もともと拡張性に優れているわけでもないZEXと比べて、さらに抜けが悪くなったせいで、ハイハットの開放感や粒度、バイオリンの伸び、なにより聴き心地に悪影響が出ており、高域が全体的にうるさく刺激的になっています。
定位/質感
- 質感の正確性:A
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:C
- 雅楽のテクスチャ:D-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域と低域の改善効果の分だけZEXより優れています。少なくとも中域の質感の印象は大幅に改善され、表現に深みも出ましたが、高域の伸びやかさが減ったため、スケール感はわずかにZEXより減った印象を受けます。
ZEXとどちらがオーディオマニア向きかは難しいところで、ZEXの解像度の高さまで考えると一長一短といったところです。
雅楽は篳篥の音は少し抜けが悪く、和音は甲高くうるさすぎる傾向があります。おすすめできません。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B
- クリア感:A-
- イメージング:B+
- 高域:A-
- 中域:B+
- 低域:B-
低域の深さで優れ、中域に奥行き感があります。高域は基本的に不足しており、やや密度が高く聞こえます。分離感が悪いと言ったほうがわかりやすいでしょうか。
クリア感はかなり優秀です。
イメージング性能は価格の標準以上です。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:B-
- 個人的な好み:C
音質的な特徴
美点
- 優れたダイナミズム
- 奥行き感のあるサウンド
- ノスタルジック
- 濃厚感がある
- ボーカルフォーカスが良い
- 深く臨場感のある低域
欠点
- 彩度に欠ける
- 爽快感に欠ける
- 高域の拡張性に欠ける
- 構築感に欠ける
- 音像一貫性に欠ける
優れたダイナミズム
奥行き感のあるサウンド
ボーカルが聞き取りやすい
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Westone Pro X30
総評
KZ ZESはKZ ZEXの最大の問題点であった低域と中域のサウンドバランスの改善に取り組んだモデルです。ZESのサウンドチューニングを見ると、普段は理解し難いチューニングの多いKZですが、実際のところ技術力が足りないわけではないのではないかということが推察できます。ZESの低域は特に質の良いチューニングが施されており、中域との繋がりも非常に合理的で丁寧に作られています。総合的には価格帯で優秀な機種とも言いづらく、ZEXよりも優れているとも言いづらい、微妙な機種ではありますが。
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