免責事項
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JPRiDE TWS-5 (T-5) ANCの概要
こんな人におすすめ
- ふっくらした甘い日本語ボーカルを楽しみたい
- 充実感のあるサウンドが好き
- 低価格でそれなりに機能するANCがほしい
- JPRiDEファン
- アンチSoundPEATS
基本スペック
- 連続/最大再生時間:12h(ANC使用時7h)/30h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:214-112301
- 価格帯:5000円~10000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:7.5/10.0
- 中域:7.5/10.0
- 低域:7.5/10.0
- 歪みの少なさ:10.0/10.0
- 通信品質:8.0/10.0
- アクティブノイズキャンセリング:7.5/10.0
長所
- 高いクリア感
- 比較的バランスが良い
- 重厚なサウンド
- 聞き疲れしにくい
- 悪くないANC性能
短所
- 音質面ではほぼあらゆる点で劣化SoundPEATS T2
- 拡張性に欠ける
- 狭い音場
- ディテールに欠ける
- ボーカルが暗い
パッケージ(8.0)
JPRiDE T5 ANCのパッケージは決して豪華ではありませんが、機能的でエコです。紙を中心としたパッケージ構成で処分に困ることはなく、地球環境にも優しいデザインです。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。
- JPRiDE TWS-5 (T-5) ANC本体
- 専用充電ケース
- USB Type-Cケーブル
- イヤーピース(3サイズ)
- マニュアル
ビルドクオリティ(8.0)
ビルドクオリティは価格を考えると、悪くありません。黒でまとめられたシンプルでエレガントな外観です。
人によっては地味すぎると思うかもしれません。
外観はほぼ完全にSoundPEATS T2と変わりません。
装着感(8.5)
耳が小さい人でも問題なく装着できそうです。収まりもよいでしょう。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。ただし、遮蔽物を挟むと通信が乱れがちになりました。完全に切断されることはありませんでしたが、曲を一貫して聴くのは少し難しかったです。通信が混雑する場所などでは少し通信乱れが目立つかもしれません。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースは物理式です。
電源ON | 充電ケースの蓋を開ける |
電源OFF | 充電ケースにイヤホンを収納し蓋を閉じる |
ペアリング | イヤホンを電源ONにしたあと、接続先がない場合は自動でペアリングモード |
リセット方法 | ①イヤホンをケースに収納 ②両方のイヤホンをケースに収め、両側イヤホンのマルチファンクションボタンを同時に5回タップ ③イヤホンのLEDランプが4回青色に点灯したらリセット完了 |
曲再生/停止 | 多機能ボタンを2回タップ |
曲送り | 右耳側の多機能ボタンを3回タップ |
曲戻し | 左耳側の多機能ボタンを3回タップ |
音量+ | 右耳側の多機能ボタンを1回タップ |
音量- | 左耳側の多機能ボタンを1回タップ |
通話応答 | 多機能ボタンを1回タップ |
通話終了 | 多機能ボタンを2回タップ |
通話拒否 | 多機能ボタンを1.1秒長押し |
音声アシスタント機能 | 右耳側の多機能ボタンを1.1秒長押し |
ANC/ヒアスルー/ノーマルモード切替 | 左耳側の多機能ボタンを1.1秒間長押し |
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性(自由音場補正済み)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータスなど
測定値は有料記事をご覧下さい。各モードの周波数特性の違いやANC性能の測定値など、より詳しい情報が参照できます。
オーディオステータス
音質解説
私がJPRiDE TWS-5 (T-5) ANCに求めていたのは、「より完成されたSoundPEATS T2」です。しかし結果から言えば、それは劣化したT2でした。サウンドバランスは相対的に良くなりましたが、最も重要な低域で大幅に拡張性が悪化し、TWS-5 ANCはT2のような臨場感あふれるサウンドを作り出すことはできません。
サウンドはニュートラルを意識し、中域がわずかに後傾的でステージングを強調するサウンドになっています。弱ドンシャリサウンドですね。サウンドバランスは比較的よく、価格帯ではイメージングはまあまあ悪くないかもしれませんが、拡張性の点で少し物足りません。
以下のレビューはFiiO M15にSBC接続でつないでノーマルモードでテストしています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.5)
- 原音忠実度:S-
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:A
TWS-5 ANCの低域はTWS-335に似ています。どうもJPRiDEはこういう太くて重い、しかし沈み込みの悪い低域を好む傾向があるようですが、率直に言って質が悪いのでやめたほうがいいでしょう。量感的に低域を重視しているようですが、その低域がパッとしないために、音楽全体の印象が悪くなりやすいです。
重みと太さを重視しているようですが、深さに欠けるので腰高、浮き上がり気味に聞こえやすい低域です。力強いランブルが感じられますが、少しモコモコしやすい音です。全体的に浅く、音場の手前付近でもっさりした音を聴かせてくる傾向があります。階層性はそれほど悪くありません。
ANCモードをONにすると、さらに低域は浅くなります。相対的に質の良い低域を求めるなら、JPRiDE TWS520 mk2をおすすめします。最高の低域がほしいなら、SoundPEATS T2を買いましょう。
中域(7.5)
- 原音忠実度:A-
- 厚み:A-
- 明るさ:B+
- 硬さ:B-
- 存在感:B
中域は少し暗く、しかも奥行きが強調されてステージ感を演出しています。ボーカルは軸が少し聞き取りづらく、低域がうるさくてニュアンスも聞こえづらいので快活さに欠け、やや元気がなく、やる気が無いように聞こえます。
私の大好きなオーイシマサヨシ「神或アルゴリズム(feat. りりあ)」をボコボコした低域で台無しにして聴かせてきたときには思わず投げ捨ててやろうかと思いました。最近、サウンドバランスが悪く、イメージングの悪いサウンドに体が拒絶反応を示すようになって、とくにゴミイヤホンをレビューするのが苦痛になりつつあるのですが、TWS-5 ANCもその点、全く話になりません。
雨宮天「奏」の歌声も甘くふっくらしてこれはこれで良いとも思えますが、子音がはっきり聞こえないので、口の形が見えません。エロティシズムを感じられず、ニュアンスが伝わってきません。ボーカルにキスできると思えるくらい口の形が見えるレベルになって初めて、この名曲に雨宮天が新たに込めた感情の襞が理解でき、この素晴らしいリバイバルの意味を知ることができます。このイヤホンを聴いても遠すぎて雨宮天の神ボイスを味わうことができません。
まあ、静かな雰囲気で音楽を聞きたいなら悪くありませんが、中域のイメージングでこの機種に期待できるところはほとんどないでしょう。
高域(7.5)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:B-
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D+
- 存在感:B-
高域はだめですね。SoundPEATS T2を買ったほうがまともな音がします。
正直コメントするのもめんどくさい。なんでJPRiDEはT2と同じ素体を使って、ここまで劣化したサウンドを作れるのか、一度聴いてみたいですね。
拡張性は悪く、低域とのバランスも取れていないので中域のディテールを引き出すこともできません。
これよりまだTWS-335を買ったほうがマシです。
定位/質感
- 質感の正確性:B-
- 定位の正確性:B-
- オーケストラのテクスチャ:B
- 雅楽のテクスチャ:B
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvořák: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
ゆったりした雰囲気を出しつつ、ダイナミズムは少し強調されて感じられるのでフルオケを聴くのに悪くないと思う人もいるかも知れません。ホールの奥行き感らしきものが感じられます。ただ全体的にイメージングの繊細さに欠け、つまらない音ですね。劣化した高域が躍動感とディテール感の不足を招いています。一方で良いところもあります。低域がよく響くので、演奏者の挙措に関わる音、床面の響きがよく聞こえ、より演奏者と場の雰囲気が見える気がするかもしれません。ただそうした臨場感を味わうならSoundPEATS T2のほうが優れています。
雅楽は上品で落ち着いた雰囲気があるので個人的には悪くありませんが、少し静かすぎますね。やはり音楽の心臓部が死んでます。
音場/クリア感
- 音場:B-
- クリア感:S-
拡張性が足りず、深さと高さで優れていません。奥行きは少し強調されています。
クリア感はきわめて優秀です。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:B+
- 個人的な好み:D-
サウンドは低域を始め、ほぼ全体でSoundPEATS T2より劣化しています。
したがって、音質面で推奨するところは何もありません。良い音を求めるなら、SoundPEATS T2を買いましょう。オーディオマニアには厳しい音です。
とはいえ、おそらく多くの人にはそれほど悪い印象ではないと思われます。日本語音域のあたりはよく聞こえるようになっており、楽器音やボーカルのボディはパワフルに支えられているので、力強い力感溢れたサウンドに思えるはずです。周囲がうるさい外出時はこれくらい低域の量感があったほうが聞こえが良いかもしれませんしね。
価格分の価値は十分にあると考える人も多いのではないでしょうか。単純に私がこういう安っぽいサウンドが嫌いなだけとも言えます。
音質的な特徴
美点
- 高いクリア感
- 比較的バランスが良い
- 重厚なサウンド
- 聞き疲れしにくい
欠点
- 音質面ではほぼあらゆる点で劣化SoundPEATS T2
- 拡張性に欠ける
- 狭い音場
- ディテールに欠ける
- ボーカルが暗い
クリア感が高い
重厚感がある
聞き疲れしにくい
総評
JPRiDE TWS-5 ANCは機能面では、改善されたSoundPEATS T2です。ANCの効きは少し悪くなったようですが、ANC時のノイズは風切り音くらいに減り、使い勝手が改善されています。しかし、ANC性能や音質はSoundPEATS T2に劣るので、これをあえて選ぶ必要はないでしょう。
SoundPEATS T2は完全ワイヤレスイヤホンの地平を超低域にまで拡充し、好きかどうかは別にしてまさに他の低価格機種では絶対に味わえないサウンドを実現していました。JPRiDEはそのT2の面白い部分を全部削ぎ落として、こんなにつまらない機種を作ったんですから、もう、一種の天才としか言いようがないですね。
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