免責事項
- このレビューは誠実な品質レビューを読者に伝えるためにPenon Audioから提供されたサンプルに基づいて書かれています。
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ISN Audio H30の概要
こんな人におすすめ
- 響きの豊かなサウンドが好き
- 没入感重視
基本スペック
- インピーダンス:18Ω
- 周波数応答範囲:20Hz-20kHz
- 感度:112dB
- コネクター:mmcx
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:8.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:6.5/10.0
長所
- 良好な原音忠実性
- 良好な解像度
- 印象的な高域
- 十分なディテール
- 高輝度
- サウンドバランスが良い
- 没入感のあるサウンド
- 響きが豊か
短所
- 高域の拡張性に欠ける
- 深さで物足りない低域
- 曇りが強くピンボケ気味でフォーカス感の悪い中域
- クリア感に欠ける
- 音像一貫性に欠ける
ISN Audio H30の特徴
- ISN Audio H30は、2つのバランスドアーマチュアドライバーと1つのダイナミックドライバーを搭載したハイブリッド型のイヤーモニターです。
- 低音には9.2mmのベリリウムコートダイナミックドライバー、中音にはSonion BA、高音にはKnowles BAを使用しています。
- 18Ωのインピーダンス、112dBの感度、20-20kHzの周波数レスポンスを持ち、MMCXコネクターとゴールドプレートプラグを採用しています。
- 1.2メートルのケーブルが付属しています。
ISN H30は、ケーブルやIEMを製造しているISNが新しくリリースしたIEMです。これまでに5つのIEMをリリースしてきたISNですが、その中でもH30は最もニュートラルなサウンドを持つとされています。しかし、それは完全にニュートラルなサウンドではなく、高域をカットし、重低域を削減した上で、中域を強調することで実現されたものです。価格帯としては、H50よりも低価格な位置づけとなっています。また、MMCXコネクターを採用しており、3Dプリンターで作られたクロームノズルが特徴的です。なお、H30には8芯OCC銅ケーブルが付属しており、3.5mm、2.5mmバランス、4.4mmバランスのいずれかで接続することができます。形状も特徴的で、半カスタムのデザインが採用されています。
ISNのIEMには、H40、D10、EST50、H50、D02という5つの異なるサウンドを持つIEMがありますが、それぞれのIEMが異なるサウンドを持つことで、ISNは多様なユーザーのニーズに応えています。H30は、ISNがこれまでにリリースしたIEMの中でも最も異なるサウンドを持つものとして注目されています。また、H30の形状も、半カスタムの形状が採用されており、耳にフィットしやすくなっています。価格帯としても、H50よりも低価格であり、高品質なサウンドを求めるユーザーにおすすめのIEMです。
パッケージ(8.0)
パッケージは価格の標準を満たしています。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- イヤーピース
- キャリングケース
- クリーニングツール
- マニュアル類
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(8.5)
装着感は良好です。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- 小野測器 SR-2210 センサアンプ
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
ISN Audio H30はアンプの出力インピーダンスの影響を受けます。
測定値は有料記事をご覧ください。
ANTELOPE AUDIO(アンテロープオーディオ)は、20年以上に渡りハイエンドのデジタルオーディオクロックやAD/DAコンバーターを手がけるメーカーです。プロフェッショナルが認めるクリスタル・マスタークロックを始めとする独自技術により、完璧なクロッキングを実現。レコーディングスタジオやプロエンジニア、プロミュージシャンはもちろん、オーディオファンからも高い支持を集めています。
音質解説
今回は標準イヤーチップ Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
ISN Audio H30はニュートラルを意識した中域充実系のサウンドシグネチャーを持っています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場補正済み周波数特性に基づく判定値。どれだけフラットスピーカーの音(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実][S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:S+
- 臨場感:B+
- 深さ:A-
- 重み:A-
- 太さ:B+
- 存在感:B+
ISN H30の低域はかなり深くまで直線的に伸びています。
バスドラムは太さと重厚感で不足感がなく、引き締まりもそこそこ良好でリズム感もわかりやすいですが、臨場感はやや弱めです。
エレキベースも黒さは十分なものの、広がりがもう少し欲しいところです。
量的には低域好きを満足させると思いますが、重低域マニアはもっと深いところまで音が出ているのを好むでしょう。
中域(8.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B
- 存在感:B
ISN H30の中域はニュートラルを意識して調整されているようですが、直線性に欠けます。
中域の直線性の不足は音楽の最も重要な中心部の曇り感につながりやすいため、原音忠実的なオーディオマニアには歓迎されません。また、歪もかなり多くなるため、透明度に欠ける点も気になるところでしょう。
結果としてH30の中域は響きが滞留して混濁感が強く、背景との分離も良くない、中心部付近がピンボケして妙に聞き取りづらいところがあり、ピアノ音などは音像が滲んで聞こえます。
一方ではっきり聞かせず、ぼんやりと背景に溶け込ませて優しく響かせる聞かせ方は、耳当たりが良くマイルドで音楽に浸るリスニングには向いていると言えるかもしれません。
ボーカルは少し前面に押し出されて聞こえます。
高域(9.0)
- 原音忠実度:C
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:C+
- 荒さ:C+
- 繊細さ:D+
- 存在感:C+
H30の高域は精細感を意識してよく調整されており、十分なディテールと繊細さを提供することができます。
温かくぼんやりしていた中域と比べて、高域は透明度と解像度も高く、シャープで細やかでディテールも優れています。シンバルはやや乾いた感じがありますが、シャッキリと引き締まって聞こえて、音楽にスパイスを加えることができており、ギターやスネアの引き締まり感もよく、ロックは非常に生き生きと聞こえます。
一方で直線性には欠けるため、弦楽や木管はやや金属質で引きつった感じが出やすく、ダイナミズムは強調されて聞こえますが、自然なみずみずしさには欠けます。ただし定位感は悪くありません。
定位/質感
- 質感の正確性:A
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
音像一貫性が不足気味で、とくに中域の質感の再現度が悪い点は気になるところでしょう。フルオーケストラでは生々しさのあるみずみずしい中域の感覚を好むオーディオマニアは多く、濁りが多く、曇って聞こえるH30の中域はこうした人々には魅力的には映らないでしょう。スケール感も少し不足しています。
状態の悪い録音を聴いている感覚になりますね。逆にレコードやカセットテープのような濁り感のある音にノスタルジアを感じるなら、悪くないという人もいるでしょう。
雅楽も同様の理由でほとんどおすすめしません。中域が濁っている分、クリアな中高域の和音が比較的きれいに聞こえる点は印象的で好きですね。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B
- クリア感:C+
- イメージング:B+
- 高域:A+
- 中域:B+
- 低域:C+
深さは少し物足りず、中域で奥行きがやや強調され、高さは物足りません。
クリア感は価格の標準以下です。中高域以上はかなりクリアです。
イメージング性能は価格の標準以上です。
音質総評
- 原音忠実度:A
- おすすめ度:A-
- 個人的な好み:A-
ISN Audio H30はマクロでみるとニュートラルに近く、バランスはよく調整されているように思います。しかし、全体的な直線性すなわち音像一貫性に欠け、全体的なクリア感も良いとは言えないため、あまりオーディオマニア向きとは言えません。
とくに中域の濁りが強い感じはオーディオマニアにはあまり高く評価されないでしょう。作業中や休憩時のリスニングに使う分にはそのぼんやりして耳に優しい感じが悪くなく思えるかもしれません。しかし、たとえばTinHiFi C2のような優れた中域を持つイヤホンを知ってしまうと、おそらくH30の濁った中域にはあまり面白みが感じられなくなると思います。
しかし、一方でその響きの強い中域に独特の没入感があり、クリアな高域の印象もよく、独自の音楽表現には面白みがあります。全体のバランスは良好なので、癖は少し強いですが、不自然すぎる感じもありません。
音質的な特徴
美点
欠点
- 高域の拡張性に欠ける
- 深さで物足りない低域
- 曇りが強くピンボケ気味でフォーカス感の悪い中域
- クリア感に欠ける
- 音像一貫性に欠ける
良好な原音忠実性
サウンドバランスが良い
没入感のあるサウンド
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
ハイエンド音質を求めるホームオーディオユーザーのために、AMÁRI はリファレンスグレードの AD/DA コンバーター、最大 24-bit 384 kHz 変換と DSD 128 をサポート。使いやすいインターフェースと Antelope の代名詞となったクロッキングを提供します。他のオーディオファンコンバータとは異なり、AMÁRI は、ヘッドフォンのメンブレーンウェイト補正として機能する、ご自身で抵抗値を選択できる 2つ のヘッドフォン出力を備えています。
- 8つの DAC を実装した「独自アーキテクチャ構造」を採用、驚異の ダイナミックレンジ 138dB DA 変換を実現
- デュアル ADC 構造 による、リファレンスグレードの ダイナミックレンジ 128dB AD 変換を実現
- 独立した デュアル DAC 構造 を採用した独自のヘッドフォン出力を搭載。(XLR バランス出力も可能)
- ヘッドフォンアンプは 17 Step の可変インピーダンス機能 を搭載、どんなヘッドフォンも完全に制御可能
- Antelope Audio の代名詞、64-bit Acoustically Focused Clocking (AFC) jitter management technology 採用
- 最大 384kHz/24-bit または DSD 128 に対応、ハイレゾや DSD 音源再生機として最高のポテンシャルを発揮
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- ISN Audio H30
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- ISN Audio H30
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- ISN Audio H30
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総評
ISN Audio H30は響きの豊かな中域を持ち、没入感のあるサウンドを実現しています。音楽の響く空間性を重視するリスナーにはかなり魅力的なリスニングイヤホンと言えるでしょう。全体のバランスもニュートラルに近く、よく整っており、ディテールや繊細さにも不足は感じられないと思われます。しかし、とくに中域の透明度を重視するオーディオマニアには少なくとも、真っ先に欲しいと思えるような製品ではないでしょう。
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