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iBasso IT01Xの概要
こんな人におすすめ
- パンチのあるサウンドが好き
- ダイナミックなサウンドが好き
- ビルドクオリティにこだわる
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~40kHz
- インピーダンス:16Ω
- 感度:108dB
- ケーブルコネクタ:mmcx
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:7.5/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.5/10.0
長所
- 比較的高い原音忠実度
- ダイナミズムに優れる
- ウォーム
- パンチのある低域
- 奥行き感の音場
- きらびやか
短所
- 中域が歪みやすい
- 暗く、かさかさして聞こえやすい中域
- メタリックに聞こえやすい
- 中低域が強すぎて中域が濁る
- 左右差あり
iBasso IT01Xの特徴
以下、公式サイトからの引用です。
- 高密度 真鍮製キャビティ:通常、アルミ製のキャビティ(空洞)を設ける多くのイヤホンとは異なり、IT01Xは内部キャビティの素材にブラス(真鍮)を採用しています。高密度のブラスは音質を劣化させる要因となる共振を抑制し、歪みのないクリーンな音を実現します。このIT01Xのために設計されたキャビティによって、柔らかくスムーズな中域と深く沈み込む低域の表現を可能になりました。
- デュアル ヘルムホルツ・レゾネーター:これまでのiBasso製ダイナミック型イヤホンと同様に、IT01Xにもブラスを使用した『デュアル ヘルムホルツ・レゾネーター』が搭載されています。この仕組みはパワフルな低域再現を強力にアシストし、イヤホンの筐体内に発生してしまう不要な反響音を除去。滲みの無い自然な音をIT01Xにもたらします。
- 両面ベリリウムメッキダイヤフラム:マグネシウム、チタン、ベリリウムなどをメッキ処理したダイヤフラムや様々なサスペンション、複数の内部コンポーネント…。IT01Xの開発は膨大な部品を組み合わせる試作から始まり、最終的にダイヤフラムには両面にベリリウムメッキを施したものを採用することに決定しました。ベリリウムは密度がチタンの1/2と軽量なため応答性に優れ、また非常に強靭なため低歪化や再生周波数帯域の拡張も可能と、様々な優位性があります。
- 3Dサスペンション:IT01Xのダイナミックドライバーには3D(三次元的な)サスペンションが採用されています。このサスペンションは振動の分断を効果的に抑え、更に歪みのないナチュラルな音質を実現します。
- 高磁束 NdFeBマグネット:IT01Xのダイヤフラム駆動にはネオジウム(Nd)、鉄(Fe)、ボロン(B)を主成分とした非常に高い磁束を持つことで知られる「ネオジムNdFeBマグネット」を採用しています。この強力な磁石がダイヤフラムをしっかりと駆動させることでこれまで以上に優れたダイナミクス表現を実現します。
- 取外し可能なMMCX規格ケーブル:製品にはMMCX規格に対応する銀メッキ高純度銅ケーブルが付属します。またプラグには金メッキの3.5mmステレオミニプラグを採用し、プラグのハウジングやケーブルスプリッターにはステンレス素材を使用。音質だけでなく見た目にもラグジュアリーな印象を付与します。
- iBasso独自のサウンドシグネチャー:iBassoは設立から15年が経過し、オーディオプレイヤーやアンプ、ヘッドフォンと多岐に渡るHi-Fiオーディオ製品の豊富なチューニング経験を持っています。IT01XにはこれまでiBassoが開発してきたイヤホン製品にない多数の新技術が採用されていますが、これまで培ってきたオーディオ哲学こそが最も大きくサウンドに反映された部分であり、本製品においても独自のサウンドシグネチャーを形成しています。
- メタリックペイント・カラー:IT01Xのカラーはブルー・ブラック・レッドの全三色。そのどれもが高級車をイメージしたメタリック塗装で仕上げられています。この塗装は単に美しい光沢を持たせるためだけでなく、製品の強度を底上げする役割も果たします。
パッケージ(8.5)
価格のわりにパッケージは豪華です。多数のイヤーチップと金属製のケース、交換用予備フィルターなどが付属します。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- イヤーピース(5種類)
- 交換用予備フィルター
- キャリイングケース
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは価格帯の水準を満たしています。
装着感(9.0)
装着感は良好で、小さな耳にもよく収まります。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- センサアンプ:小野測器 SR-2200
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
iBasso IT01Xは出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーピース(白色) Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
iBasso IT01Xのサウンドは中域が少し凹んだV字型のサウンドシグネチャーを持っています。気になる点としては中低域がかなり強調されすぎているため、中域の音像が影響を受けやすく、ぼんやりしやすい傾向があります。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:S-
- 臨場感:B
- 深さ:A-
- 重み:A-
- 太さ:A-
- 存在感:A
低域はやや膨張的でパンチが強く、レイヤリングはあまり優れているとは言いづらいところがあります。
パンチが強くブーム感があるため、楽しい低域ですが、ベースに深みがなく、ドラムキックも浅い印象を受けます。パンチが強めで重みと太さも十分なのでインパクトはありますが、全体的に浅く、引き締まりに欠ける音です。
中域(7.5)
- 原音忠実度:A
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B
- 存在感:B
中域は中心部で後退して凹んでおり、奥行きが強調されています。
ステージングにプラスの効果が感じられますが、このイヤホンは中低域がかなり強いため、中域は低域の影響を受けやすく、音像が滲みます。そのせいで透明感に欠けます。また中域は全体の中で奥にいるため、窮屈に聞こえやすいですね。
ボーカルは暗めですが、子音は少し強調されてはっきり聞こえる傾向にあります。声質的にはハスキーに聞こえやすいですね。
高域(9.0)
- 原音忠実度:C
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C-
- 存在感:C+
高域は低域とよく釣り合っており、鮮明感は十分です。拡張性は少しもの足りず、空気感は少し不足しているように思われます。
中域に対して張り出す形となっているせいか、ハイハットはわずかにメタリックに聞こえます。また全体的にドライでガシャガシャしやすい傾向があります。
それとボーカルのツ音がかなり尖って聞こえますが、個人的に耳に痛い感じはあまりありません。それでも人によっては気になる可能性があります。
定位/質感
- 質感の正確性:B
- 定位の正確性:A
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
フルオーケストラは中域に奥行き感があり、わりとスケール感とダイナミズムを感じるサウンドになります。エッジ感やクランチ感が不足しているため、バイオリンが妙にツルツルしている質感になっているのが気になりますね。
雅楽は篳篥の音が少し遠くから響いてくる雰囲気があり、奥ゆかしさを感じます。和音が少しギラつきすぎている気がしますが、うるさい感じもなく、個人的にはわりと好みですね。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B+
- クリア感:A-
- イメージング:B+
- 高域:S-
- 中域:B+
- 低域:B-
音場は深さは標準よりややもの足りないくらいです。中域で奥行きが強調され、高域は標準より少し足りないくらいです。全体としては少し広めに聞こえますね。
両面ベリリウムコートの振動板のせいか、クリア感は価格の標準以上ですが、中域で歪みが大きくなりやすいのが気になります。
解像度は価格の標準以上です。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:C+
- 個人的な好み:C-
iBasso IT01Xは中域で奥行き感を強調するリスニングモデルです。ただ、音質だけに限れば、これを買うよりは同じようなサウンドバランスで中域の表現やレンジで優れているCCA CRAを買うことをおすすめしますね。
値段はIT01Xの1/6から1/9くらいになりますが、解像度はほぼ同等で、クリア感で上位です。少なくともフルオーケストラを聴くなら、CCA CRAのほうが良いでしょう。
音質的な特徴
美点
- 比較的高い原音忠実度
- ダイナミズムに優れる
- ウォーム
- パンチのある低域
- 奥行きのある音場
- きらびやか
欠点
- 中域が歪みやすい
- 暗く、かさかさして聞こえやすい中域
- メタリックに聞こえやすい
- 中低域が強すぎて中域が濁る
- 左右差あり
ダイナミズムに優れる
パンチのある低域
奥行きのある音場
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- センサアンプ:小野測器 SR-2200
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- iBasso IT01X
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- iBasso IT01X
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- iBasso IT01X
総評
iBasso IT01Xはニュートラルを意識しつつ、中域を凹ませたV字型のサウンドを持っています。1万円台のリスニングモデルとしてはスペック的に水準を満たしており、悪くない選択肢です。パッケージも豪華でビルドも優れています。しかし、CCA CRAというより安く手に入る上位互換製品があるため、音質だけでいえば、積極的におすすめする理由がありません。
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