免責事項
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HiFiMAN Shangri-La Jrの概要
こんな人におすすめ
- フラットなサウンドが好き
- 伸びやかなサウンドが好き
- 高いヘッドホンほど音が良いと信じている人
- 富裕層
- HiFiMANファン
基本スペック
- 再生周波数:7Hz-120000Hz
- バイアス電圧:550-650v
- 価格帯:500000円~1000000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:7.5/10.0
- 装着感:8.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:7.0/10.0
- 低域:6.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.5/10.0
長所
- 優秀な原音忠実度
- 優秀な高域拡張性
- 低歪
- 明るく朗らか
- 良好なディテール感
短所
- 解像度が低い
- スカスカな低域
- 音質に対して異様に高価
HiFiMAN Shangri-La Jrの特徴
HIFIMAN / SHANGRI-LA.jrは、比類なき音楽体験を可能にする、静電型ヘッドホン&アンプシステム。
パッケージ(7.5)
パッケージは価格の水準を満たしています。今回はヘッドホン部のみでアンプユニットはありません。
パッケージ内容
- ヘッドホン本体
- 説明書
ビルドクオリティ(7.5)
ビルドクオリティは価格の水準を満たしています。
装着感(9.0)
比較的余裕のある作りで、装着感は悪くありません。頭が小さめの人には少し大きすぎる可能性があります。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- 小野測器 SR-2210 センサアンプ
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
音質解説
今回はFiiO M15につないでレビューしています。
HiFiMAN Shangri-La Jrはフラットに近い中域充実系のサウンドシグネチャーを持っています。
以下のレビューではアンプシステムはHiFiMAN Jade IIのものを使用しています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(6.0)
- 原音忠実度:B-
- 臨場感:C-
- 深さ:B-
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B-
HiFiMAN Shangri-La Jrの低域は全体の中で劣位に置かれており、ほとんど主張しません。
ドラムキックは力感と重みはそれなりに感じられるものの、ランブルは弱く、腰高気味で深みの感じられない音になり、臨場感はありません。
エレキベースも明るめで広がりに欠け、薄っぺらい印象で聞こえます。
中域よりは存在感が弱めで、人によってはスカスカに感じるかもしれませんが、モニター的な低域が好きな人には好まれる可能性があります。
中域(7.0)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:A-
- 明るさ:A-
- 硬さ:B+
- 存在感:B
HiFiMAN Shangri-La Jrの中域はかなり明るく、比較的前面で詳細に聞こえます。
解像度が低く、音が平面的に聞こえがちなのが難点です。全体のサウンドバランスもニュートラルというよりはフラットに近いバランスなのですが、解像度が低いせいで奥行き感も感じられにくいため、なおさら表現全体が平板に感じられます。
実際には中域は少し奥行き感を強調するサウンドバランスになっているのですが、立体感の再現度が悪すぎてほとんど効果が感じられません。
歪はかなり少なく、透明度は高いため、スペック上はハイエンドっぽい水準を満たしているものの、質感は正確でなく、解像度も低いため、見掛け倒しといったところです。
高域(9.0)
- 原音忠実度:A-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:A-
- 脆さ:B-
- 荒さ:C
- 繊細さ:C+
- 存在感:C+
HiFiMAN Shangri-La Jrの高域はかなり伸びやかで拡張性に優れ、静電型の良さを体感することができます。ただし解像度はよくありません。
高域は理想的なフラットスピーカーのサウンドに近く、原音忠実性を重視するオーディオマニアを感嘆させるサウンドバランスを持っていますが、解像度が低いため、その良さはいまいち引き立ちません。
シンバルクラッシュは繊細で広がりもよいですが、全体が透明に近く聞こえ、バイオリンの伸びやかさも優れているのにいまいちくっきり聞こえません。
定位/質感
- 質感の正確性:B+
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:D-
- 雅楽のテクスチャ:D-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
90万円近くと法外な値段がするわりに、解像度が低くて生々しさのないフルオーケストラです。個人的に価格の1/100くらいの価値しか感じません。
雅楽もわざわざこれで聞く必要はないくらいの表現でしょう。全体的に下手です。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B
- クリア感:A-
- イメージング:B
- 高域:B
- 中域:B
- 低域:B-
低域の深さは物足りません。中域は前面に出てきます。高域の高さは標準以上で優秀です。
クリア感は価格並みと言えるでしょう。
イメージング性能はエントリークラス並みです。
音質総評
- 原音忠実度:S-
- おすすめ度:D
- 個人的な好み:D
HiFiMAN Shangri-La Jrは原音忠実性と高域拡張性に優れたフラットサウンドを持つヘッドホンです。歪も低く、表面的なスペックは一見優れているように見えますが、解像度が全く価格に見合っておらず、1万円台の機種ですらこれよりまともな音で聞けるものが多いといった具合です。
音質的な特徴
美点
欠点
- 解像度が低い
- スカスカな低域
- 音質に対して異様に高価
優秀な原音忠実度
優秀な高域拡張性
明るく朗らか
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。アンプシステムはJade IIのものを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN Shangri-La Jr
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN Shangri-La Jr
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN Shangri-La Jr
総評
HiFiMAN Shangri-La Jrはフラットで原音忠実性が高く、静電型らしい高域拡張性に優れたサウンドを実現しているヘッドホンです。そのサウンドはとても価格に見合っているとは言えませんが、そもそもハイエンドオーディオ機器はオーディオ趣味をこじらせた富裕層が買うものです。本当のオーディオマニア向きには作られていませんから、見た目や価格で選ぶ人にはこういう音でちょうどいいのかもしれません。お金をかければかけるほど音が良く聞こえるという人も世の中にはたくさんいるのですから。現在のオーディオ産業は彼らのような「廃課金者」によってかなり下支えされていることは事実なので、我々オーディオマニアにとって悪いことでもありません。
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