免責事項
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HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionの概要
こんな人におすすめ
- パワフルなサウンドが好き
- 音場の奥行き感重視
- 自然な雰囲気のサウンドが好き
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~35kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:100dB/1mW
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:7.0/10.0
- 中域:8.5/10.0
- 低域:7.0/10.0
- 歪みの少なさ:6.0/10.0
長所
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 充実感が高い
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- 高いグルーヴ感
- 静寂感がある
- 力感が豊か
- 前方定位的
- 自然なアンビエンス
- ほどよいハーモニクス
短所
- 音像の一貫性に欠ける
- 派手さに欠ける
- 深みに欠ける
- 構築感に欠ける
- 濁った中域
紹介動画
公式プロモーション動画
パッケージ(8.5)
HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionのパッケージは全体として豪華で、価格に十分見合っています。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- ケーブル
- Bluetoothアダプター
ビルドクオリティ(8.5)
本体のビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
ケーブルのタッチノイズが少し大きいですね。
装着感(8.5)
装着感は快適です。密閉型なので、夏場は少し蒸れるかもしれません。
しかし、横幅がすごいですね。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionにアンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionは中低域から中域にフォーカスされるサウンドを持っており、そのサウンドはフラット傾向で中域重視といった具合になっています。
密閉型ですが、奥行き感があり、中域の音場は広く感じらます。また、高域もかなり伸びており、鮮明感が高めです。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.0)
- 原音忠実度:A-
- 臨場感:C+
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:B+
- 存在感:B
低域はそれなりに原音忠実度は高いですが、深さは少し物足りないですね。
重みが強く重厚感がありますが、沈み込みが悪く、やや鈍重です。太さがあり、パンチが強く力感が感じられて力強くたくましいですが、キックは浅く、立体感には欠けます。レイヤリングがよくありません。
量的には低域好きを満足させると思いますが、深さの点では全然だめですね。
中域(8.5)
- 原音忠実度:A
- 厚み:A-
- 明るさ:A
- 硬さ:B+
- 存在感:B
中域は奥行き感を強調する構造になっています。
中域は明るく、鮮明感があり、ボーカル周辺は広く、ステージングは良好ですが、クランチ感やエッジ感に欠け、イメージングはよくありません。
中域は響きが強すぎて音像がはっきりせず、豊かな包まれ感はあるものの、混濁感が強めです。低域の力感の強さもあり、迫力は感じられますが、キレが悪く、音像は拡散気味です。
個人的にはこういう響きの強い感じは嫌いではありませんが、評価は高くできませんね。
高域(7.5)
- 原音忠実度:D+
- 艶やかさ:B
- 鋭さ:B-
- 脆さ:B
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:C
密閉型ヘッドホンのわりに空気感があり、わりと伸びやかです。
それでも中域と釣り合いが取れているとは言い難いので、中域のエネルギーを十分に開放できる高さを実現できているとは言えず、中域が窮屈になる原因になっています。
腰高気味の低域と合わせて、全体的に音が横長に狭い範囲で聞こえる原因になっています。音場の展開力に欠けますね。
定位/質感
- 質感の正確性:B-
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:A-
- 雅楽のテクスチャ:A+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
響きが豊かで、中域の土台がしっかりしており、ステージングも悪くないので、一聴した印象はなかなか生々しさを感じます。ダイナミズムは悪くないにしても、低域の沈み込みはやはりもうちょっとほしいですね。
ただ中域はわりとホールの雰囲気に似て聞こえると思いますし、空気感もあるのでそれほど悪くありません。またアンビエンスはスピーカーに近い雰囲気があり、聴き心地が良いです。
雅楽も落ち着きがあって、奥行き感があり、前方定位的に聞こえ、個人的にはかなり良いですね。
音場/クリア感
- 音場:B+
- クリア感:C
- イメージング:A-
- 高域:A-
- 中域:A+
- 低域:B-
奥行きの分だけ音場は広く聞こえるかもしれませんが、高さと深さに欠けます。
総合的なクリア感はあまりよくありません。音量を上げるとすぐ歪みます。
イメージングはなかなか優秀です。ハイエンド機種らしい解像度の高さと言えるでしょう。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:A+
- 個人的な好み:S
HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionは採点するとあまり良くありませんし、オーディオマニア的にもとくに優れているとは思えません。たとえばVictor JVC HA-MX100VやYAMAHA HPH-MT8のほうがオーディオマニア的観点で言えば、はるかに優れています。しかし、HiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionはそれらより素晴らしいヘッドホンといえるところがあります。
実際には音像はぼやけており、ハーモニクスも多く、オーディオスペックで判断するととても良いヘッドホンとは言えません。しかし、低域は少し浅いものの、そのアンビエンスは自然な聞こえ方に近く、前方定位感と広がりがあり、音楽に生々しさがあり、充実感があります。クランチ感が悪く、人によっては籠もっているとさえ思うかもしれない音ですが、個人的にはいつまでも聴いていられますね。
一度聴いてみることをおすすめします。
音質的な特徴
美点
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 充実感が高い
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- 高いグルーヴ感
- 静寂感がある
- 力感が豊か
- 前方定位的
- 自然なアンビエンス
- ほどよいハーモニクス
欠点
- 音像の一貫性に欠ける
- 派手さに欠ける
- 深みに欠ける
- 構築感に欠ける
- 濁った中域
充実感がある
力感が豊か
ほどよいハーモニクス
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN HE-R10 Dynamic Version
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN HE-R10 Dynamic Version
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- HiFiMAN HE-R10 Dynamic Version
総評
自然な前方定位感、豊かな力感と充実感のある中域、丁寧に再現される奥行き感のあるステージング、すべてが興味深く調整されているHiFiMAN HE-R10 Dynamic Versionは個人的に素晴らしいと思える機種です。私のオーディオマニア的半身は、このヘッドホンをあまり高く評価しませんが、音楽鑑賞家としての半身はこれを推奨リストの最上段近くに置くことを強く求めます。ダイナミックでパワフル、豊かな充実感のあるサウンドが好きなら、ぜひ一度聴いてみることをおすすめします。
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