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HiFiMAN Aryaの概要
こんな人におすすめ
- 解像感が高く鮮明で明るい音が好き
- 音場重視
- 定位の正確性にこだわる
- 良質なミキシングモニターを探している
- スタジオチューニングが好き
基本スペック
- 周波数特性:8Hz~65kHz
- インピーダンス:35Ω
- 感度:90dB/1mW
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:8.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:10.5/10.0
長所
- 良好な定位感
- 優れた質感表現
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- モニター的でレイヤリングの良い低域
- 鮮明感に優れる
- 広大なパッシブサウンドステージ
- 分離感が良い
- 音像の一貫性に優れる
- 艶やかで印象的なサウンド
- 解像感が高い
- 均質性の高いサウンド
- 一貫したインピーダンス特性
短所
- わずかに強くなりやすい歯擦音
- 深みに欠ける低域
- 重厚感に欠ける
- 低い遮音性
パッケージ(8.0)
HiFiMAN Aryaのパッケージは価格の標準は十分に満たすように思います。ただしケースが付属しないですね。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- ケーブル
ビルドクオリティ(8.5)
本体のビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
ケーブルのタッチノイズもありません。
装着感(9.0)
装着感は快適です。通気性もよく、蒸れは少なめですが、遮音性は全くと言っていいほどありません。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- センサアンプ:小野測器 SR-2200
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
HiFiMAN Aryaにアンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
HiFiMAN Aryaは優れたニュートラルサウンドを持っており、低域はモニター的で十分な深さに到達していながら強調感なくレイヤリングがスムーズです。また、平面駆動型らしいインピーダンス特性の安定感があり、サウンドパフォーマンスの均質性に貢献しています。
優れたスタジオモニターとして、高い鮮明感とエッジ表現、パッシブサウンドステージによってミキシングに大活躍であろうヘッドホンと言えるでしょう。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:A
- 臨場感:C+
- 深さ:B
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B-
開放型モデルですが、低域はかなり深くまで到達しています。それでもやや存在感が弱いので、低域のモニタリング能力は完全には信頼できません。
そうとはいえ、十分な深さに到達しており、レイヤリングも良好で強調感が希薄でフラットに近いので、モニタースピーカーのようにストンと落ちる低域が好みの人にはかなりおすすめできます。
量的には低域好きを満足させることはできないと思います。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:A-
- 明るさ:A-
- 硬さ:B+
- 存在感:B
Aryaの最も得意とする領域は見通しがよく、透明度の高い中域です。
中域は明るく、鮮明感があり、ボーカル周辺は広々としており、わずかにステージングが強調されています。
エッジ感やクランチ感も十分で、音像はわずかに嫋やかな感じがありますが、十分構築的に聞こえ、立体感の再現度は高いでしょう。
分離感もよく、中域の楽器の定位は明瞭で、情報量の多い曲でもほとんど混濁することがありません。
高域(8.5)
- 原音忠実度:C-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B-
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
高域もかなり丁寧に調整されており、ほとんど欠点がありません。
鮮明感は高く、十分な輝度で中域の明るさを引き立てますが、歯擦音はわずかに強めです。そのため、ボーカルの子音の尖りははっきりとわかり、ミキシングのボーカルバランスの調整に高い能力を発揮します。しかし逆に言うと、高域に敏感な人には歯擦音の強い音源の癖を拾いやすく、ピーキーに感じやすいかもしれません。
拡張性が少し弱く、空気感はもう少し欲しいと思いますが、それでも十分魅力的でよく調整された高域です。
定位/質感
- 質感の正確性:A-
- 定位の正確性:A-
- オーケストラのテクスチャ:S-
- 雅楽のテクスチャ:A+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域は質感も正確で、十分なステージと定位の良好さを兼ね備えているためにフルオーケストラを楽しむヘッドホンとしておすすめできます。
中域の正確な表現は楽器音に本物の質感に近い感覚を与え、倍音にも不自然さがなく、響きが滑らかです。
雅楽も和音が美しく、わずかにエッジが強い感じがあり、少しだけ金属的かもしれないという違和感がありますが、それでも質感はほとんど自然で優美です。やや低域が弱いために、少し明るすぎる音場にはなっていますが、見通し感がよく、クリアに楽しめます。
音場/クリア感
- 音場:A-
- クリア感:B+
中域はわずかに奥行きが強調されており、広々としています。低域の深さは標準的か少し物足りず、高域の拡張性も少し物足りないくらいです。
総合的なクリア感は価格の標準を満たしています。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S-
- 個人的な好み:S-
HiFiMAN Aryaは優れたニュートラルサウンドを持ち、特に中域の再現度に優れています。質感と定位の両方で優れており、鮮明感が高く、明るく広い音場を持ち、音が隅々まで聞こえるために、トラッキングモニターやミキシングモニターとしても高い性能を発揮します。
音楽鑑賞用としても優れているだけでなく、定位感の良好さにおいて、ゲーミング用途でも正確性の高いモニターツールになるでしょう。
音質的な特徴
美点
- 良好な定位感
- 優れた質感表現
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- モニター的でレイヤリングの良い低域
- 鮮明感に優れる
- 広大なパッシブサウンドステージ
- 分離感が良い
- 音像の一貫性に優れる
- 艶やかで印象的なサウンド
- 解像感が高い
- 均質性の高いサウンド
- 一貫したインピーダンス特性
欠点
- わずかに強くなりやすい歯擦音
- 深みに欠ける低域
- 重厚感に欠ける
鮮明で高解像度
正確な定位と質感
スタジオモニターサウンド
総評
HiFiMAN Aryaは非常に優れたニュートラルチューニングサウンドを持つ、良質なスタジオモニターリファレンスヘッドホンです。中域が広く、開放的に聞こえ、ディテール豊かに、定位も確かに鮮明に聞こえるチューニングになっています。低域も十分な深さがあり、インピーダンス特性の一貫性にも優れているため、サウンドの均質性が高く、接続する機器による音質変化の少なさの点でも優秀です。究極のオーディオシステムの出口には、上流に影響されにくく、音を一貫して聞かせる性能が求められますが、それにふさわしいヘッドホンの一つと言えるでしょう。
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