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【カナル型イヤホン final A3000 レビュー】中域の音場と質感を重視する生音系イヤホン。それは優秀なボーカルホンでもあり、クラシックやJAZZのリスニングイヤホンとしても高次元
Final A3000の概要
こんな人におすすめ
- スマホでも鳴らせるイヤホンが欲しい
- クラシックやJAZZを好む
- みずみずしい音が好き
- 自然な質感と音場感を重視
- コストパフォーマンス重視
基本スペック
- 周波数特性:非公表
- インピーダンス:18Ω
- 感度:98dB
- ケーブルコネクタ:2pin 0.78mm
長所
- 中域への適切なフォーカス
- 良好なボーカルフォーカス
- 自然な質感
- 自然な音場
- 自然な発色
- 適度な静寂感
- 中域を邪魔しない低域
- 良好な装着感
短所
- 存在感の薄い低域
- 重厚感の足りないサウンド
- 音の臨場感・実在感に欠ける
- 飾り気のない外観
final audio designについて
final audio designは株式会社finalのオーディオブランドです。自社で企画開発・設計・製造・販売までを行っています。
Final A3000の特徴
新たな音質評価法の成果
Aシリーズの開発は音質と物理特性の関係の分析から新たな評価法を確立するところから始め、その成果はA8000として結実しました。A3000ではその評価法をさらに進化させました。私たちは様々なクオリティで録音された音楽を様々な音量で聴くものです。しかし従来の評価法では音を呈示する音圧などを固定した条件で主観評価を行うことが一般的であり、実際の製品試聴に即した良い音を判断することが困難でした。そこで実際の音楽聴取状況に沿った評価法を新たな研究の対象とした結果、この価格帯での決定版と言える製品に結実させることができたと考えています。
https://snext-final.com/products/detail/A3000
設計、部品、生産技術、全てを見直した完全新設計のドライバーユニット「f-Core DU」(エフコアDU)搭載
この価格帯ではありえない高音質を実現するため、海外に新たな拠点を設け、振動板・ボイスコイル・磁石・磁気回路・各部接着剤などのドライバー部品、また生産機器までも新設計し、完全新設計の6mmφダイナミックドライバーユニット「f-Core DU」を開発しました。ドライバーフロントハウジングの素材は、一般的なアルミニウムよりも磁力の影響を受けにくく且つ比重の高い真鍮を使用しています。振動板の時間応答性能を高めるために、ボイスコイルは30μの超極細CCAWを使用し、最小限の接着剤で組み立てることで可動部を徹底的に軽量化しています。さらに振動板は、通常の1/3程度の小ロットで丁寧にプレスすることによって、圧力の偏りを最小限に抑え、歪みのない均一な振動板の成形を実現しました。
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カスタマイズしたかのような装着感
A3000では、Bseriesの開発で確立したIEMの最適解である筐体設計をベースに、より優れた装着感を実現しています。イヤホンの装着感が優れているか否かは、圧迫感で決まります。人間工学を謳い有機的な形状を選択するなど、シリコンの反発力で保持する方法は一見正しく見えますが、常に耳に力がかかることとなり、気付かない内に耳へ負担を掛け、疲労が蓄積します。有機的で大きな面で耳に接する形状に比べ、接触面積を限定する形状により、圧迫感の無い装着感を目指しました。A3000の筐体は3点で保持することにより安定した装着感となります。下の図のピンク色の部分(耳のポケット)のいずれか1点と、緑色の部分(イヤーピース)の1点、青色の部分(耳珠)の1点の合計3点となります。そのため、多くの方の耳に適合します。接する点全てに圧迫感が無ければ、これほどイヤホンの装着は快適なのかと感じて頂ける、まるでカスタマイズイヤホンであるかのような優れた装着感となっています。
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2Pinコネクター+オリジナルOFCケーブル
2Pinコネクターは高精度な自社開発品です。最も汎用性が高いとされるφ0.78規格を採用。タッチノイズを考慮して柔らかくしなやかな被覆素材で、イヤーフックを使用する際にも柔軟に曲がり、良好な装着を実現しました。
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ケーブルタッチノイズを解消するイヤーフック(ロック機構付き)
イヤーフックはタッチノイズの減少に有用で、装着頂くと歩行時にケーブルと身体が触れることで発生する不快なごそごそ音(ケーブルタッチノイズ)が劇的に減少します。弊社の従来のイヤーフックは、一般的なイヤーフックよりもスリムで、ワイヤーや樹脂の入ったケーブルに比べて異物感がなく、掛けていることを忘れる快適さを特長としています。しっかりとケーブルに固定可能な、ロック機構付きタイプ(Bタイプ)です。
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左右軸色違いのオリジナルイヤーピース
音導管部分と耳に触れる部分とで硬度が異なる2種類のシリコン素材を採用。
https://snext-final.com/products/detail/A3000
音導管部分には、耳に触れる部分に比べて硬度が高いシリコンに溝加工を施すことで強度と柔軟性を両立。
耳に触れる部分には硬度の低いシリコンを採用し、快適な着け心地と高い遮音性を実現しました。
軸色を一方はグレー 、もう一方を赤にすることにより、イヤーピースを少しめくってイヤーピースの軸色を確認することで、 薄暗い場所でも左右の見分けがつきやすくなっています。さらに、隣のサイズの軸色が異なる(グレー軸は濃いグレーと薄いグレーの交互、赤軸は赤とピンクの交互)ため、サイズの判別もしやすくなっています。
サイズはSS / S / M / L / LL の5サイズで、持ち運びに便利なケースも付属します。
パッケージ(8.0)
価格相応くらいのパッケージです。付属品は特に多いというわけではありませんが、一通りそろっています。
開梱体験はとくに豪華ではありませんが、価格の標準は満たしています。
ビルドクオリティ(8.5)
シンプルでプラモデルのようなデザインです。少し飾り気がないかもしれませんが、ビルドクオリティは良好です。
装着感(9.0)
装着感はしっかりしています。小さな耳でもおそらく問題はないでしょう。遮音性もよいです。
音質
周波数特性
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
THD+N特性
制動
final A3000はアンプの出力インピーダンスの影響はほとんどないようです。
定格感度が少し低いので、スマートフォンでの駆動では音量を必要とするかもしれませんが、実際Samsung GALAXY A30で聴いてみてもそれほど不足を感じませんでした。
詳しい測定値については有料記事に掲載しております。
ラウドネスステータス
音質解説
final A3000はとくに中域から高域にかけて、音楽の質感と空間を丁寧に表現するイヤホンです。JAZZやクラシック音楽で楽器音に生々しい自然な質感を求める場合、この価格帯最高クラスの満足感を与えてくれるはずです。
低域(7.5)
- 原音忠実度:B+
- 臨場感:B
- 深さ:B
- 重み:B+
- 太さ:B
- 存在感:B-
A3000の低域は量的にはほとんど強調されていませんが、比較的深いところまで到達しています。わりとモニタースピーカー的でローエンドを出しすぎない、滑らかな減衰感のある音がします。
低域は少し明るく、わずかに薄く聞こえるので、一般的に低域ジャンキーを満足させることはないですが、タイトで階層性が明瞭です。
ランブルとサンプは少し不足しているように思えるので、低域に実在感はそれほど感じられません。たとえばドラムキックは輪郭と胴の雰囲気がかなり丁寧に描き出されますが、床面の存在感が感じられません。質感が非常に丁寧なだけに、この鳴動の不足感は個人的にはかなり気になります。臨場感はいまいちです。
中域(10.0)
- 原音忠実度:A-
- 厚み:B
- 明るさ:B
- 硬さ:B
- 存在感:B+
final A3000の中域はほぼ完ぺきに近いと言えます。中域の自然な質感と空間性を愛するクラシックファンにとって、2万円以内で間違いなく真っ先に検討すべきイヤホンでしょう。
中域のステージングの点でA3000に不満はほとんどありません。どんな曲を聴いても定位に破綻を感じることはありません。それは自然よりわずかに強調された奥行きを感じさせ、ほんの少し定位の強調を感じますが、自然な幅を持っています。
質感の点でも音が少し浅い印象を受ける以外、文句の付けようがありません。それは臨場感に優れたイヤホンではありませんし、私の印象では腰高気味ですが、中域の雰囲気は非常にナチュラルで生々しく、オーケストラの楽器のすべてがみずみずしく聞こえます。
高域(9.0)
- 原音忠実度:B+
- 艶やかさ:B-
- 鋭さ:B-
- 脆さ:B+
- 荒さ:C+
- 繊細さ:C+
- 存在感:B-
高域は中域の質感に配慮されており、自然なディテール感が追求されています。
そこには目立つピークはほとんどなく、バイオリンを聴いても、上から下まで音がつながってスムーズに聞こえ、不要な輪郭の強調やヒステリックな雰囲気はありません。私の印象では超高域で余韻が少し不足している感じがあり、バイオリンの響きが一番上までは伸び切っていないように聞こえ、空間の音抜けが若干悪い気がしますが、些細な問題です。
店頭でA3000を選ぶ際、私はシンバルとボーカルのバランスを慎重に聴き比べました。シンバルが少しでも目立ちすぎていたり、輝度が高かったり、金属的過ぎたり、とにかくあらゆる点で、JAZZや穏やかなボーカル曲、クラシックの空間にある静寂感を乱すような要素がないか見極めたかったからです。A8000やA4000は残念ながら、私の期待していた自然な質感と雰囲気の再現能力はなく、それらは私をとくに感動させることはありませんでした。
しかし、A3000を聴いた私はそのシンバルの響きが非常に自然で生々しく、空間的にも適切な位置で響いているように聞こえたので、一聴して驚きました。私の好みからすると、低域の不足は明らかでしたが、この中域から高域にかけての音作りに私は大変興味を持ち、購入したというわけです。
結果から言えば、この高域には私の求めるものがありました。それはたしかに単独では少し地味でやや不足を感じるところがありますが、中域に対して非常に丁寧な配慮がされており、クラシックやJAZZを楽しむリスナーに生々しい楽器音を届けるために精魂込めて調整されています。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音響的焦点:中域
- 音場:B
- クリア感:B+
final A3000の音響的焦点は中域に存在します。
音場は奥行きだけ少し強調されているようですが、幅はほとんど自然です。高さも標準的でしょう。深みは足りません。
クリア感は価格を考えると標準を満たしています。少し良いくらいかもしれません。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:A+
- 個人的な好み:A
final A3000は非常に質感表現に優れたイヤホンです。その最大の魅力は中域の丁寧な再現にあり、クラシック音楽では明晰な定位をみずみずしい自然な質感とともに味わえます。
欠点はあきらかに低域にあり、それは比較的深くまでよく到達していますが、中域に対して劣位に置かれており、とくに音量が小さいときには音場の底が浅く聞こえ、いわゆる「沈み込みの足りない」感じがあって、音楽全体が軽っぽく思えます。そのため、レコーディングシグネチャーの「白き魔女」のような壮大さを強調するようなクラシック音楽を聴くと鳴動感が足りないために、迫力と生々しさに欠ける印象を受けることがあります。
この点で、クラシックファンにとって、A3000よりはEarFun Air Proのほうが安く手に入り、ベターな選択肢といえるところも多いでしょう。とくに普段音楽を音量小さめで聴く人には、外出先でもANCつきで小音量で快適に聴けるのは魅力的なはずです。
ただ、人によっては低域が静かなくらいのほうが音楽の全体像が分かりやすい場合もあるので、一概にどちらとは言えないところはありますけれども。
音質的な特徴
美点
- 中域への適切なフォーカス
- 良好なボーカルフォーカス
- 自然な質感
- 自然な音場
- 自然な発色
- 適度な静寂感
- 中域を邪魔しない低域
欠点
- 存在感の薄い低域
- 重厚感の足りないサウンド
- 音の臨場感・実在感に欠ける
自然な音場と質感
ナチュラルなディテール感
みずみずしい中域
音楽鑑賞
Endorfin.「純情ティータイム」
中高域を露骨に強調することがないので、最初は地味に思えるかもしれません。しかし、数日聞きこんでみるとおそらく中域のバランスの良さ、聴き疲れがしないのにとても見通しが良い感じを心地よく思うかもしれません。A3000は非常にナチュラルなので、この曲もボーカルに自然な人間の温かみが感じられます。高域は派手ではありませんが、非常にバランスが良いので情報量が適度で、うるさくなる感じがありません。
鮮明感を強く押し出さないので、最初は解像感が不足しているように思うかもしれませんが、実際にはディテールは良く構築されており、音楽の骨格に不足はありません。
ただし、低域は明らかに不足しており、ベースは少し薄味で、音楽全体の引き締まりは少し足りません。
坂本英城「覇気雄心」
三國志14トレジャーボックス版に付属のサントラから。フルオーケストラの勇壮な行進曲風の曲です。中域の見通しは非常によく、質感も生々しく、みずみずしい音で聞こえます。
個人的には低域の鳴動感に欠けるので、行進曲らしい力強さ、迫力、引き締まり、音の深みに欠けるところはありますが、中域の再現度は高く、かなり満足できます。
ただ、音量を上げても低域がうるさくならない分、中域の構成が良くわかるので、オーケストラの楽器音の鳴り方をすばやく確認したい時などにはむしろ活躍してくれます。そういう意味では利便性が非常に高い機種です。とはいえ、クラシックに臨場感、没入感を求める人には物足りないことが多そうです。
TETSU「炎のさだめ」
かなりスタジオレコーディングに近い雰囲気で、わりとレコーディングモニター的に聞こえます。SHURE SRH840の聴かせ方を想像するとわかりやすいでしょう。
実際のところ、個人的にSRH840の購入をかなり真剣に検討していたのですが、A3000があれば、十分代替できそうです。家庭での音楽鑑賞用では十分ですし、DTMのレベルでも十分実用的です。
各音のバランスもよく、音場が自然で定位もわかりやすく、原曲の雰囲気をかなり忠実に感じることができます。音量を上げても低域が目立ってこないので、ボーカルフォーカスも良好で、男女を問わずボーカルホンとしても使いやすいでしょう。
BGVP DM8は完璧なパッケージであり、それは美しい外観、強力なサウンドを持っており、お財布に優しい価格で購入可能です。ユーザーは$350でこの素晴らしい製品を手に入れることができ、高品質なオーディオファン向きの音楽パフォーマンスを楽しむことができます。我々は以前、このブランドのDM6、DMG、Zeroや他の製品を試してみましたが、それらはどれも非常によくできていました。
BGVP DM8は滑らかで安定的、温和でウォームなサウンドで、中域を丁寧に聴かせるイヤホンです。その甘くふっくらとした、ニュアンスの柔らかい調和的なボーカル表現はどこか懐かしく、メロウでノスタルジックな雰囲気があります。マイルドで耳当たりが良く、音量を上げても荒れるところのないイヤホンです。ビルドクオリティやパッケージクオリティも価格の標準以上のため、この価格帯で音楽的な中域を持つイヤホンを探している人の最適解になりえます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio AmariとRME ADI-2 Pro FS R Black Editionを用いています。使用イヤーピースは標準イヤーピース(final E)のSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
GENS D’ARMES(ロック系)
- 原曲(-23LUFS)
- final A3000(RME ADI 2 pro FS R BE)
- final A3000(Antelope Audio Amari)
白き魔女(クラシック系)
- 原曲(-23LUFS)
- final A3000(RME ADI 2 pro FS R BE)
- final A3000(Antelope Audio Amari)
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- 原曲(-23LUFS)
- final A3000(RME ADI 2 pro FS R BE)
- final A3000(Antelope Audio Amari)
Sophisticated Fight(JAZZ系)
- 原曲(-23LUFS)
- final A3000(RME ADI 2 pro FS R BE)
- final A3000(Antelope Audio Amari)
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- final A3000(RME ADI 2 pro FS R BE)
- final A3000(Antelope Audio Amari)
総評
final A3000は自然な質感と音場表現を持つ中域にフォーカスして聞かせてくれるレコーディングモニターライクなサウンドを持っているイヤホンです。それはかなり録音音源の質感と雰囲気に忠実でありながら、低域をうるさくならないよう聞かせてくれます。
2万円以下でクラシック音楽やJAZZを楽しみたいリスナーに真っ先にお勧めできる製品の一つですが、低域の不足が気になるかもしれません。有線にこだわらないならば、EarFun Air Proも検討してみるとよいでしょう。もしかすると、よりあなたに合っているかもしれません。とくに小音量で音楽を聴く場合は。
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