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Fidue Gem 4の概要
こんな人におすすめ
- 解像度の高いサウンドが好き
- バランスド・アーマチュアのドライな音が好き
- 繊細な表現が好き
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~40kHz
- インピーダンス:50Ω
- 感度:112dB
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:8.0/10.0
- 中域:8.0/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:6.5/10.0
長所
- 全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
- アグレッシブで楽しいサウンド
- 全体の原音忠実度がそこそこ高い
- 華やかで派手
- 強調されたダイナミズム
短所
- バランスド・アーマチュアっぽいドライで人工的な音
- 深みのない低域
- 付帯音が多く、平面的に聞こえる中域
- 奥まって暗い中域
Fidue Gem4の技術仕様
- カスタムメイドのBAドライバーを採用した高性能な4BAセットアップを片側ずつ搭載
- 自然で透明感のあるサウンドチューニング
- 3ウェイ電子周波数分割
- 独立したアコースティックキャビティ
- 独立したAir-Diversion A.G.モジュール
- 高純度銀メッキ単結晶銅ケーブルを採用
- 標準的な2ピンコネクター
- 3Dプリンティング技術による医療用樹脂シェル
- インピーダンス 50Ω
- 感度:112dB
- 入力電力:50mW
- THD+N: <1%
最新の4バランスド・アーマチュア・ドライバーIEM「Fidue Gem 4」販売開始
Fidue Acousticsは、中国に拠点を置くHiFiオーディオ機器ブランドです。Fidueという名前を聞くと混乱するかもしれませんが、FIDUEの各文字はF- Fidelity(原音忠実性)、I- Inspired(インスピレーション)、D- Durable(耐久性)、U- Unique(独自性)、E- Enjoyable(娯楽性)を表しています。FIDUEは、Asteroid、Sirius Mk ii、Artemisなどの複数の製品を成功させ、ハイファイ・オーディオ・イヤホンとアップグレード・ケーブルの製造に専念しています。本日、FIDUEは最新のマルチBA IEMであるFIDUE Gem 4を発表しました。この製品には4つの高性能BAドライバーが搭載されています。ジェム4は、オーディオ分野で長年の経験を持つプロのエンジニアによって設計されており、3ウェイ電子周波数分割、独立サウンドキャビティなどの高度な技術を採用し、自然で高解像度のパフォーマンスを実現しています。
パッケージ(8.5)
パッケージは価格の標準を満たしています。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- キャリイングケース
- イヤーピース(2種類)
- 3.5mm⇔6.35mmアダプタ
- クリーニングツール
- 航空機用アダプタ
ビルドクオリティ(8.0)
外観のビルドクオリティは価格の標準を十分満たしています。ただ、最近の中華イヤホンは1万円台ですら美しいデザインのものが多いので、あんまり驚きがありません。
装着感(8.5)
装着感はかなり良好ですが、少しステムが長いので、耳が小さい人には収まりづらいかもしれません。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Fidue Gem4はアンプ側の出力インピーダンスの影響が少し大きく、出力インピーダンスが高い機器につなぐと低域や中域が変化して聞こえるでしょう。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ(バランス) Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Fidue Gem4は独自の技術で解像度を高めたと主張していますが、たしかにそのサウンドは非常に高解像でくっきりと音楽を聴かせます。
全体のチューニングは原音忠実度が高めになっており、スタジオチューニングライクなドンシャリサウンドと言えるもので、中域を引っ込めて立体感を強調しています。中低域以下も少し強調されており、ややアグレッシブで派手に聞こえやすい音です。明るくはっきりと聞こえる音が好きなら悪くありませんが、癖が強いので好き嫌いはあるかもしれません。
また解像度を高めたせいか、バランスド・アーマチュアドライバー特有の歪みの多さが素直にサウンドに反映されており、はっきり聞こえる中域から中高域で歪が強く出るため、ボーカル帯域の表現に違和感を感じることが多いかもしれません。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:B
- 臨場感:C
- 深さ:B
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B
Fidue Gem 4の低域は少し浅く、中低域がやや強く聞こえる腰高の傾向があるため、見通し感ではそれほど優れていません。
量感があり、パンチが強く感じられるサウンドですが、キックの重さで少し物足りず、深さが足りないので引き締まりに欠けます。
低域はぼんやりして聞こえやすいので、低域好きを満足させることは全くと言って良いほど期待できません。
中域(8.0)
- 原音忠実度:A+
- 厚み:B+
- 明るさ:B
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域はかなり原音忠実的でニュートラルに近い調整になっていますが、中心部が引っ込んでいるため、派手さが強調されて聞こえやすく、女声ボーカルや楽器音は前傾して聞こえます。
Fidue Gem4の中域は明瞭性に優れているのに、妙にTHDが高いので、音像が平面的でぼんやりして濁った感じの音がはっきり聞こえるという、いかにもバランスド・アーマチュアっぽい音で聞こえます。
女声ボーカルでとくに歪んだ感じが出やすいので、明瞭感が高いのに、いまいち透明感が足りず、妙にドライでみずみずしさに欠けた音になります。
個人的には解像感の高さには驚かされますが、空間表現的にも音像の展開が不自然で、いかにも人工的でデジタルな音で聞こえるのが、あまり好みではありません。
高域(8.0)
- 原音忠実度:D+
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:A-
- 脆さ:B
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:B
サウンドバランス的には高域もよく調整されています。
高域の構造はわりとSonarworksターゲットに忠実であり、スタジオモニター的です。エッジの強調されたはっきりしたサウンドでフルオケを聴くと、木管や弦楽の音のディテールが強調されて、弦の運びや息の吹き込む雰囲気がわかりやすいのは美点です。しかし、かすれがちに聞こえるところがあり、歯擦音が目立ちやすいという欠点もあります。
また全体的にダイナミズムが強調されており、どんな曲でも少し朗らかに楽し気に聞かせますが、もともとアグレッシブな曲を聞くと快活な表現になりすぎて、少し聞き疲れやすくなります。
植松伸夫「エーコのテーマ FFRK Ver. arrange from FFIX」のようにもともと明るく、少し硬い表現が多い曲を聞くと、その鋭い感じや硬い感じが強調されて聞こえやすく、構築感の高まりによってクリアな印象を受けます。しかしその反面、カチカチした感じでうるさくも聞こえやすく、表現もドライなので、いまいちまろやかさに欠け、人工的で弾力感にも欠けた、親しみを持ちづらい音にも思えるかもしれません。
定位/質感
- 質感の正確性:B+
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:B-
- 雅楽のテクスチャ:C
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
フルオーケストラは奥行きが強調され、立体感が増して聞こえます。雰囲気は華やかさが強調されており、弦楽のエッジははっきり聞こえ、ややドライですが、妙に明るく聞こえます。ダイナミズムが強調されており、重厚感や静けさには少し欠け、ハイハットは繊細に傾き、明るくクラッシュします。どことなくウキウキした面白い表現ですが、私の趣味ではないですね。
雅楽は和音が出た途端にその甲高さが不快で聴くのをやめたくなりました。非常に明るく繊細ですが、中域の不足によって軸が足りず、前傾しすぎているサウンドで落ち着きがなく、気色悪い心地がします。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B
- クリア感:C+
- イメージング:A+
- 高域:S
- 中域:S-
- 低域:B+
音場は少し奥行きが強調されています。高さは悪くないと思いますが、深さに欠けます。
クリア感はよくありません。
イメージング性能はかなり優秀で、価格帯では抜群に近いように思います。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:B+
- 個人的な好み:B-
全体の原音忠実度が高めで、何より解像度に優れているため、解像度重視のオーディオファンをかなり満足させる逸品です。ただし、そのサウンドは典型的なバランスド・アーマチュアっぽい音で、歪みが多く、ドライに聞こえがちです。
ニュートラルチューニングや原音忠実的なフラットサウンドを愛するオーディオマニアからしても、中域で奇妙に空間がねじ曲がったように聞こえやすいサウンドは好まれないでしょう。ボーカル帯域に弱点があるため、一般にボ-カル音像に特にこだわりを持ちやすいオーディオマニアを満足させるのは難しいと思われます。
一般的にアグレッシブに聞こえやすいのも人を選ぶところです。華やかなサウンドが好きな人には一定程度好まれるかもしれませんが、もともとアグレッシブな曲はギャンギャンガチャガチャして聞こえやすいので、音楽に落ち着いた雰囲気を求める人には全く合わないと思われます。どんな音楽を聞いても妙に押しが強い感じが拭えないでしょう。
わりと癖が強いイヤホンですが、解像度の高さは他にない魅力で、これで聴くChoucho「木漏れ日色の記憶」は繊細で美しく、個人的にうっとりしましたね。
音質的な特徴
美点
- 全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
- アグレッシブで楽しいサウンド
- 全体の原音忠実度がそこそこ高い
- 華やかで派手
- 強調されたダイナミズム
欠点
- バランスド・アーマチュアっぽいドライで人工的な音
- 深みのない低域
- 付帯音が多く、平面的に聞こえる中域
- 奥まって暗い中域
- 場合によって聞き疲れしやすい
- 充実感に欠け、安っぽく聞こえやすい音
全体的な明瞭度が高く、解像度に優れる
アグレッシブで楽しいサウンド
全体の原音忠実度がそこそこ高い
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING L50を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準イヤーピース(バランス) Sサイズを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Fidue Gem 4
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Fidue Gem 4
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Fidue Gem 4
総評
Fidue Gem4は非常に高解像なサウンドを実現しており、くっきりした音が好きな人に感動を与えることができるイヤホンです。しかし、そのサウンドはややアグレッシブすぎ、バランスド・アーマチュアっぽい歪の多さもあって、透明度が高いとは言いづらいものです。
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