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Etymotic Research ER2SEの概要
こんな人におすすめ
- ニアフィールドサウンドが好き
- ボーカル曲向きのイヤホンが欲しい
- ASMRやボイスドラマ、ナレーション向きのイヤホンを探している
- よく品質管理された信頼性の高い機器を使いたい
- Etymotic Researchファン
- コストパフォーマンス重視
基本スペック
- 再生周波数:20-16000Hz
- インピーダンス:15Ω
- 感度:96dB
- ピンタイプ:mmcx
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:8.0/10.0
- 高域:8.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:7.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:11.5/10.0
長所
- 原音忠実性が高い
- ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
- マイルドな高域
- 良好なボーカルフォーカス
- 優れた質感表現
- モニター的な低域
- 前方定位的
- 音像一貫性に優れている
- 左右の正確なマッチング
- 高い品質管理
短所
- 低域の深みに欠ける
- モニター用途には物足りないかもしれないクリア感
- 少し不足しているディテール感
Etymotic Research ER2SEの特徴
原音に忠実なエントリーモデル
“Studio Edition”を標榜するEtymotic のニューモデルER2SEは、満を持して発表するエントリーモデルです。新規で開発したハイパフォーマンスなダイナミック型ドライバー1基を搭載し、原音に対する忠実性とワイドレンジ特性を目指しながら、オーナーにリスニングプレジャーをもたらすことを約束します。
MMCX方式の着脱式ケーブルを採用し、不慮の断線時でも交換が容易。
鮮やかなメタリックブルーのカラーリングは、アルミ蒸着塗装による高品位な仕上げです。
パッケージ(8.0)
ER2SEのパッケージは価格の標準以上です。
パッケージ内容
- イヤホン本体
- キャリングケース
- イヤーピース
- 説明書
ビルドクオリティ(8.0)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。デザインはかなりきれいです。
装着感(8.0)
耳奥まで入れるので装着感は独特です。遮音性は抜群に近いですが、装着感自体はかなり奥で固定してもケーブルのテンションなどにより変わりやすく、思ったよりは安定しません。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- 小野測器 SR-2210 センサアンプ
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Etymotic Research ER2SEはアンプの出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ(トリプルフランジ)を使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Etymotic Research ER2SEは典型的なEtymoticターゲットに近い中域充実系のサウンドを持っています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場補正済み周波数特性に基づく判定値。どれだけフラットスピーカーの音(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実][S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:B-
- 深さ:B
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:C+
ER2SEの低域はモニター的でリニア、ほぼフラットになっており、ストンと落ちるモニタースピーカーライクな低域になっています。深さは期待できません。
エレキベースは広がりは悪く気もしますが、黒さで物足りず、エッジが強調されてブリブリして聞こえる傾向があります。また、ドラムキックは浅めで重厚感に欠け、胴鳴り感が希薄で軽っぽいタンタンした音で聞こえます。
中域を邪魔せず、明るく見通しの良いモニター的な低域が好みなら悪くありませんが、個人的には物足りないですね。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 厚み:B+
- 明るさ:A-
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域はニュートラルに近く、しかも前面に聞こえるように調整されています。
Etymoticのイヤホンは中域でやや歪みが多くなる傾向がありますが、ER2SEもその例に漏れません。音量を上げると少し付帯音が増え、ノイズ感が出る印象を受けるかもしれません。透明度は少し不足して感じられやすく、モニターとしては少し物足りない印象を受けるかもしれません。
中域の質感表現はかなり正確ですが、やや明るく聞こえすぎる傾向があり、ボーカルが張り出し気味に聞こえます。音場は少し狭く親密な位置関係で聞こえやすく、分離感はいまいちです。このあたりはクロスフィードするスピーカーの音像を意識して調整されているせいでしょう。
高域(8.5)
- 原音忠実度:B-
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C
- 荒さ:D+
- 繊細さ:D+
- 存在感:C-
高域は滑らかで一貫性のあるサウンドを実現しており、バランスも良いため、原音忠実度が高めです。
鮮明感がわずかに物足りず、輝度が低いのでディテール感がぼんやりするのが難点です。ハイハットの発色は悪く、音楽に活気が感じられませんね。
聴き心地は良く、ボーカルやギターのメインがある中域に集中しやすいのは良いですが、作曲用のモニターとしてはあまり信頼できません。これはむしろ完成した曲をそこらへんのスピーカーで聞いたらだいたいどういう感じに聞こえるかのチェック用の製品といえます。積極的に音を捉えていくなら別の製品(たとえばBehringer MO240)を使ったほうが効率が良いですね。
とはいえ、高域の拡張性はそれほど悪くないので、地味な割に抜けが悪いとは感じない高域です。
定位/質感
- 質感の正確性:S-
- 定位の正確性:C-
- オーケストラのテクスチャ:B
- 雅楽のテクスチャ:B-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
そもそもエティモティックサウンドはあまりクラシック鑑賞向きではありません。スケール感を出すのが下手で、全体的に平べったい抑揚の不足したフルオーケストラは聴いていてまったく楽しいとは思えませんね。
中域の質感はわりと正確で、音像がほどよい位置関係でまとまりが良くフレームに収まってくれるため、コンパクトに全体像が把握できるのは良いですが、フルオーケストラは迫力あるサウンドを音場全体で目いっぱい堪能したいという人が普通でしょう。
エティモはそういう用途で音作りしていませんから、フルオーケストラを聴いても頭の中心付近に少し縮こまって聞こえる感覚になります。
雅楽も篳篥の音がいまいち伸び切りません。和音はおとなしめにマイルドで聴きやすいのが良いですが、繊細さが物足りないため、笙やら龍笛やらが混淆してダマになり、若干ぼんやりして聞こえます。締まりが悪くてダルイ音ですね。
こうした聞かせ方はしかし、聴覚保護の観点からは妥当といえるかもしれません。ER2SEのサウンドデザインは保守的すぎるように思われますが、Etymoticがその創業から今まで聴覚保護を非常に重視していることは思い起こされてよいでしょう。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B-
- クリア感:B-
- イメージング:B+
- 高域:A-
- 中域:B+
- 低域:B-
深さは物足りず中域は前面に聞こえ、高域は高さで少し物足りません。
クリア感は価格なりかちょっと物足りないですね。
イメージング性能は価格の標準以上です。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:A
- 個人的な好み:B
ほぼ同じ価格で買える中華EtymoクローンのYu9 U-554とU-556を以前紹介したことを覚えているかもしれません。
チューニング面ではいくつかの点でU-554やU-556のほうがER2SEより優れていると言える側面があることが事実です。U-554や、とくにU-556はER2SEより解像度で優れています。U-554は精細感でER2SEを凌駕しているため、分析性でより信頼できるでしょう。またそれらは多くの人にとってER2SEよりもおそらく原音忠実的です。
しかし、ER2SEにはYu9のレプリカモデルたちにない利点があります。まずそれはEtymoticの主張通り比較的ワイドレンジでYu9のモデルより広く楽曲のイメージを再現できます。
さらにもっと着目すべき点は、国内正規版のER2SEは左右の各個体がシリアルナンバーで個別に識別されており、厳密なマッチングが行われていることです。代理店の完実電気は非常に厳密な品質管理を行っており、もし手持ちのER2SEのペアのどちらかが不良になった場合、修理依頼をすれば完璧なマッチングの個体を送り返してくれます。
Yu9の個体も中華イヤホンとしてはかなり高い水準で左右がマッチングされていたことは確認していますが、Etymotic Researchの品質管理ははるかにそれを凌駕します。
あくまで日本国内で正規品を新品で手に入れて使用するという前提での話ですが、Etymotic製品のクオリティコントロールはこの価格帯ではまれなほど行き届いており、代理店の完実電気も非常に経験豊富で気を配っています。単純に音質パフォーマンスだけで判断すれば、どちらかといえばYu9のほうが良い気もしますが、信頼性と長期的な視点での音質維持まで含めて音質を評価するならば、圧倒的にEtymoticの正規品を買った方がお得です。
中華イヤホンをはじめ、一流ブランド(無駄に高額な金をむしり取るような10万円以上のイヤホンを作っている自称ハイブランドたちのことではありません。JVCやオーテクなどのことです)を除く多くのイヤホン製品では今のところ、たとえ数十万円払ったとしても、この1万円台のEtymoticイヤホンの製造と流通の両面にわたる徹底的な管理体制ほどのクオリティコントロールはとても望めないでしょう。
音質的な特徴
美点
- 原音忠実性が高い
- ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
- マイルドな高域
- 良好なボーカルフォーカス
- 優れた質感表現
- モニター的な低域
- 前方定位的
- 音像一貫性に優れている
- 左右の正確なマッチング
欠点
- 低域の深みに欠ける
- モニター用途には物足りないかもしれないクリア感
- 少し不足しているディテール感
原音忠実性と質感再現度が高い
ほぼ完璧なニアフィールドサウンド
前方定位的
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。イヤーピースは標準のトリプルフランジタイプを使用しています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Etymotic Research ER2SE
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Etymotic Research ER2SE
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Etymotic Research ER2SE
総評
Etymotic Research ER2SEはEtymoticのエントリークラスとして上位機種と同じ使い勝手とほぼ同様のサウンドを廉価な価格で提供するモデルです。また、上位機種と同じくEtymotic Researchの優れた品質管理を実現しており、この価格帯ではめったに見られない完璧な左右のマッチングと優れたアフターサービスが得られます。廉価で信頼性の高い製品を求めているなら、この製品は見逃せないでしょう。
こういう高い品質管理を実現しているイヤホンこそ、本当の意味でコスパに優れた製品です。アキュフェーズがやっているようなことを低価格で堅実に実施しているということです。つまり、優れたオーディオ製品は10年20年という長い年月にわたって愛用できるものであるべきだという確かな哲学のあるブランドのエントリークラスはやはり別格というべきでしょう。
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