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Classic Pro CPH7000の概要
こんな人におすすめ
- DTMをこれから始めたい人
- 予算が限られているが、スタジオグレードの高品質モニターヘッドホンがほしい
- ミキシングエンジニア
- レコーディングエンジニア
- スタジオチューニングが好き
- ディテール重視
基本スペック
- 周波数特性:10~30kHz
- インピーダンス:64Ω
- 感度:108dB
- 価格帯:3000円~5000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:9.5/10.0
- 中域:9.0/10.0
- 低域:7.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
- コストパフォーマンスボーナス:12.5/10.0
長所
- 高い解像度
- 高品質なディテール
- 繊細
- 優れたスピーカー定位感に基づく音像
- 詳細で美しいボーカル
- 十分な空気感
- 色気のあるギターやスネア
- 良好な使い勝手
- 良好なビルドクオリティ
短所
- 不足しすぎる低域
- ウォーム感に欠け、アグレッシブなサウンド
- ボーカルがシャウトして聞こえやすい
- ドライに聞こえやすい
- メタリックに聞こえやすい
- 歯擦音が少し強くなりやすい
- 聞き疲れしやすい
Classic Pro CPH7000の特徴
サウンドエンジニアやミュージシャンからのフィードバックを盛り込んで完成させたモニターヘッドホン。音質はもちろん、大型のイヤーパッドにより、装着感にもこだわっています。ヘッドホン部分は180度反転させることもでき、現場での使用を意識した設計になっています。プラグ部分は、標準フォンプラグへの変換アダプタも付属しており、脱落を防止できるねじ込み式です。
- 長時間装着しても疲れを感じさせないイヤーパッド。
- 心地良くフィットするヘッドバンド。
- 高音質を実現するために妥協のない高音質ダイヤフラムを搭載。
- ステレオミニプラグを採用。フォンプラグ変換アダプターも標準装備。
- 使い勝手のよい片出しケーブルを採用。
パッケージ(7.5)
業務用製品のため、パッケージは簡素です。紙製でエコ、処分しやすくなっています。
パッケージ内容
- ヘッドホン本体
- 3.5mm→6.35mmアダプタ
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の標準以上です。軽量でイヤーマフも快適なうえ、イヤーカップの柔軟性も高く、片耳モニタリングも可能です。
ただし折りたたみは出来ません。また、ヘッドバンドからケーブルの一部が露出しているのは気になります。
装着感(8.5)
イヤーマフは適度な厚みがあり、装着感はかなり快適です。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
CLASSIC PRO CPH7000はアンプの出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回はFiiO M15で駆動してレビューします。
CPH7000は中域下部から低域を除いてハーマンターゲットOEにかなり忠実にチューニングされており、ほぼ完璧にモニタースピーカーのサウンドを再現する優れたモニターヘッドホンです。ブライトニュートラルで音楽のディテールをよく再現するため、ミキシングやレコーディング、DTMに優れた性能を発揮します。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.0)
- 原音忠実度:C
- 臨場感:D+
- 深さ:B-
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:C
CPH7000の最大の欠点は低域にあります。CPH7000の低域はパワーバランスで中域に大きく劣っており、存在感が希薄になりがちです。そのせいで中域が前面に聞こえるのは良いですが、音の引き締まりに欠け、中域が硬くうるさく聞こえる原因になっており、聞き心地にも影響しています。
サウンドハウスはCPH7000のサウンドを様々な現場のミュージシャンやエンジニアの意見を取り上げてデザインしたと言っていますが、低域はまさにモニターヘッドホンの定番人気機種であるSONY MDR-7506やVictor HA-MX100Vと同じように深いところを強く出しすぎないようコントロールされています。
こうした古典的で人気のあるモニターヘッドホンに親しみがあれば、中域を邪魔しない、やや優しい存在感でありながら、レイヤリングは十分に確保され、重低域のノイズ感を出さないモニター性能に特化した低域デザインをCPH7000でも確認でき、信頼が高まることでしょう。
ただし、現代的な音楽デザインで低域は欠かせないので、長く使う場合はEQでの調整が必要かもしれません。
中域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 厚み:A-
- 明るさ:A
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域上部から高域の構造はほぼハーマンターゲットOEに基づいており、非常に良質なスタジオモニターサウンドを提供します。しかし、中域下部が弱く、ウォーム感が少ないため、中域はやや硬質でアグレッシブに聞こえやすい傾向があるのは気になるところです。明るくはっきり聞こえますが、少しシャウト感が強く出やすく、聞き疲れしやすい傾向があります。
イコライザーで中域下部を調整するのが良いでしょう。詳しくは有料記事で示したハーマンOEとの比較グラフやラウドネスステータスなどを参考にしてほしいですが、ニュートラルラインに近づくよう中低域付近を3dBほど持ち上げるのが良いですね。耳で確認しながらエレキギターとスネアが自然に聞こえるまで調整するのが良いでしょう。
それだけで長時間聞き疲れせず、質感表現にも優れた最高レベルのスタジオモニターに大化けします。
高域(9.5)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:A-
- 脆さ:B
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
CPH7000の高域はほぼ完全にハーマンターゲットOEをなぞっており、ピークディップも少なめでかなり優秀なモニタースピーカー環境に近い定位感を提供します。
密閉型ですが、高域の拡張性に優れているため、空気感にもほとんど不足がなく、良質で実在感も確かな高域を提供します。
こだわる人は有料記事に示したデータを参照して3~4kHzを微調整することでより完璧なハーマンサウンドを目指せますが、多くの場合調整は必要ありません。
定位/質感
- 質感の正確性:B
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域下部から低域に不足があるため、CPH7000の聞かせるクラシックはやや安定感に欠け、アグレッシブで金属質に聞こえる傾向があり、とくにバイオリンはヒステリックで、シンバルもうるさく出やすく、全体的に質感はドライに聞こえます。しかし、前方定位的な高域はよく出来ており、スピーカーの定位感が好みなら理想に近いでしょう。そういう人は聞き心地を確認しながら、500Hzから下を持ち上げて微調整することで、好みに近づけることができるはずです。
雅楽も同様に明るすぎて篳篥がヒステリックに、和音もうるさげに聞こえる傾向があります。こちらもイコライジングで500Hz以下を調整することでよりよい聴き心地に近づくでしょう。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B
- クリア感:B+
- イメージング:A-
- 高域:A
- 中域:A-
- 低域:B+
低域の深さは物足りず、中域は少し前面に張り出し、高域は高さに僅かな不足を感じます。総じて標準的な音場と言えるでしょう。
クリア感は価格を考えるとなかなか優秀です。
解像度は価格帯では抜群に近く、多くのハイエンド機種に匹敵します。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:S+
- 個人的な好み:A+
低価格で本格的なレコーディングやDTMに耐えうるスタジオモニターが欲しい場合、Classic Pro CPH7000はまっさきに検討すべきヘッドホンの一つです。サウンド面では1万円以上の多くの優れたモニターヘッドホンと競合するポテンシャルを秘めており、とくにハーマンサウンドを重視するリスナーにはEQで微調整するだけでそれに限りなく近づけるため、魅力度はさらに高いでしょう。
入門者に最適で、長く使えるモニターヘッドホンであり、文句なくおすすめできる逸品です。長く日本のスタジオシーンやイベントシーンを支えてきたサウンドハウスだからこそ作れたと言える、誇れる優れたスタジオモニターヘッドホンです。
音質的な特徴
美点
- 高い解像度
- 高品質なディテール
- 繊細
- 優れたスピーカー定位感に基づく音像
- 詳細で美しいボーカル
- 十分な空気感
- 色気のあるギターやスネア
欠点
- 不足しすぎる低域
- ウォーム感に欠け、アグレッシブなサウンド
- ボーカルがシャウトして聞こえやすい
- ドライに聞こえやすい
- メタリックに聞こえやすい
- 歯擦音が少し強くなりやすい
- 聞き疲れしやすい
高い解像度
高品質なディテール
優れたスピーカー定位感に基づく音像
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- CLASSIC PRO CPH7000
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- CLASSIC PRO CPH7000
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- CLASSIC PRO CPH7000
総評
長年に渡って日本の音楽シーンを支え続けてきたサウンドハウスは、日本製で最高のモニターヘッドホンの一つ「CLASSIC PRO CPH7000」を生み出しました。それは5,000円未満という驚きの低コストで本格的なスタジオサウンドを届ける夢のようなヘッドホンです。CPH7000はDTM初心者の初期投資のマネージメントに大きく貢献する理想的なモデルで、これを買うことでモニターヘッドホン選びに迷うことなく安上がりに済ませ、ほかの機材にお金をかけることが出来ます。入門者がプロになるまで使い続けられる5,000円以下の機材というのは稀ですが、CPH7000はそうした機材の数少ない一つです。
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