免責事項
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Clariar i640の概要
こんな人におすすめ
- とにかくボーカル重視
- 高域がぼやけている音が好きな人
- とにかく値段が高くてゴツいイヤホンがほしい
- ニアフィールドサウンドが好き
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~25kHz
- インピーダンス:14.2Ω
- 感度:97dB/mW
- ケーブルコネクタ:mmcx
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:7.5/10.0
- 高域:6.5/10.0
- 中域:9.5/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
長所
- きれいで艶やかに聞こえる中域
- 華やかで張り出して聞こえる女声ボーカル
- まともな低域
- 原音忠実性が高い
- 自然な質感
短所
- 不自然な定位
- 窮屈でうるさい中域
- 気色の悪い倍音
- 高域の拡張性に欠ける
- 狭い音場
Clariar i640の特徴(公式サイトから引用)
- タイトで深みのある応答性の良い低域と歪が少なく自然で明瞭な中高域を実現:バスドラムの連打や打ち込みによる深みのあるキック音にも追従し、ベースラインを正確に再生するため、低域の再生能力に優れるKnowles製のベントホール付きデュアルBAドライバーを採用し、タイトで深みのある応答性の良い低域を実現しました。中域には質感に優れるSonion製BAドライバーとカスタマイズされたKnowles製BAドライバー、高域には伸びが良く空気管に優れるKnowles製デュアルBAドライバーを採用。何度もテストを繰り返し決定されたクロスオーバーネットワークによって組み合わされた4つのBAドライバーは、透き通るようなボーカルや弦楽器の響きを余すことなく再生し、歪が少なく自然で明瞭な中高域を表現します。
- 低域ドライバーの一番優れる領域だけを取り出すhigh density porous filter(h.d .p.f):一般的な音響抵抗フィルターに加えて高密度特殊多孔質フィルターを多段で音導管に配置することで、低域用ドライバーから出力される不要な帯域を効率的にカットするローパスフィルターを構成。これによって、位相特性や他の帯域のドライバーに影響を与えることなく中域への被りを抑えた芯の強いクリアな低域を実現します。
- 低域の応答性を高めるrear cavity pressure optimizer とワイドレンジで分離感の優れた音を実現するcomposite housing structure:イヤホン筐体内部の圧力を調整し、ベントホールが設けられた低域用ドライバーの振幅を最適化。これによって、低い周波数まで歪みの少なく応答性の良い低域を再生します。各帯域ごとに独立した音導管を持つBAドライバーユニットホルダーを、医療用の高精度3Dプリンタを使用して製造。これを制振シリコン材を使用して筐体一体の金属製ステムと接続・固定することで、帯域間の意図しない干渉を防ぎクリアでワイドレンジなサウンドを実現します。
- シックで落ち着いたデザインのフルメタルボディ:CNC切削加工とサンドブラスト処理が施されたアノダイズドアルミニウム合金製の筐体を採用。2つの筐体パーツをアングル形状のアクセントパーツで繋ぎとめる構造とすることで軽量でありながら高い強度を持ちます。シンプルでありながら特徴的なデザインに仕上げるためオフィスチェアや音響製品など数々の製品を手掛けてきた工業デザイナーと時間をかけ作り上げ、円と直線を組み合わせた形状とツートーンのマットカラーで飽きの来ない落ち着いたデザインに仕上げました。表面の質感や光が当たった際の陰影や面の反射がよく見えるようにサンドブラスト加工の粒度にもこだわりました。また音響設計の自由度を高めるため採用された、少し大柄な筐体は装着感を犠牲にしないよう軽量に仕上げられ、カスタムIEM製造にかかわったノウハウを生かしたフィットの良い装着感を実現しました。
プロモーション動画
Clariar i640
¥135,000
パッケージ(7.5)
ONZOのレンタル品なので、正規のパッケージではありません。したがってパッケージの品質評価はせず、基準点の7.5とします。
ただし、フジヤエービックのブログを見る限り、正規のパッケージは価格並みくらいには豪華だと思われます。
ビルドクオリティ(8.0)
外観のビルドクオリティは価格を考えると少し優れたレベルです。
装着感(7.5)
装着感は悪くありません。大きな筐体のせいか、遮音性も高めです。ただ、顔の大きさ次第ですが、少し目立ちますね。また耳が小さい人にはうまく嵌まらない可能性はあるかもしれません。
Clariar i640
¥135,000
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Clariar i640はアンプ側の出力インピーダンスの影響が十分に大きい場合、低域と高域で影響を受けるようです。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤーチップ Lサイズを使い、FiiO M15で駆動してレビューします。
Clariar i640は比較的原音忠実性が高く、多くの人の聴覚上のニュートラルにも近いので、サウンドバランス自体は比較的良好と言えます。しかし、周波数特性を見ればわかるように、高域に大きな欠点を抱えており、その明らかな調整不足がサウンドパフォーマンスを著しく悪化させます。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:S+
- 臨場感:B+
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B
Clariar i640の低域はハイエンドにふさわしい良質な調整がなされていると言えます。
深さ、重さも十分で原音忠実性も高く、質的に非常に好ましく、自然に聞こえます。ただし量的な強調がないので、ベースヘッド(低域好き)向きかと言われると微妙なところです。
個人的には深さが少し物足りません。もうちょっとランブルがほしい気がしますね。
中域(9.5)
- 原音忠実度:S
- 厚み:B+
- 明るさ:B+
- 硬さ:B+
- 存在感:B
中域も非常に原音忠実的かつニュートラルに近く、第一印象ではなかなか聴きごたえがあります。ただし高域の拡張性が足りていないうえ、高域の質が悪いので、抜けが悪く、とくにバイオリンなどの楽器は倍音が気色悪く聞こえます。シンバルもグチャグチャガシャガシャしていて音像がぼやけますね。
ボーカルは詳細に聞こえますが、押し出し感が強く、前傾的でシャウト感が少し強調されて聞こえます。女声ボーカルがせり出してくるので、定位はやや破綻して感じられます。初心者がボーカルにこだわるあまりイコライジングに失敗したような音でよくありませんね。
高域(6.5)
- 原音忠実度:B
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:C+
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C-
- 存在感:C+
バランス的には原音忠実性も高く、わりとよいと思うかもしれない高域ですが、実際にはこのイヤホンの最大の欠点です。
高域はコムフィルターがかかったような構造になっており、それが音像をぼやけさせ、倍音を不自然に聞かせます。しかも中域上部から中高域の押し出し感が強いため、バイオリンは艶やかですがヒステリックに聞こえ、木管楽器も不快なほどで、ブリキのような音に聞こえます。気色悪いですね。
そもそも拡張性が足りてないので、音場全体が窮屈で、高級機種とは思えないうるさい音楽を奏でます。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B
- オーケストラのテクスチャ:C+
- 雅楽のテクスチャ:D+
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域の質感は正確で、一聴した印象では明るくきれいに聞こえるので、クラシックは悪くないと思うかもしれませんが、倍音の表現が不自然でヒステリックに聞こえやすく、定位感もよくない上に音場も狭いのですぐにボロが出ます。クライマックスで楽器が一斉に音を出すと音がガチャガチャとうるさく、分離も悪く聞こえるので聴くに堪えません。フルオーケストラを味わうのはとても無理です。
雅楽ですか?篳篥がブリキのような音でうるさくて聴くに堪えませんね。塩梅の表現もよくわかりません。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音場:B-
- クリア感:B+
低域はなかなか深いですが、中域に奥行き感がなく前かがみで、高域は拡張性が足りない上に倍音の処理も下手くそなので音場は奇妙で窮屈です。
クリア感は価格を考えると標準は満たしているでしょう。
音質総評
- 原音忠実度:S-
- おすすめ度:D
- 個人的な好み:D
Clariar i640は低域から中域までうまく作り込んでいながら、最後の詰めの高域で大失敗した駄作です。
あくまで個人的な好みの問題もあるということを差し引いて話半分で聴いてほしいところもありますが、このイヤホンに10万円の価値などないことは、そのわずか1/6程度で買える同じ6BA機のAUDIOSENSE DT600のほうがはるかに自然な滑らかさを持っており、より聴き心地の良いサウンドを実現できているという点から明らかです。DT600も総合的には手放しで高く評価できるという機種ではないものの、Clariar i640の気色の悪い音に比べれば、はるかにまともであると言えるでしょう。
たしかにこのイヤホンの中域は印象的ですが、残念ながら多くの曲で、どぎつすぎてうるさく不快です。1万円台にこれより優れた質感表現を持つイヤホンが多数ある中で、無駄に不格好で大きいこのイヤホンを買う必要はありませんし、近い価格でもAKG N5005という、音質に優れ、装着感の上でももっと優れたイヤホンがあるのに、この機種を買う必要はほとんどありません。
ただ顔に張り付くくらいの距離で前傾して気色悪い位置で聞こえる女声ボーカルが好きなら、一考の価値はあるでしょう。私は勘弁ですね。
音質的な特徴
美点
- きれいで艶やかに聞こえる中域
- 華やかで張り出して聞こえる女声ボーカル
- まともな低域
- 原音忠実性が高い
- 自然な質感
欠点
- 不自然な定位
- 窮屈でうるさい中域
- 気色の悪い倍音
- 高域の拡張性に欠ける
- 狭い音場
艶やかできれい
華やかなサウンド
原音忠実性が高い
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは-0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Clariar i640
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Clariar i640
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Clariar i640
総評
奇妙なことですが、日本の新規参入メーカーほど無駄に高い値段で変な音のイヤホンを出そうとする傾向にあるようです。国産で値段が高いというだけで消費者は品質が高いと錯覚する傾向があるので、心理的効果を狙っているんでしょう。音質からはよくわからないですが、あるいは何か特別な自信があるのかもしれませんね。
しかし、自信があるのは結構ですが、多くの中華イヤホンブランドのように、まず堅実に2万円くらいの機種で市場の反応を見つつ、丁寧な音作りをしていくべきでしょう。なにかよくわからない根拠があるのかもしれませんが、いきなり10万円以上の機種を出す神経がよくわかりません。箔付けでしょうか?とりあえず金をむしり取ろうというような製品づくりは個人的に大変不快です。もちろん音が良ければ話は別ですが、個人的にはこれよりTRN VX Proのほうがはるかに聴き心地がよく、聴きごたえもありますね。
そして今回わかったことは、VX Proのように中域が薄っぺらくて高域がシャカシャカしている音よりも、i640のように中域でごちゃごちゃしている音のほうが、はるかに不快だということです。
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