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レビュー趣旨
このシリーズでは、Antelope Audio Amariと様々なヘッドホンやイヤホンをつなぎ、日本ファルコムのサウンドをレコーディング用のHATSから録音して実際に聴き比べてもらいながら、各音響機器の特徴を解説します。
今回は個人的に愛用している中華イヤホン3機種を紹介したいと思います。
最初にそれぞれの機種を簡単に紹介します。
今回聴き比べる中華イヤホン3機種
FiiO FH3
FiiO FH3はボーカルフォーカスの良いフラットに近いサウンドを実現しており、バランスの良いモニターサウンドを求めている人には有力な選択肢です。
パッケージングや本体のビルドクオリティ、付属品も値段を考えるととても満足できるレベルで、この価格帯ではかなり有力な選択肢になるはずです。
全体的にバランスが良く、品質もよいため、2万円以下では文句なく定番と言える機種です。
海外レビュアーからも評価が高く、ネット上でも評判の良い機種です。基本的に悪い噂を聞きません。昨年最もヒットした中華イヤホンの一つです。
Tri Starsea
Tri Audio Starseaは価格を考えると非常に完成度の高い中華イヤホンです。
Triはまだまだオーディオファンの間では広く知れ渡っているメーカーとは言えないかもしれませんが、Starseaは素晴らしい出来です。
それは完全にFiiO FH3と競合します。より風通しが良く、音場の広さはFiiO FH3を凌駕し、また音の質感的なナチュラルさでも、Tri Starseaのほうがより優れて感じられる可能性が高いです。
デザイン的にもより万人受けするように思われますし、ビルドクオリティやパッケージにも不足がありません。
独自の音質変更スイッチ機能は効果は大きくありませんが、こだわり派には魅力的なポイントです。
Tri Audioは一部で非常に人気の高いブランドで、ビルドクオリティとチューニングに定評があり、ドライバー構成でも先進的な技術を多く導入している革新的なメーカーとして知られています。このStarseaも非常によくできており、音質/ビルドクオリティともに優秀で、とくに音場を重視する場合、この価格帯では最も魅力的な機種の一つになります。
SeeAudio Yume
SeeAudio Yumeは音質バランスが良く、鮮明感は高いのに調和的で、どこか人間的なサウンドを聴かせる魅力的な機種です。
深い低域と拡張性に優れた高域を持ち、艶やかなボーカルを甘い雰囲気で豊かに聴かせる独特のサウンドに、もしかすると強く魅了されてしまうかもしれません。
実際私もその優れた音楽性の高いサウンドをとても気に入っており、レギュラーメンバーとして使っています。
パッケージやビルドクオリティの点でも優れた機種で、不満は出ないと思いますが、FiiO FH3やTri Starseaといったライバル機種と比べると、バランスは最も良いですが、クリア感や音場の広さで少し劣るように思うかもしれません。
最新のハーマンターゲットカーブを意識して、よく調整されている最新機種です。SeeAudioは2018年に設立されたばかりの新しいブランドで、無名に近いですが、この2月に日本進出も果たす予定で、今後急速に成長する可能性が高いです。Yumeは中国国内で大変な人気を博したANOUのインターナショナル版で、多くの海外レビュアーがすでに高い評価のレビューを書いており、現在進行形でオーディオファンの間にその人気が広がりつつあります。なお、日本限定版のSeeAudio ANOUはYumeとは異なる構成・音質になるようです。
聴き比べてみましょう!
というわけで、早速それぞれの中華イヤホンを聴き比べてみましょう。録音音源を用意しました。
録音音源で使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
今回聴き比べる3機種はどれもフラットないしニュートラル系と言えるイヤホンなので、中域の印象は比較的似ているように思うでしょう。
まずストリングスの音を聞いてみると、特徴的なのがFiiO FH3です。FiiO FH3のストリングスはほかの2機種よりエッジ感が強く、ギラツキ感もやや強めで、アグレッシブなところがあります。そのため高域の濃さの点では最もFiiO FH3が優れており、もっともはっきり高域の存在感を感じさせてくれると思うかもしれません。
そのFiiO FH3のストリングスに比べると、Tri Starseaのストリングスはもう少し細身で、より高いところまでスラッと伸びているサウンドになっているのがわかると思います。FiiO FH3の高域がわりと押し出し感が強いのに対し、Tri Starseaの高域はのびやかで、ストリングスやシンセの楽器音の高さにより差が感じられ、ストリングスが頭一つ抜けているように聞こえるでしょう。また音の輝度が高く、粒立ち感がより細かいように聞こえるかもしれません。印象的には全体的によりスリムに聞こえますね。
SeeAudio Yumeはその名が示す通り、ほかの機種に比べると響きが豊かで、付帯音も少し多く、より幻想的に聞こえます。最初はほとんど違いがないように思うかもしれませんが、聞き慣れてくると音の輪郭感がより柔らかで、質感的にもより滑らかなサウンドなのがわかってくるでしょう。中域にふんわりとした甘みがあり、色気が感じられます。音楽にノスタルジックな雰囲気を重視する場合、Yumeはとても魅力的な選択肢です。
今回聴き比べた3機種はいずれも1DD+2BAのトライハイブリッド構成で、音質的なバランスもよく、低域はいずれも深さを重視したサウンドで中域が広く聞こえるという共通点があります。しかし、それぞれのサウンドには個性があり、最初の印象ではほとんど違いがないように思えても、よく聞き比べてみるとそれぞれの個性はだいぶ異なるということがわかってくるでしょう。こういう細かなフレーバーの違いが分かってくると、俄然オーディオは楽しくなってきます。
以下におまけの比較音源を掲載します。
まとめ
1万円台から2万円台にかけては中華イヤホンでもとくに魅力的な製品の多い価格帯です。今回はこの価格帯でわりと定番とされている機種を取り上げてみました。気に入りそうな機種はありましたか?私は目下のところ、Yumeに夢中です。それぞれ個性的で魅力のあるところが伝われば、幸いです。どうぞ、楽しいオーディオライフをお過ごしください!
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