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Cayin Fantasy (YD01)の概要
こんな人におすすめ
- 繊細でディテール感のあるサウンドが好き
- クリアなサウンドが好き
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~40kHz
- インピーダンス:37Ω
- 感度:108dB/mW
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
- 価格帯:50000円~100000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:8.5/10.0
- 中域:8.5/10.0
- 低域:8.5/10.0
- 歪みの少なさ:9.5/10.0
長所
- 繊細でマイクロディテールに優れる
- フラットなモニターサウンド
- 解像感に優れる
- 高い明瞭感
- クリアなサウンド
- 良好なディテール感
- モニタースピーカーのような低域
- 聴き心地が安定している
短所
- 薄い中域
- シャカシャカうるさいシェイカーサウンド
- 充実感に欠ける
- 深みに欠ける
- 拡張性で物足りない
- 平凡なパッケージ
Cayin Fantasy (YD01)の特徴
デュアルキャビティダイナミックドライバーユニット
通常のダイナミックドライバーはシングルキャビティですが、Fantasy Cayinでは10.3mmの大型デュアルキャビティを採用しています。この2つ目のキャビティは、ドライバー内部の空気圧を管理し、振動板コイルの機敏な動作を可能にし、優れたサウンドパフォーマンスを実現します。
絶妙なステンレス鋼のイヤーシェル
Cayin Fantasyは、高級感のあるエレガントなデザインのイヤーキャビティを採用しています。高品質の316Lステンレス素材を高精度な技術で使用し、プレミアムでリッチな仕上がりになっています。
低電力要件、軽快な駆動性
Cayin Fantasyは、37Ωの低インピーダンスと108dBの高感度を実現しています。スマートフォンでも簡単に電源を取ることができますが、最高の音楽品質を得るためにはハイレゾプレーヤーの使用をお勧めします。
高品質ハイブリッドケーブル
紹介動画(ヘッドホン祭)
パッケージ(7.5)
パッケージはダンボール製です。悪くはありませんが、価格を考えるともう少し豪華でも良い気がします。
パッケージ内容
付属品は価格を考えると標準か少し物足りません。パッケージには以下のものが含まれています。
- イヤホン本体
- 12ペアのシリコンイヤーピース
- クリーニングツール
- キャリイングポーチ
- ユーザーマニュアル
ビルドクオリティ(8.0)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(8.5)
耳への収まりは比較的良好です。装着感は良いでしょう。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSとプロ用測定アナライザーソフトを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性(自由音場補正済み)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
Cayin Fantasyは再生機器の出力インピーダンスはほとんど受けないようです。スマートフォンで鳴らしてもほとんど不足感はないでしょう。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤピの中で、バランスタイプのLサイズを使ってレビューします。
Cayin Fantasyは音響設計上中高域の印象度を重視しているようです。たしかにこういうサウンドは第一印象でよく聞こえる傾向があるので、店頭試聴などで一定の人気を得るかもしれません。繊細で透明度が感じられやすい、みずみずしい雰囲気があり、歪みも少なくきれいな音に聞こえます。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.5)
- 原音忠実度:S+
- 臨場感:B
- 深さ:B+
- 重み:B+
- 太さ:B+
- 存在感:B+
低域は比較的フラットなチューニングをされているようですが、Cayin YD01ではほとんど重視されていません。
階層性は悪くありませんが、深さは平凡で拡張性に欠ける低域です。少なくともベースヘッドにとって10万円を出してまでこのイヤホンを買う価値はここには全く無いでしょう。
低域は引き締まって聞こえますが、底が浅く、重厚感の点では少し物足りません。ベースは明るく、音楽の中では従属的で、重厚なロックでも主導権を握れません。ドラムキックもなんだかランブルが薄く、臨場感に欠けますね。
単純に深さが足りず、黒さを出すことができず、低域が音楽全体のコントラストの基点になることができていません。
高級ドライバーを使っていることがわかる、低歪でクリアな低域ですが、広がりに欠け、貧弱ですね。
YB04の広がりのある、熱気が充満するような豊かな低域を知った後ならなおさらです。コンセプトが違うのかもしれませんが、この面白みのない低域には正直がっかりですね。ただしモニター的な低域が好きなら、おすすめできます。
中域(8.5)
- 原音忠実度:S-
- 厚み:B+
- 明るさ:B
- 硬さ:B
- 存在感:B
Cayinは豊かな中域を重視してるのかと思ってましたが、どうも違うようです。少し薄っぺらい中域ですね。
中域はニュートラルを意識しており、全体構造としては少し前傾的です。中域の上あたりが少し押し出し感が強いため、最前列ではありませんが、比較的前の方にいます。
印象的にはTHD的にも周波数特性的にも充実感が足りない感じがあり、薄っぺらくて印象に残りにくい中域ですね。バランスはわりと良いですが、とくに面白いところはありません。
ボーカルは細く聞こえやすく、実体感に欠けます。子音が少し強めですが、尖りや刺さりはうまく抑えられているようです。ボーカルよりはアコースティックギターやピアノのほうが存在感が感じられるくらいです。
高域(8.5)
- 原音忠実度:C-
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:B+
高域はマイクロディテール重視でチューニングされており、かなり粒立ちが細かく聞こえます。それでいて、刺さり感はうまく抑えられているので、耳に痛い感じはありません。聴き心地への配慮はさすがCayinといったところですが、だからといって面白いかどうかとは別問題です。
高域はハイハットがマラカスのように聞こえる、いわゆるシェイカーサウンド系統の音で、基本的にシャカシャカしています。低域がもう少し存在感があれば、コントラストがあって引き締まった可能性がありますが、YD01の現状では全体的に明るい音場、充実感に欠ける音楽表現に加え、さらにシャカシャカした音を聞かされるので、どうも表現が薄っぺらく聞こえますね。音楽全体が白化している印象を受けます。
空気感は少し物足りないので、曲によっては抜けが悪くてガシャガシャとがさつに音を聞かせる傾向があります。シンバルクラッシュが派手なのが好きな人、アコースティックギターが繊細で金細工のように聞こえるのが好きな人には向きますが、私は好みじゃありません。弾き語りを聴くには悪くないかもしれませんが、全体的にチャラい音で、ガシャガシャして聞こえやすいのが気になります。
拡張性の点でも物足りないので、これに10万円を出す必要はないでしょう。
定位/質感
- 質感の正確性:S
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvo?ak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
中域の質感はかなり自然でみずみずしく聞こえます。中域の定位の正確性も高く、楽器の配置にほとんど違和感はありません。
フルオケは比較的中域の定位と質感が正確でクリアに聞こえますが、全体的に重厚感がなく、妙にツルツルして聞こえます。バイオリンのエッジがやや強調されて聞こえ、少しヒステリックに聞こえやすい傾向もあります。全体的に表現がデジタルですね。荘厳さに欠けます。
雅楽も明るく軽っぽい感じで、和音はきれいに聞こえますが、派手です。艶やかな印象で聞こえるので、雅な雰囲気はかなり感じられますが、篳篥の響きが甲高く、屁のように下品に聞こえやすく、少しうるさげなのが気になります。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音場:B
- クリア感:A+
中高域が押し出されて聞こえる分、少し中域で奥行きを感じやすいところがありますが、全体的には平坦です。深さと高さも平凡です。
クリア感はかなり優秀です。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:C+
- 個人的な好み:C
Cayin YD01のサウンドは全体的にニュートラルを意識したサウンドを持っています。マイクロディテール重視で音楽を繊細に聴きたい場合は悪くないかもしれません。
final A8000みたいな音が好きなら、気に入るかも知れませんね。音質傾向がかなり似ています。それでいてA8000よりはだいぶお得です。ドライバーの品質も優れているようですし、A8000よりコスパは確実に良さそうですね。それでも個人的には割高に思えますが。
私個人の感想としては10万円でこれを買うよりは、YB04を買い、残りで1万円クラスの良機種を2,3本買うのをおすすめします。
音質的な特徴
美点
- 繊細でマイクロディテールに優れる
- フラットなモニターサウンド
- 解像感に優れる
- 高い明瞭感
- クリアなサウンド
- 良好なディテール感
- モニタースピーカーのような低域
- 聴き心地が安定している
欠点
- 薄い中域
- シャカシャカうるさいシェイカーサウンド
- 充実感に欠ける
- 深みに欠ける
- 拡張性で物足りない
繊細な粒立ち感
フラットに近いサウンド
クリア感に優れる
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、使用イヤーピースは標準イヤーピース(バランス)のSサイズです。
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
巨イナルチカラ
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
ユルギナイツヨサ
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- Cayin Fantasy
総評
Cayin Fantasyは中高域のディテール感を重視した比較的フラットに近いサウンドを持っており、粒の細かなシンバルクラッシュや金細工のように繊細なアコースティックギターを好むリスナーを楽しませてくれます。パッケージクオリティなどを考えると少し強気な価格設定ですが、final A8000と同等クラスで類似したサウンドを提供するため、A8000を買おうと思ったら、念のためその前に試聴してみると良いでしょう。少し安上がりに済むかもしれません。
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