免責事項
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beyerdynamic T5 3rd Generationの概要
こんな人におすすめ
- ゆったりしたサウンドが好き
- 音場の奥行き感重視
- 落ち着いた雰囲気で音楽を楽しみたい
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~50kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:100dB/1mW
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:8.5/10.0
- 高域:7.0/10.0
- 中域:7.5/10.0
- 低域:8.0/10.0
- 歪みの少なさ:9.0/10.0
長所
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- 高いグルーヴ感
- 静寂感がある
- 温かみのあるサウンド
- ビルドクオリティ
短所
- 音像の一貫性に欠ける
- 派手さに欠ける
- 拡張性に欠ける
beyerdynamic T5 3rd Generationの特徴
以下公式サイトからの引用です。
『T5 3rd Generation』は、 “Holistic Design” (=全体的、完全体のデザイン)というコンセプトを基に、T5の音響特性そのものへの影響を左右する全パーツおよび、すべての素材の見直しが行われました。
その結果、エレガントな見た目だけでなく、強化されたサウンドパフォーマンスや、耐久性の向上など、総合的に考え抜かれたラグジュアリーな使い心地へとユーザーを導きます。
紹介動画
公式プロモーション動画
パッケージ(8.5)
beyerdynamic T5 3rd Editionのパッケージは全体として豪華で、価格に十分見合っています。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- ケーブル
- ヘッドホンケース
ビルドクオリティ(8.5)
本体のビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(8.5)
装着感は快適です。密閉型なので、夏場は少し蒸れるかもしれません。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)を用い、カプラー専用のイヤーモデルを使用してのREWによる測定値です。イヤーモデルは左耳側しかないので、測定値は左側しか測定しておりません。両耳のデータを確認したい場合は有料記事を参照してください。
測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSとプロ用測定アナライザーソフトを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
周波数特性(自由音場補正済み)
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
Sbeyerdynamic T5 3rd Generationにアンプ側の出力インピーダンスの影響はほとんどありません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
beyerdynamic T5 3rd Generationは中低域から中域にフォーカスされるサウンドを持っており、そのサウンドはフラット傾向でマイルドなU字型といった具合になっています。
密閉型でありながら、音場は広く感じられるでしょう。中域は響き豊かに、広く奥行きがあるように聞こえるため、小編成JAZZや室内楽をゆったり楽しむには良いでしょう。ドイツのオーディオメーカーに多い、余裕のある雄大なサウンドで、SENNHEISERの上位機種のようなサウンドが好きなら、T5 3rdもきっと気に入るはずです。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(8.0)
- 原音忠実度:S
- 臨場感:A-
- 深さ:B+
- 重み:A-
- 太さ:A
- 存在感:A-
低域は全体として原音忠実度は高いですが、細かなポイントを確認していくと、表現はそれほど自然ではありません。
中低域に妙な山があり、それが重低域を覆い隠しており、深いところは聞こえづらい傾向があります。
この中低域の盛り上がりは中域のステージングに貢献しており、立体的な音場感を作り出してもいますし、ドラムやコントラバスを少し太く聴かせ、パンチに力感をもたせ、グルーヴ感を高めてもいますが、より深いベースラインのランブルやサンプにとっては邪魔になっています。
JAZZや室内楽には悪くないと思う人はいるかも知れませんが、ロックやEDMを楽しむにはこの低域は浅すぎ、音楽に引き締まり感が出ません。
同様に、私がベースヘッドにT5 3rdをおすすめすることはないでしょう。
中域(7.5)
- 原音忠実度:B+
- 厚み:B+
- 明るさ:A-
- 硬さ:B
- 存在感:B
中域は奥行き感を強調する構造になっています。
ボーカルはボディが豊かで太く暖かに聞こえますが、厚みに欠けるので、意外と表現に深みがないですね。また子音が弱く、快活さに欠ける傾向があり、色味が明るい割に表現が陰気です。落ち着いた曲には雰囲気がよく合いますが、たとえばオーイシマサヨシ「神或アルゴリズム (feat.りりあ。)」のような曲を聞いても、楽器音のアタックは弱く、ボーカルは抑揚に欠け、ちっとも楽しくありません。一方で、てこぴかり「ふたり少女」のような穏やかで暖かなゆったりした曲とは相性がいいですね。
高域(7.0)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B-
- 鋭さ:B-
- 脆さ:C+
- 荒さ:D-
- 繊細さ:D
- 存在感:C
密閉型ヘッドホンにはありがちですが、高域は拡張性が不足しています。
Cristopher Tin「Baba Yetu」を聴いても、ヘッドルームは近く、せっかく奥行き感があるのに、高さはいまいちですね。
密閉型ではありませんが、高域の空気感にこだわる場合、私は半額くらいで買えるUNCOMMON PDH-1をおすすめします。PDH-1のほうがはるかにサウンドバランスも良いですね。
定位/質感
- 質感の正確性:C
- 定位の正確性:B-
- オーケストラのテクスチャ:B-
- 雅楽のテクスチャ:B
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
ゆったりした雰囲気の音楽が好きなら、T5 3rdは悪くありません。私?これでクラシックを聴くことはないですね。
中域に独特の奥行きと響きがあり、静寂感がある表現で魅力的に思う可能性がありますが、定位はやや不自然です。奥行きのゆったりした雰囲気があるので雄大さは感じられるかもしれませんが、音に縦軸の伸びしろがないので、壮大さはありませんね。スケール感に欠けます。フルオーケストラは楽しくないでしょう。室内楽には悪くありません。
より室内楽に近いと言える雅楽はフルオーケストラほど悪くはありませんが、奥行きが強調されすぎているのが気になりますね。音の伸びやかさと余韻の響きがいまいちなので、音場に高さが感じられません。龍笛が妙に力なく、遠くに聞こえる感じがするのも気になりますね。
音場/クリア感
- 音場:B+
- クリア感:A
奥行きの分だけ音場は広く聞こえるかもしれませんが、高さと深さに欠けます。
総合的なクリア感は価格なりに優秀です。
音質総評
- 原音忠実度:B
- おすすめ度:B
- 個人的な好み:B-
beyerdynamic T5 3rd Editionは密閉型らしからぬ音場の広さを実現しようとしたようで、それは半ば達成されています。
個人的にはこれに10万近くのお金を払う価値は全く感じませんが、ゆったりした音楽が好きな層には悪くないでしょう。小編成の室内JAZZ、室内楽を静かな雰囲気で楽しみたい場合、プライベートな音楽室のようなサウンドを楽しむことができます。
音質的な特徴
美点
- 聴き心地が良いウォームサウンド
- 中域への適切なフォーカス
- 奥行き感のある音場
- 高いグルーヴ感
- 静寂感がある
- 温かみのあるサウンド
欠点
- 音像の一貫性に欠ける
- 派手さに欠ける
- 拡張性に欠ける
聴き心地が良い
室内楽的な音響
温かみがある
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
LACRIMOSA OF DANA -Opening Ver.-
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
巨イナルチカラ
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
ユルギナイツヨサ
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
Intense Chase
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T5 3rd
総評
私が個人的にbeyerdynamicを好んでいることは事実ですが、T5 3rd Editionはとくにほしいとは思わない機種です。個人的におすすめする気もありません。
ゆったりした響きの豊かな中域表現が好きなら悪くありませんが、音に厚みがないので充実感は思ったよりイマイチです。ボーカルもなんだか陰気で活力に欠け、ほの暗さがあり、穏やかで奥ゆかしいと言えるかもしれませんが、ほとんどの曲で面白みに欠けます。ビルドクオリティとパッケージクオリティは価格に見合っていますが、10万円を握りしめてオーディオショップに行くなら、これより良いヘッドホンはざらにあります。あえてこれを掴む必要はほとんどないでしょう。
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