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beyerdynamic T1 3rd Generationの概要
こんな人におすすめ
- ゆったりしたサウンドが好き
- 音場の奥行き感重視
- 落ち着いた雰囲気で音楽を楽しみたい
基本スペック
- 周波数特性:5Hz~50kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:100dB
- 価格帯:100000円~200000円
- パッケージ:8.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:8.0/10.0
- 中域:8.0/10.0
- 低域:7.5/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
長所
- 奥行きがあり、ゆったりとした音場優秀な解像度
- 静寂感がある
- 上品でシック
- 静的で落ち着いた音楽
- 温かみのあるサウンド
- ビルドクオリティ
短所
- ダイナミズムに欠ける
- 人によっては鈍くぼんやりして聞こえる
- 質感と定位が正確ではない
- 音像の一貫性に欠ける
- 暗く、眠たい音
- 拡張性で物足りない
- 派手さに欠ける
beyerdynamic T1 3rd Generationの特徴
「T1 3rd Generation」は、 “Holistic Design” (=全体的、完全体のデザイン)というコンセプトを基に、T1の音響特性そのものへの影響を左右する全パーツおよび、すべての素材の見直しが行われました。
その結果、エレガントな見た目だけでなく、強化されたサウンドパフォーマンスや、耐久性の向上など、総合的に考え抜かれたラグジュアリーな使い心地へとユーザーを導きます。
- 優れた音場表現を実現する開放型
- 細部までこだわった高品位パーツ
- 改良された高音質かつニュートラルなサウンドパフォーマンス
- ポータブルデバイスに合わせた32Ω仕様
- 快適な装着感
- 熟練した技術を蓄えるドイツ工場によるハンドメイド
改良された高音質かつニュートラルなサウンドパフォーマンス
beyerdynamicの代名詞とも言える独自開発の「テスラドライバー」は、電気信号だけでは表現出来なかった高い解像度、広いダイナミックレンジ、歪みの低減を1テスラ(1万ガウス)を超える強力な磁力によって実現するbeyerdynamic独自のドライバーテクノロジーです。もはやこのドライバーなしではT 1を語れないほど、最も重要な部分となります。
『T1 3rd Generation』に使われるテスラドライバーは、一つ一つ計測され、数値がマッチしたペアでヘッドホンに搭載されます。新たな第3世代のテスラドライバーは、従来の優れた音場表現に高解像度で透明感あふれるシグネチャーサウンドを基盤として残しつつも、一音一音をきめ細やかに再現するチューニングが施されております。また、穏やかにブーストさせた低音は、広々とした音場表現を助長することで、より温かみのあるサウンドを実現します。
優れた音場表現を実現する開放型
『T1 3rd Generation』は、従来のセミオープン型から開放型へ変更され、ハウジングパネルの精巧なホールパターンが、テスラ技術による高解像度な再生能力と相まって、クリアで清々しい音場表現を導き出します。さらに、ドライバーを傾けて配置することで広々とした臨場感溢れるサウンドパフォーマンスを引き出し、まるでコンサートの生演奏を聴いているかのような立体的なリスニング体験をお届けします。
ポータブルデバイスに合わせた32Ω仕様
インピーダンスは従来の600Ω仕様から32Ω仕様へ。低い抵抗値でヘッドホンのパフォーマンスを発揮させることが可能になりました。これにより、ポータブルデバイスでの使用においてもヘッドホンアンプを使わずに十分な音量を確保することができます。
細部までこだわった高品位パーツを使用
『T1 3rd Generation』の両出し着脱可能な専用ケーブルは、高純度無酸素銅 7N OCC 線を使用し、音響伝送における微細な信号をロスなく伝送します。また、被膜には外部ノイズに強く、柔軟性に優れる上質なテキスタイルコーティング(繊維被膜)を採用しています。
ヘッドホン本体の各パーツは、耐久性に優れる高品位な素材を使用。アーム部分にはつや消しアルマイト加工アルミニウム、複雑な製造工程を経たハウジングパネルは、漆塗り加工ステンレス鋼をベースに、エッチング加工による精巧なホールパターンが施されています。また、ヘッドバンドには高級人工皮革のAlcantara®(アルカンターラ)がディテールとして使用されています。
様々なケーブルのニーズにこたえる着脱構造
本機種のケーブル着脱構造により、ケーブルを簡単に取り換えることが可能です。付属ケーブルと同様の高純度無酸素銅 7N OCC線を使用した別売りオプションの4ピンXLRバランス接続対応ケーブル、もしくは2.5mm 4極バランス接続対応ケーブルと合わせてお使いいただけます。
快適な装着感
『T1 3rd Generation』の交換可能なイヤーパッドは、中身に柔らかな形状記憶フォームを使用し、外皮には通気性の良いソフトベロアを採用。クッションには形状記憶フォームを使用しており、熱と圧力によってユーザーの頭部・耳の形状に順応することで程よい密着感と遮音性を実現し、長時間のリスニングでも軽やかで快適な装着感を実現します。
熟練した技術を蓄えるドイツ工場でハンドメイド
beyerdynamicは、1924年から続くドイツの老舗ヘッドホンメーカーです。『T1 3rd Generation』はドイツ南西部にあるハイルブロンの自社工場で企画開発され、熟練したスキルを持つ職人により1つ1つ丁寧に細部までハンドメイドされています。
公式プロモーション動画
パッケージ(8.5)
beyerdynamic T1 3rd Editionのパッケージは全体として豪華で、価格に十分見合っています。
パッケージ内容
付属品に不足はありません。パッケージには以下のものが含まれています。
- ヘッドホン本体
- キャリイングケース
- ケーブル
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の標準を満たしています。
装着感(9.0)
装着感は比較的良好です。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- センサアンプ:小野測器 SR-2200
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。特に注目すべき要素だけ簡単に説明します。
- Sibilance/Pierceは刺さり具合に影響するので高域に敏感な人は数値が低いものを選んだほうが良いでしょう。
- Fullness/Mudは中域を豊かに感じさせる要素ですが、中域が濁るのが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
- Boom/Punchは低域の存在感、量感に大きく影響するので、低域のうるさい感じが苦手な人は数値が低い方が良いでしょう。
制動
beyerdynamic T1 3rdはアンプ側の出力インピーダンスが十分に高い場合、低域にわずかな影響があるようです。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
beyerdynamic T1 3rdは充実感の高い、中域充実型の高級感のあるサウンドを鳴らします。全体的に音場が広く感じられますが、中域は暗めで静寂感重視の味付けになっており、クランチ感やエッジ感に欠けるところがあるので、音楽の構築感で少し物足りない印象を受けるでしょう。鮮明感は高めで、全体の解像度も価格の標準は満たしていると思われるため、モニター的ではありませんが、解像感の点で不足を感じることはあまりないと思います。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.5)
- 原音忠実度:C
- 臨場感:C-
- 深さ:B
- 重み:B+
- 太さ:A-
- 存在感:B
低域は太さや厚みが重視されており、重厚感がありますが、深さは物足りません。
T1 3rdは2ndまでと異なり、セミオープン型ではなく、完全なオープン型となっています。そのため、低域に関しては良質なサウンドを期待できません。一般に深さやTHD、明瞭度は少し物足りないでしょう。腰高気味の浅い低域で、パンチは強く聞こえやすく、力感は豊かですが、引き締まりには欠け、レイヤリングに優れていません。
中域(8.0)
- 原音忠実度:B
- 厚み:A
- 明るさ:A
- 硬さ:B
- 存在感:B
T1 3rdの中域は奥行きを重視してチューニングされているようです。
ボーカルは比較的前面におり、軸があって芯に太さが感じられますが、子音はぼんやりしており、母音重視で聞こえやすい傾向があります。そのため、声色は快活さに欠け、落ち着いた上品な大人びた成熟したものとなり、しっとりとした深みがあります。楽器音も静かなので、ボーカルを穏やかな雰囲気でじっくり聞き込みたいなら、なかなか悪くない選択肢でしょう。
一方で構築感の不足はギターやスネアの音をおとなしく丸みを帯びて聞かせるため、一般にロックはキレが悪く、エレキベースも締りが悪いため、全体的にもさもさぼんやりして鈍重になります。
高域(8.0)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B-
- 鋭さ:B-
- 脆さ:B
- 荒さ:D+
- 繊細さ:C
- 存在感:C+
高域は低域と釣り合っているとは言えず、そのために音楽の全体はやや暗い雰囲気で聞こえます。
鮮明感は高く、中域は広く聞こえますが、高域の高さは実際にはあまり高く抜けていないため、音楽の全体は少し閉じて聞こえます。開放型の割に空気感が足りないので、あまりスッキリしない音ですが、その分中域は濃厚になるというプラス面もあります。
定位/質感
- 質感の正確性:C-
- 定位の正確性:C+
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:A-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
全体的にゆったりしたリスニングモデルです。奥行きが強調されており、ホールで聞くような雰囲気を作り出していますが、原音忠実的とはあまり言えないため、ガチのオーディオマニア向きというよりは広い音場感のあるスケールのある雰囲気を楽しむヘッドホンです。
フルオケは音場が広く見晴らしよく聞こえ、静寂感もあり、充実度も高いので高級感を感じられますが、空間が強調されすぎており、密度感でいまいちなところがあるので、総合すると少しスカスカで暗い、上品すぎる音です。高級機種っぽいとは言えますが、低域方向でも高域方向でもレンジ感に欠けるので、スケールが強調されている割に迫力も実在感もありません。
雅楽は各パートが分離しすぎる傾向があります。広く静寂感のある空間に穏やかにたなびく金色の雲のような和音が美しいですね。個人的には好みの音なのでやや評価は甘くなっているかもしれません。癖が強い音であることは事実なので、人によっては全く好みに合わないでしょう。
音場/クリア感
- 音場:A-
- クリア感:B+
- イメージング:B+
- 高域:A
- 中域:B+
- 低域:B-
beyerdynamic T1 3rdは奥行き重視の広い音場を持っていますが、低域と高域の拡張性は開放型の中で優れていると言うほどではありません。
総合的なクリア感は価格の標準は満たしていると思われます。
イメージングは価格なりかわずかに良いですね。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:B+
- 個人的な好み:A+
beyerdynamic T1 3rdは奥行きを重視した静寂感の感じられるゆったりした空間を持つリスニングヘッドホンです。
高級機種らしい、広がりと充実感のあるサウンドを聞かせますが、ニュートラルサウンドではありません。
バラードやクラシック、JAZZを少し暗い、落ち着いた雰囲気で静かに上品に聞きたいという人にはかなり良いでしょう。人によっては鈍く、籠もったように聞こえやすいかもしれませんが。
音質的な特徴
美点
- 奥行きがあり、ゆったりとした音場
- 静寂感がある
- 上品でシック
- 静的で落ち着いた音楽
- 温かみのあるサウンド
欠点
- ダイナミズムに欠ける
- 人によっては鈍くぼんやりして聞こえる
- 質感と定位が正確ではない
- 音像の一貫性に欠ける
- 暗く、眠たい音
- 拡張性で物足りない
- 派手さに欠ける
奥行きがあり、ゆったりとした音場
上品でシック
静的で落ち着いた音楽
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + Topping L50でレコーディングにAntelope Audio Amariを用いています。
¥369,600(税込)
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T1 3rd
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T1 3rd
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- beyerdynamic T1 3rd
総評
beyerdynamic T1 3rdは高級機種らしい、音場重視で静寂感のある、上品な大人の音楽を聞かせるヘッドホンです。ビルドクオリティは十分に価格に見合っており、サウンドは癖が強いものの、好みに合うなら、支払ったコストを後悔させることはないでしょう。ゆったりした雰囲気で音楽を鑑賞したい人向きで、しっかり音を聞くのではなく、少し穏やかで遠い音楽を聞く形になるため、BGMとして音楽を耳元に流したいというようなニーズにも応えてくれるでしょう。
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