免責事項
- このレビューは「私的な購入品」または「対価を払ってレンタルした商品」に基づいて書かれています。
- これを掲載することによる原稿料のような報酬または対価は一切受け取っておらず、個人的な試験での測定データや個人的見解に基づいて誠実に評価したものです。
- 当サイトのプライバシーポリシーをご確認ください。
- 「audio-sound @ premium」はamazon.co.jpおよびamazon.comほか通販サイトの取扱商品を宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣言プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラム等の参加者です。
Behringer BH770の概要
こんな人におすすめ
- 明るい音が好き
- 高精細で分析的な音が好き
- 装着感重視
基本スペック
- 再生周波数:20Hz-20000Hz
- インピーダンス:80Ω
- 感度:96dB
- 価格帯:3000円~5000円
- パッケージ:7.5/10.0
- ビルドクオリティ:8.0/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:8.0/10.0
- 中域:7.0/10.0
- 低域:7.0/10.0
- 歪みの少なさ:7.5/10.0
長所
- 輝度が高い
- 繊細で高精細なサウンド
- 分析的
- 明るい音
- 優れた高域拡張性
- 良好な装着感
短所
- 低域の深さで物足りない
- 不自然な定位感
- 不自然な質感
- 物足りない解像度
- 平面的で薄っぺらい皮相な音
Behringer BH770の特徴
BEHRINGER(ベリンガー)のプロ仕様、密閉型スタジオモニターヘッドホン
<特徴>
■プロ仕様の密閉型スタジオモニターヘッドホン
■53mm径のダイナミックドライバーを搭載し、伸びやかな低音と繊細な高音を実現
■非常に軽量で、長時間のスタジオ作業でも快適に使用可能
■広がりのあるサウンドステージングでスピーカーのような自然なモニタリングを実現
■オーバーイヤー型のハウジング、超ソフトなイヤーカップと調整可能なヘッドバンドを採用
■密閉型デザインにより、優れた遮音性で安定したリスニング環境を実現
■信頼性の高い無酸素銅の編組ケーブル、1/4インチ(6.3mm)アダプター付き
パッケージ(7.5)
パッケージは価格の標準を満たしています。紙製でエコですね。
パッケージ内容
- ヘッドホン本体
- 3.5mm→6.35mmアダプター
- 説明書
ビルドクオリティ(8.0)
ビルドクオリティは価格の水準を満たしています。
装着感(9.0)
装着感は良好です。装着感は手持ちのbeyerdynamic DT990 とほとんど変わらないですね。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- 小野測器 SR-2210 センサアンプ
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
Behringer BH770はアンプの出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回はFiiO M15につないでレビューしています。
Behringer BH770は高域を強調したサウンドシグネチャーを持っています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(7.0)
- 原音忠実度:B-
- 臨場感:D+
- 深さ:C+
- 重み:B-
- 太さ:B
- 存在感:C-
低域のモニター用としてはBH770はほとんど役に立ちません。エレキベースは薄っぺらく、ドラムキックもスコスコして重みに欠けて聞こえます。リズムは軽快に感じられますが、インパクトがありません。
低域をモニタリングしたい場合はTASCAM TH-06を使うか、イヤホンを使ったほうがいいでしょう。
中域(7.0)
- 原音忠実度:A
- 厚み:A-
- 明るさ:A+
- 硬さ:A-
- 存在感:B
BH770の中域は明るく詳細に聞こえますが、解像度が足りないので、奥行き感がなく、階調感の乏しい平べったい印象で聞こえます。
奥行きの感じられにくい平板な中域はもしかすると「フラットなサウンド」だと思わせるかもしれませんが、実際には中域上部で奥行きが強調されており、バイオリンや木管を聴けば軸がしっかり直立していないのがわかります。つまり、フラットな音ではありません。ただ単に音楽の立体感の再現が下手くそなだけです。
明るく硬めの音で中域の構築感は良好に再現されます。この点モニター的ですが、尖りは抑制されているため、輝度と明度が高い音のわりに耳にきつすぎる感じはありません。それでも高域は出すぎている水準にあるので、かなり耳に負担感を感じる音です。
高域(8.0)
- 原音忠実度:D
- 艶やかさ:B+
- 鋭さ:B
- 脆さ:A
- 荒さ:C+
- 繊細さ:B
- 存在感:C+
高域はかなり鮮明感を強調しているため、第一印象は良い音に思うかもしれません。私も繊細でディテールを細やかに再現する聴かせ方に最初はかなり魅力を感じました。
歯擦音がやや刺激的に聞こえやすく、チやジのような音がかなり尖りますが、サ行の刺さりはそれに比べると少ないように思います。それでも曲によってはきつい聞こえ方をすることがあります。
高域の抜けはわりと良好なので、オープン型のように思うかもしれません。
定位/質感
- 質感の正確性:C+
- 定位の正確性:D+
- オーケストラのテクスチャ:D-
- 雅楽のテクスチャ:D-
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
BH770でフルオーケストラを聴くのはお勧めしません。曲の立体感を再現する能力に欠けるので、なんか平面スクリーンから音を聞いているような面白みのない音がします。しかも高域で妙に敏感なので、クライマックスではバイオリンやシンバルが突然鋭い音になって聞こえてくるような情緒不安定さがあります。最初はその聞こえ方が繊細で美しいと思う可能性もありますが、長く聴いてみると、ただ「がさつ」なだけだということがわかってきて興ざめします。
雅楽もおすすめできません。篳篥がまっすぐ伸びないのですぐにだめだとわかります。和音も耳障りです。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B+
- クリア感:B
- イメージング:B-
- 高域:A-
- 中域:B
- 低域:C-
低域の深さは物足りません。中域は前面に出てきます。高域の高さは標準以上です。
クリア感は価格を考えると標準を満たしています。
解像度は平凡以下です。
音質総評
- 原音忠実度:A-
- おすすめ度:C
- 個人的な好み:C
この記事の最初の方で外国のYoutuberが「音はフラットに聞こえるが、聴いているうちに聴き疲れやすいのがわかって、使う気がしなくなった」というようなことを言ってる埋め込み動画を見たかもしれません。ここまでの私のレビューを読めば、彼の言っていたことがよくわかるという人もいるでしょう。私もこのYoutuberの言っていることはよくわかります。
BH770の第一印象は詳細に音が聞こえるので、悪くないように思いましたが、少し時間をかけて聴きこむと、すぐにそのチープなサウンドと聞き心地の悪さでこのヘッドホンを使う気が失せました。シンバルクラッシュだけは繊細に抜けもよく、爽快に聞かせてくれるので好きですね。
音質的な特徴
美点
- 輝度が高い
- 繊細で高精細なサウンド
- 分析的
- 明るい音
- 優れた高域拡張性
欠点
- 低域の深さで物足りない
- 不自然な定位感
- 不自然な質感
- 物足りない解像度
- 平面的で薄っぺらい皮相な音
輝度が高く高精細なサウンド
明るい音
優れた高域拡張性
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。
今回は当ブログが同じ価格帯で分析系モニターのリファレンスとしておすすめしているCLASSIC PRO CPH7000のレコーディングシグネチャーを付属します。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Behringer BH770
- CLASSIC PRO CPH7000
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Behringer BH770
- CLASSIC PRO CPH7000
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Behringer BH770
- CLASSIC PRO CPH7000
総評
低価格で分析能力に優れたモニターヘッドホンを探しているなら、Behringer BH770を候補に考えてもよいかもしれません。しかし、それは解像度で物足りず、全体的なスペックで価格の水準を満たしているとはいいがたいところがあります。
この価格帯でミキシングに使える分析的なモニターヘッドホンとしてはCLASSIC PRO CPH7000をおすすめします。
コメント