免責事項
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Audiosense DT300の概要
こんな人におすすめ
- たくさんアンプやDAPを持っているほどのオーディオ好き
- 1つのイヤホンでいろんな音を楽しみたい
- リケーブルで本当の音の変化を味わいたい
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~22kHz
- インピーダンス:11Ω
- 感度:106dB±3dB
- ケーブルコネクタ:MMCX
- 価格帯:10000円~20000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:10.0/10.0
- 低域:9.0/10.0
- 歪みの少なさ:6.5/10.0
長所
- 適切に駆動すれば良質なサウンドバランス
- 中域への適切なフォーカス
- 落ち着いて上品な雰囲気
- 充実感のあるサウンド
- 聴き心地が安定している
- ノスタルジックなサウンド
- ビルドクオリティ
短所
- 低いイメージング能力
- クリア感に欠ける
- 玄人向き
Audiosense DT300の特徴
Audiosenseはオーディオ界隈ではよく知られている名前です。世界中のオーディオファンは、マルチドライバーハイブリッドインイヤーモニターを愛していますが、 このブランドは、Knowles製バランスドアーマチュアドライバーユニットを使った美しいシェルデザインの高品質なIEMの製造能力で知られています。
- Knowles製トリプルBAユニットとmmcxによるリケーブル対応:Audiosense DT300は業界で最高水準の品質を持つことで知られるKnowles製のバランスド・アーマチュア・ドライバーユニットを採用しています。Audiosenseの卓越したサウンドエンジニアがそれを正確に駆動させる設計を組み込みました。またmmcxコネクタによって簡単にリケーブルができます。
- 医療グレードで肌に優しいレジンキャビティ:Audiosense DT300は3Dプリント技術で正確に造型された医療グレードのレジンシェルで構築されています。人間工学的知見に基づき、良好な装着性を実現するだけでなく、肌に優しいレジンシェルが快適な装着感を実現します。
- 音楽的かつバランスの取れたチューニング:AudiosenseはリスナーにDT300を楽しんでもらえるよう、ニュートラルでバランスの取れた全体像を維持しつつ、中域でより充実感が感じられ、リッチサウンドに聞こえるようにチューニングしました。Audiosenseのチューニング担当はDT300は多くの人にエキサイティングで趣深いサウンドを提供するだろうと述べています。
- ユニークで美しいデザイン:Audiosense DT300のユニットはすべてハンドメイドされたフェイスプレートを備えており、その造形はそれぞれのユニットに固有のものとなります。あなただけのために提供される美しいデザインをお楽しみください。
パッケージ開梱動画
パッケージ(8.0)
ビルドクオリティ(8.5)
外観のビルドクオリティは悪くありません。フェイスプレートも透明度が高く、きれいですね。
装着感(9.0)
耳への収まりは比較的良好です。装着感は良いでしょう。
音質
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- アナライザソフト①:TypeDSSF3-L
- アナライザソフト②:Room EQ Wizard
REW周波数特性
Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ)でのREWによる測定値です。測定値はHATSの測定結果と比較校正されていますが、HATSとプロ用測定アナライザーソフトを用いた当サイトの基準としている測定結果とは異なります。測定値は他サイト(主に海外レビューサイト)のレビューとの比較用に掲載しています。
当サイトのレファレンスの測定結果については有料記事を参照してください。
周波数特性(RAW)
今回の掲載グラフは特殊です。私が最適の出力インピーダンス設定だと思っている30Ω付近の周波数特性と0Ω時の周波数特性を掲載します。青が28Ω時、緑が0Ω時です。
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
周波数特性測定値から音質要素のステータスを抽出しました。
制動
一般に出力インピーダンスが0Ωに近いデジタルオーディオプレーヤーで駆動するのはAudiosense DT300の場合、おすすめしません。おそらく大抵のスマホで鳴らしたほうが良い音がすると感じられる可能性が高いです。駆動する場合は出力インピーダンス5Ω以上を目安に選ぶと良いでしょう。
測定値や詳細な解説は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回は標準イヤピの中で、黒傘のLサイズを使い、Antelope Audio Amariで出力インピーダンス27.9Ω設定で駆動してレビューします。
さて、これまで説明したようにAudiosense DT300は出力インピーダンスが0Ωに近いデジタルオーディオプレーヤーや高品質なアンプで駆動することは推奨されません。0Ω時の出力はウォームで滑らかですが、鮮明感に欠け、全体的に音が鈍く聞こえます。出力インピーダンスは5Ω以上の機種を選ぶことが推奨されます。当ブログでは測定値を元に評価スキームで詳しく判定した結果、DT300については30Ω前後の出力インピーダンスで駆動することを推奨します。
以下、27.9Ω時の評価値を掲載しますが、()内に0Ω時の評価値も付記します。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(9.0)
- 原音忠実度:A+(S+)
- 臨場感:A(A-)
- 深さ:A-(A-)
- 重み:B+(A-)
- 太さ:B(A-)
- 存在感:B+(A-)
27.9Ω駆動時のDT300の低域は重心が低く、拡張性に優れ、深みがあるので階層性に優れています。
27.9Ω駆動時はTHDもかなり高くなるために、低域は音像が少し曖昧ではっきりしませんが、広がり感があって音場をよく支えて充実感を生み出しているだけでなく、同じくぼんやりしている中域に対して目立ちすぎないバランスに聞こえます。低域にモニター的な詳細さを求める人には向きませんが、この雰囲気は悪くないでしょう。
低域はランブルやサンプも生き生きしており、ベースラインは十分にグルーヴを生み出しますが、一方で音に広がりがあって優しく聞こえ、圧迫感がありません。
クリア感に欠ける傾向があるので、重みや深みのインパクトがはっきりしているとは言いづらく、質的な面でベースヘッドを満足させることができるかは微妙なラインですが、量的には十分です。
中域(10.0)
- 原音忠実度:S(A)
- 厚み:B(A-)
- 明るさ:B-(B+)
- 硬さ:C+(B)
- 存在感:B(B)
中域は非常にニュートラルで音像の一貫性が高いですが、ややTHDが高いため、音像は少しぼんやりして調和的に聞こえます。
個人的には中域に適度なハーモニクスのあるサウンドが好みなので、こういうチューニングは好きですが、クリアな音像を重視するオーディオマニアからすると、あまり質が高いとは言えないでしょう。人によっては付帯音が多く感じられ、透明度に劣るので低評価するであろうサウンドです。
たとえばTForce Yuan Liのようなクリア感の高いイヤホンと聴き比べれば、DT300の音がはっきりせず、立体感に劣ることがすぐに分かります。
ボーカルやギターのサウンドは空間に溶け込むような輪郭感を持っており、音が吸収され、拡散される、細かな埃のようなものが感じられる空気感があり、人肌の温もり感のある音に聞こえます。
そういうわけで、DT300のイメージング能力は総合的に判断すると、決して高いとは言えませんが、バランスは非常に良いですね。
高域(9.0)
- 原音忠実度:B+(B+)
- 艶やかさ:B(B-)
- 鋭さ:B-(B-)
- 脆さ:C+(C)
- 荒さ:C-(D)
- 繊細さ:C(D+)
- 存在感:C+(C-)
DT300の高域は価格帯では比較的優れています。
高い鮮明感を持っていますが、輪郭感はやや抑え気味のため、歯擦音をはじめ子音にギスギス感がなく、音がスムーズです。高域の輝度は少し高いので、音の粒立ち感は強めに感じられるところもマイクロディテールにこだわる人に歓迎されるでしょう。
逆に言えば、エッジ感の不足はわかりやすい欠点です。アタック感が悪いと言うほどでもありませんが、スネアやギターエッジのキレは若干悪いですね。そのおかげでボーカル優位がはっきりしていて、どの音楽もボーカル中心で聞きやすくわかりやすいとも言えますが、個人的にはこういうサウンドはどの曲を聞いても単調に聞こえやすく、すぐ飽きがくるところがあります。
明瞭感はあるけれども刺さらない、やわらかみのあるサウンドが好きなら悪くありませんが、かっつりした構築感を重視するモニターサウンド好きにはあまり歓迎されないでしょう。
定位/質感
- 質感の正確性:S(B)
- 定位の正確性:B(C+)
- オーケストラのテクスチャ:A+
- 雅楽のテクスチャ:S
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
DT300のサウンドは中域の質感がかなり正確で、のびやかさも十分で楽器音に精彩がある一方、高いTHDにより、どことなくレトロで甘い雰囲気があるのが魅力です。
フルオーケストラの雰囲気は悪くないですね。エッジ感がゆるい感じがありますが、むしろ嫋やかで優雅な雰囲気と肯定的に捉えることが可能です。高さも十分ですが、適度な包まれ感がある雰囲気がいいですね。室内楽も雰囲気たっぷりに聞けそうです。
DT300の雅楽の表現は個人的には好みです。和音のにじみ具合が非常に美しく、生々しく思えます。鮮明感が高いのに耳にギスギスしないので気持ちよく聞けます。塩梅も適切に聞こえます。少しレトロで古風に聞こえるのも、雅な感じがあって好みですね。
グルーヴ/音場/クリア感
- 音場:B
- クリア感:C+
音場はわずかに奥行きが強調されますが、実際には過渡応答が悪いので立体感はあまり表現されません。深さは十分で、高さも悪くないでしょう。
クリア感は平凡以下です。また、適正音量より少し上げるとクリア感はかなり悪化しますね。
音質総評
- 原音忠実度:A+(A-)
- おすすめ度:A
- 個人的な好み:A+
Audiosense DT300は個性派揃いのAudiosenseらしい製品です。
まず、それはアンプやリケーブルによって音質が変わりやすい傾向があり、しかもデジタルオーディオプレーヤーや高品質なアンプで駆動するとあまり良い音を出しません。デジタルオーディオプレーヤーで聴くより、スマホやiPhoneで聴いたほうが音が良い気がする可能性さえあります。
一方で出力インピーダンス30Ω程度で適切に駆動したDT300はサウンドバランスが良好なだけでなく、ノスタルジックで甘みのあるウォームで聞き心地の良い、幻想的で風雅な音を聴かせます。
そこからさらに負荷をかけると、今度はレンジ感が広がりますが、高域はきつくなりすぎる可能性があります。
つなぐ機器によって音質変化し、聞かせるサウンドが変わる玄人好みのイヤホンで、駆動について知識があるオーディオマニアほど夢中にさせられるイヤホンでしょう。
音質的な特徴
美点
- 適切に駆動すれば良質なサウンドバランス
- 中域への適切なフォーカス
- 落ち着いて上品な雰囲気
- 充実感のあるサウンド
- 聴き心地が安定している
- ノスタルジックなサウンド
欠点
- 低いイメージング能力
- クリア感に欠ける
- 輪郭感が緩い
- 構築感に欠ける
- 玄人向き
駆動次第で変化する音質
聴き心地が安定している
ノスタルジック
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはAntelope Audio Amariを用いています。出力インピーダンスは0.3Ωで、イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- Audiosense DT300 OI:0Ω
- Audiosense DT300 OI:27.9Ω
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- Audiosense DT300 OI:0Ω
- Audiosense DT300 OI:27.9Ω
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- Audiosense DT300 OI:0Ω
- Audiosense DT300 OI:27.9Ω
総評
Audiosense DT300はケーブルやアンプによって音が変化する、まさに本物のオーディオマニア向きのイヤホンです。もちろんスマホやデジタルオーディオプレーヤーで聴いてもそれなりに悪くない音かもしれませんが、駆動を工夫するとノスタルジックでバランスの良い、美しいサウンドを奏でてくれます。それはAudiosenseのブランド史上最上級に近い可能性がありますが、問題はそのサウンドを聞くのに多少の苦労が必要だということです。ただ、これ一つで様々なサウンドが楽しめ、そのどれもが悪くないサウンドなので、イヤホンマニアほど手に入れておきたいアイテムでしょう。
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