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AKG K702の概要
こんな人におすすめ
- 明るい音が好き
- 爽やかな音が好き
- 聞き心地重視
- 装着感重視
基本スペック
- 再生周波数:20Hz-39800Hz
- インピーダンス:62Ω
- 感度:105dB
- 価格帯:20000円~30000円
- パッケージ:8.0/10.0
- ビルドクオリティ:8.5/10.0
- 装着感:9.0/10.0
- 高域:9.0/10.0
- 中域:9.0/10.0
- 低域:5.0/10.0
- 歪みの少なさ:8.0/10.0
長所
- 明るく朗らか
- 抜けが良く、爽快な高域
- ディテールが詳細で繊細
- 聴き心地が良い(解像度が低いので)
- バランスが良い
- 原音忠実度が高い
短所
- 低域がスカスカ
- モニターとしては低すぎる解像度
- 音楽表現に深みがない
AKG K702の特徴
- フラットな形状をした「フラットワイヤー・ボイスコイル」を採用し、ボイスコイルの軽量化と感度の向上を実現。微細な音声信号にも機敏に反応し、弦楽器の擦れるような音や、ハイハットの細かいタッチも忠実に再現する、高い原音再生力を誇ります。
- 「K700シリーズ」や「スタジオシリーズ」に採用されている、AKG独自の音響技術「バリモーション・テクノロジー」や「TWO-LAYERダイヤフラム」も、もちろん採用。ノイズが無く、AKGらしい壮大なスケールの音場と、滑らかに伸びる明瞭な中高域を堪能できます。
- 人間工学に基づいて設計された「3Dフォーム・イヤーパッド」は、耳をすっぽりと覆い、圧迫感のない心地よい装着感です。
- 濃紺とシルバーを基調としたカラーリングは、落ち着きのある印象を演出。北欧ブランドらしい、余計な装飾を排したミニマルなデザインが特徴です。
- 「K702」は、ヘッドパッド部を無くした「コブ無し」仕様になっています。
パッケージ(8.0)
ビルドクオリティ(8.5)
ビルドクオリティは価格の水準を満たしています。
装着感(9.0)
装着感は快適です。ベロア調のイヤーマフは耳当たりが優しく、フカフカです。
音質
HATS測定環境
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ(HATS内蔵)
- マイクプリアンプ:Type4053
- 小野測器 SR-2210 センサアンプ
- 出力オーディオインターフェース①:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
- 出力オーディオインターフェース②:Antelope Audio Amari
- 入力オーディオインターフェース:RME ADI-2 Pro FS R Black Edition
カプラー測定環境
- Type5050 マイクアンプ電源
- Type E610A 711イヤーシミュレータ(カプラータイプ・IEC60318-4準拠)
- オーディオインターフェース:MOTU M2
アナライザソフト
- TypeDSSF3-L
- Room EQ Wizard
周波数特性/THD特性/ラウドネスステータス
測定値は有料記事をご覧ください。
オーディオステータス
制動
AKG K702はアンプの出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
測定値は有料記事をご覧ください。
音質解説
今回はFiiO M15につないでレビューしています。
AKG K702は高域寄りのニュートラルに近いシグネチャーを持っています。
レビューの各評価点の判断基準は以下の通りです。
- 原音忠実度:自由音場フラットに基づく判定値。どれだけ自由音場フラット(≒録音音源の再現度)に忠実かを表します。音域ごとに標準偏差から自動で算出、判定されています(低域:20Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~20kHz;全体:63Hz~13kHz)[S+が最も原音忠実]
- 臨場感/深さ/重み/太さ/厚み/明るさ/硬さ/艶やかさ/鋭さ/脆さ/荒さ/繊細さ/存在感:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、各要素が聴感上ニュートラルからどれだけ強調されて聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[Bが最もニュートラルに近く、S+が最も強調度が高く、D-が最も強調が弱い]
- 質感の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、200Hz~2.5kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- 定位の正確性:自由音場補正値に80phon時の等ラウドネス曲線逆補正をかけた聴感周波数に基づく判定値。一般的に適正音量時、1.5kHz~8kHzがどれだけ聴感上ニュートラルに聞こえるかの期待度を表します。自動算出、判定されています。[S+が最もニュートラルに近い]
- オーケストラのテクスチャ/雅楽のテクスチャ:それぞれのリファレンス音源を用い、各リファレンスイヤホンからの音質差を聴感テストしています。なお、リファレンスイヤホンは参考用であり、S+ほどリファレンスイヤホンに近いというわけではありません。[S+が最も評価が高い]
- クリア感:THD測定値に基づいて決定されています。[S+が最も評価が高い]
- イメージング:C80測定値に基づいて決定されています。(低域:50Hz~200Hz;中域:200Hz~2.5kHz;高域:2.5kHz~10kHz;全体:50Hz~10kHz)[S+が最も評価が高い]
これらの評価値は最終的なスコア算出に影響を与えますが、すべてではありません。
低域(5.0)
- 原音忠実度:C+
- 臨場感:D+
- 深さ:C+
- 重み:B
- 太さ:B+
- 存在感:C
AKG K702の低域は存在感が薄く、深さで物足りません。ストンと落ちるモニタースピーカーのような低域が好きなら悪くないと思う可能性はあります。
エレキベースは薄味ですし、ドラムキックは太さは悪くないものの、重みに欠け、タンタンしたようなタップダンスのような音に聞こえやすく、インパクトが不足しています。
明瞭度もあまりよくなく、ややぼんやりしがちで見通し感も少しよくないですね。
中域(9.0)
- 原音忠実度:S
- 厚み:A-
- 明るさ:A
- 硬さ:A-
- 存在感:B
中域は前面に出てきて、明るい位置で聞こえます。
質感表現はかなり正確ですが、ライバルのモニターヘッドホンに比べると全体の解像度が低いため、全体的に音がぼんやりしており、透明度で劣ります。
そのおかげで聞き疲れにくいのはよいのですが、作曲やミキシングに使うには音の捕捉能力で劣るでしょう。細部にピントを合わせて聞けるとか、細かなニュアンスを拾えるというヘッドホンではありません。人によってはモニター的というよりリスニング向きに作られているのかと思えるでしょう。それほど低解像です。
長時間にわたるスタジオ録音や映像チェックのモニターとしてはいいでしょうが、密閉性が低いため、トラッキングモニターとしては使えないでしょう。
高域(9.0)
- 原音忠実度:C
- 艶やかさ:A-
- 鋭さ:B+
- 脆さ:B+
- 荒さ:C
- 繊細さ:B-
- 存在感:C+
高域の調整は拡張性も比較的良好で、なかなかに悪くありません。
中域の明度に対して輝度はバランスが取れており、はっきり明るく繊細に音を描き出すことができます。しかし、明瞭度はモニターとしては不足気味なので、その音はくっきりではありません(区別できていない人が多いですが、「はっきり(あるいは「しゃっきり」、鮮明感、definition)」と「くっきり(明瞭感、resolution)」は音響的には異なるパラメータを持つ別概念です)。
オーディオレビューなどではよく「解像度」などと簡単に口にする人がいますが、たとえ評論家であっても、正しく音の解像度の概念を理解して話している人はまれのように思われます。多くの場合、製品を褒めて売れるようにするのが仕事の評論家は「解像度が悪い」などとは言いませんし、逆に素人は簡単に「解像度が良い/悪い」と根拠もなく言いますが、実際は解像度についてわかっていないで使っている人ばかりなので、ほぼ当てになりません。
こうした人たちはしっかりと音の特性を確認しつつ、自分の耳を育てるということをしていません。「耳チューニングが大事」というオーディオの鉄則を知らないのです。
こういう人は自分の好みの音をよく言うために、あるいは逆に嫌いな音を悪く言うために、自分も含め多くの人が正しく理解できていない「解像度」という言葉を都合よく語っているだけなのです。話す側もそれを受け取る側も知識が不足していてそれを理解しておらず、しかも全く主観的で根拠もなしに語れば、それが正しいかどうかこの両者の間では全く検証できません。オーディオによくある不毛な議論は大抵こうした知識とデータ不足の言説に由来します。
音の解像度について語る人がいたら、その人が何を根拠に解像度を語っているのか聞いてみるといいですよ。耳で聞いただけだとしたら、まず間違いなくアウトです。相当勉強し、訓練していないと解像度の比較なんて普通はできません。
さて、そういうわけでK702は解像度が低いため、刺激が抑えられた聞き心地の良い高域を持っており、歯擦音が尖ったり刺さるということもありません。全体のバランスもよく、聞き心地のためにピンナゲインもうまく抑えています。ただこのせいで良い意味では少し音が嫋やかに、悪い意味では多くの楽器音の軸やボーカルのフォルマントに力強さが出にくいように思えますね。
定位/質感
- 質感の正確性:A+
- 定位の正確性:B+
- オーケストラのテクスチャ:B+
- 雅楽のテクスチャ:B
定位と質感は以下の音源によって聴感テストされています。また質感についてはそれぞれリファレンスとするイヤホンは以下の通りです。
- オーケストラ:Berliner Philharmoniker and Rafael Kubelik「Dvorak: Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178, “From the New World” – IV. Allegro con fuoco」(「Dvorak: The 9 Symphonies」)[リファレンスイヤホン:AKG N5005]
- 雅楽:宮内庁楽部「越天楽」(「雅楽~平安のオーケストラ」)[リファレンスイヤホン:final A3000]
オーケストラではコンサートマスターと指揮者の位置関係、チェロとバイオリンのバランスを重視しています。雅楽では篳篥の音が最も力強く聞こえること、とくに「塩梅」がきれいに聞こえることを重視しています。
この項目は各言語音の音域に対応し、西洋音楽(および洋楽)が好きな人はオーケストラのテクスチャを、日本の伝統音楽(および邦楽)が好きな人は雅楽のテクスチャを重視すると満足度が高いでしょう。
ぼんやりフルオーケストラを聴くためなら、K702はわりとおすすめのヘッドホンです。不足しているのは重厚感と透明度で、音色と空間の生々しさを表現する能力に欠けています。スケール感は悪くないですが、総じて没入感に欠ける音で、楽しい感じはないですね。リラックスしたいときにBGMとして聞くのに向くような音です。
雅楽も同じような雰囲気です。篳篥の軸が弱く、力強さに欠ける聞こえ方も人によっては微妙です。まあ「はんなり」した柔らかさのようなものがあるので、京風に聞こえると言えば、肯定的に評価することもできるかもしれません。ただ全体的に解像度が低く、個人的にはちっとも楽しくないですね。
音場/クリア感/イメージング
- 音場:B+
- クリア感:B+
- イメージング:B
- 高域:A-
- 中域:B+
- 低域:C
低域の深さは物足りません。中域は前面に出てきます。高域の高さは標準以上です。
クリア感は価格を考えると標準以上です。
解像度はモニターヘッドホンとしては非常に低いです。少なくともミキシング用には使えないでしょう。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:B+
- 個人的な好み:C-
AKG K702は比較的優れたサウンドバランスを持っていますが、解像度で劣るため、少なくとも作曲やミキシングに使うヘッドホンとしてはあまりおすすめできません。
同じ価格帯に非常に高い解像度でよりサウンドバランスも良いSHURE SRH940という名機があり、これを買う前にそれかSRH840とよく聞き比べて検討することをお勧めします。いくつかの曲で聞き比べれば、この機種の欠点が明らかになるでしょう。
より安い価格ではSONY MDR-7506やCLASSIC PRO CPH7000という優れた代替候補があり、K702に比べて一般にはるかに優秀なモニタリングが可能です。
音質的な特徴
美点
- 明るく朗らか
- 抜けが良く、爽快な高域
- ディテールが詳細で繊細
- 聴き心地が良い(解像度が低いので)
- バランスが良い
- 原音忠実度が高い
欠点
- 低域がスカスカ
- モニターとしては低すぎる解像度
- 音楽表現に深みがない
明るく朗らか
詳細で繊細、かつ爽快
優れた原音忠実度
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。レコーディングシグネチャーのソースはRME ADI-2 Pro FS R Black Edition + TOPPING A90を使い、レコーディングにはAntelope Audio Amariを用いています。
¥369,600(税込)
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Brüel & Kjær 1704 マイクアンプ電源
- Bluetoothトランスミッター:FiiO BTA30
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- 原曲(-23LUFS)
- AKG K702
Get Over The Barrier! -EVOLUTION!!-
- 原曲(-23LUFS)
- AKG K702
Formidable Enemy
- 原曲(-23LUFS)
- AKG K702
総評
AKG K702は優れたサウンドバランスで原音忠実性の高いシグネチャーを実現している優秀なヘッドホンです。しかし、そのサウンドは解像度で物足りないため、リスニング用途では魅力的かもしれませんが、作曲用やミキシング用のモニターとしては物足りないかもしれません。
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